迷い子の月下美人

エウラ

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358 未踏の浮島 1

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そんなこんなで、グラウクス以外は通常通りに何事もなく話し始めた。

『ソレで、グラウクス殿の聞きたい事とは、浮島の事で良いのかな?』

口火を切ったのはウラノス。
いつの間にか円卓にぐるりと座っている。
先ほど引き摺られていった竜王陛下もちゃんと座っていた。

こちらもリビングに椅子を並べて座っている。
ちなみにノア特製の(実は高価な材料を使った)椅子である。

「はい、そうです。大まかな話は聞いているかと思いますが、天空の無数の浮島の中に、どうやっても立ち入れなさそうな島があるらしい・・・という都市伝説なのですが・・・」

気を取り直してグラウクスが応える。

『その話なら、噂程度になら確かに聞いたことがある』
『だが、実際に行ってみようとか探そうという所まではいかないな。大抵のモノはそうなんだ、くらいしか思わないから聞き流してたし』

レオニードとシェイラがそう言うと、ルドヴィカもうんうん頷いて言った。

『俺も職業柄、色んな場所に翔んで行くけど、確かに浮島は結構あるよ。でもわざわざ上陸しようとは思わないから、噂止まりだな』
「大祖父様は、何か知ってる?」

ノアがクリカラに話を振った。
確かにこの面子の中では一番長命ではあるが・・・。

「ノア、竜王はそんなにちょろちょろと国を離れられないぞ。そんなに情報はないんじゃないか?」

そうアークに言われて、ハッとする。

「そうか、俺みたいに引き籠もってるんだった!」
「「「『ブハッ!!?』」」」
『『『『『ごふっ!!』』』』』
『・・・・・・ノアちゃん。儂、別に引き籠もっておらんよ?』

立場上、大っぴらにしないだけで、即位してからもかなり城から脱走していた事をリュウギは思い出してこめかみを押さえた。

『・・・・・・でもまあ、そんなに遠出はしておらんから、確かに実際の情報は少ないな。すまんの』
『ですが、前々からそう言う噂はありました。火のない所に煙は立たぬ、と申しますから、何かしらキッカケはあったのかと・・・』

申し訳無さそうなクリカラをフォローするようにリュウギが補足する。

「・・・確かに。竜王陛下くらい長命な方が遙か昔から耳にしていると言うことですね?」
『おお、そうじゃ。儂が若い頃には既に都市伝説だったな。うーん・・・何百年前かの?』
『七、八百年は前だったかと・・・』
「・・・・・・」

黙って聞いていたギギ達も口を開けてポカンとする。
本当に伝説だ。

「そんなに前から? て事はソレよりも前から噂になるような事だったのかな? そうなるともう、リンデンかヴァンに聞くしか無いんだけど・・・」
「・・・リンデンって、ノアの父親だろう? その、あのあと、どうなったのか依頼を受けた俺たちには知らされなかったが・・・」
「ああ、うん。・・・・・・えっと、良いのかな、言って」
『---ああ、グラウクス殿はアリテシアの救出依頼のPTメンバーだったな。ここでの情報を漏らさないと約束できるならば、良いだろう』

クリカラがそう言ったので、グラウクスに確認をすると、魔法での誓約を受けてくれたので、詳しく話すことにした。

「リンデンは俺の父親って言うのは知ってるよね? リンデンは金竜で、古竜なんだ」
「うん、知ってる。依頼の時にアリテシアの番いの竜人だって聞いたからな。ふんふん・・・・・・ふん・・・・・・ん・・・?」
「ソレで狂竜になったから大賢者ラグナロクとフェンリルのヴァンが大祖父様のインベントリに封印したんだ」
「---・・・・・・ぇ?」
「ちなみにその大賢者ラグナロクがノアの実質の育ての親な」
「・・・・・・おおぅ・・・・・・ソレは・・・・・・確かに公言出来ん・・・・・・」

ノアとアークの説明に、もはや抜け出せないところまで来てしまったことを悟ったグラウクスだった。









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