328 / 533
324 閑話 自由人・精霊王様が行く 2
しおりを挟む
※大公家に現れた精霊王。
竜王国の王城を賑わせた精霊王は、当初の予定通り2日滞在の後、古の森へと一旦還っていった。
それから日を待たずに、今度はヴァルハラ大公家に出没した。
《ノア達はおるかの?》
「---せ、精霊王様・・・いらっしゃいませ。急にどうなさったんです?」
《うむ、暇でな・・・。遊びに来た》
なんてことないようにそう言ってサロンの椅子に座る精霊王に、執事長のアヴィールがお茶を出しながら様子を窺う。
「ノア様達は、この間こちらに帰ってすぐに発情期に入ってしまわれて、ただいまはお部屋に巣篭もり中でございますので、生憎とお会いにはなれないかと・・・」
《おや、それならば邪魔は出来ないね。じゃあどうしようかな・・・》
思案顔の精霊王。
その時、ちょうど仕事の区切りがついたウラノスがレーゲンと共にやって来た。
どうやら影から連絡が入った模様。
「精霊王様、いらっしゃい。ノアちゃんに会いに来たのですか?」
《うむ。だが会えないのでどうしようかなと思っていたのだ》
「ウチも特段、珍しいモノなどないですからねえ・・・。ああ、そういえば王宮の庭園が大変なことになっていたようですね?」
その原因が精霊王にあることはヴァルハラ大公家でも知っている。
面白いので放置されていることも。
《刺激があって良かろう?》
いや、日常にそんな刺激は要らないでしょ。
レーゲンとアヴィールは密かに心の中で思った。
《ここにも作ってやろうか?》
「いやいや、ここにはそんな大層な庭はありませんので、遠慮しますよ」
ニタリと笑う精霊王に笑えないウラノスはそう言って断った。
《何だ、つまらん。じゃあ、古の森で遊んでいるか・・・。ノア達が巣篭もりを終えたらまた来るかな。邪魔したな》
「いえ、お構いもしませんで。ではまた後ほど」
キラキラを撒き散らして還っていった精霊王に皆がホッとひと息つく。
「彼の方もこちらの常識など通用しない方だからなあ」
「ノア様達がお部屋から出る頃にまた来るみたいですよね。・・・精霊王様のお部屋を御用意しますか?」
頭が痛いとばかりのウラノスにそうレーゲンが言った。
確かに・・・。
「今回の件で、精霊王がちょくちょく訪ねてきそうだから、あった方が良いだろうな。アヴィール、その様に手配してくれるか?」
「畏まりました」
そうして部屋を整えた後、ノア達が発情期明けで部屋から出てきたタイミングで再び精霊王がやって来た。
「精霊王、ウラノス義父様がこの邸に精霊王のお部屋を一つ用意してくれたんだって!」
《そうらしいの。助かる》
「部屋は自由に模様替えして良いが、あまりヘンなことはするなよ?」
アークも王宮の庭園の騒ぎを聞いたのだろう。
ウチではやるなよ、と釘を刺していた。
《やらないよ、そんなには・・・》
「・・・・・・」
《ほどほどに・・・?》
「---・・・・・・はあ・・・。部屋以外に被害は出すなよ?」
《もちろん、結界張るから!》
「頼むよ?」
もはやどちらが大人か分からないやり取りを二人がしているのを見守る大公家の人達。
この後、嬉々として与えられた部屋を魔改造する精霊王の姿が見られた。
その様子をチラリと覗いたノアとアークはこう言った。
「めちゃくちゃ可愛らしい」
「・・・子供部屋だな」
どうやら至るところで集めてきた可愛い玩具や絵本、ぬいぐるみなどを飾っているようだ。
《せっかくあるんだから、飾って使って貰おうと思って》
「・・・え?」
《何時かは其方らにも子が出来よう? その時にでも使っておくれ。部屋の中に状態保存の魔法をかけておくのでな》
何時でも良いぞ、と微笑む精霊王に呆気にとられる二人。
「・・・ありがとう」
「・・・・・・何時か、その時は・・・」
ノア達はそう言って御礼を言った。
ヴァルハラ大公家の皆はその話を聞いて嬉しくて大号泣していたそうだ。
「王宮の庭園みたいになるかと思ってたよ!」
「良かったねえ!」
《失礼な。我とて時と場所をちゃんと考えておるわ》
そう言いながら、またそのうちな、と還っていった。
それからちょくちょく訪ねてきては、自由に邸の内も外もふらふら歩き、厨房で菓子や料理をつまみ食いし、庭園の一部をやはり王宮の庭園のように弄ってしまい、たまにやって来る不法侵入者が知らずに捕獲されていた。
「---平和だねえ」
「・・・ソーデスネ」
いい加減、邸の皆は慣れたようで、そこかしこに精霊王が出没しても動じなくなった。
しかし、こんなに来ていて古の森は大丈夫なのかと少々心配なウラノス達だった・・・。
竜王国の王城を賑わせた精霊王は、当初の予定通り2日滞在の後、古の森へと一旦還っていった。
それから日を待たずに、今度はヴァルハラ大公家に出没した。
《ノア達はおるかの?》
「---せ、精霊王様・・・いらっしゃいませ。急にどうなさったんです?」
《うむ、暇でな・・・。遊びに来た》
なんてことないようにそう言ってサロンの椅子に座る精霊王に、執事長のアヴィールがお茶を出しながら様子を窺う。
「ノア様達は、この間こちらに帰ってすぐに発情期に入ってしまわれて、ただいまはお部屋に巣篭もり中でございますので、生憎とお会いにはなれないかと・・・」
《おや、それならば邪魔は出来ないね。じゃあどうしようかな・・・》
思案顔の精霊王。
その時、ちょうど仕事の区切りがついたウラノスがレーゲンと共にやって来た。
どうやら影から連絡が入った模様。
「精霊王様、いらっしゃい。ノアちゃんに会いに来たのですか?」
《うむ。だが会えないのでどうしようかなと思っていたのだ》
「ウチも特段、珍しいモノなどないですからねえ・・・。ああ、そういえば王宮の庭園が大変なことになっていたようですね?」
その原因が精霊王にあることはヴァルハラ大公家でも知っている。
面白いので放置されていることも。
《刺激があって良かろう?》
いや、日常にそんな刺激は要らないでしょ。
レーゲンとアヴィールは密かに心の中で思った。
《ここにも作ってやろうか?》
「いやいや、ここにはそんな大層な庭はありませんので、遠慮しますよ」
ニタリと笑う精霊王に笑えないウラノスはそう言って断った。
《何だ、つまらん。じゃあ、古の森で遊んでいるか・・・。ノア達が巣篭もりを終えたらまた来るかな。邪魔したな》
「いえ、お構いもしませんで。ではまた後ほど」
キラキラを撒き散らして還っていった精霊王に皆がホッとひと息つく。
「彼の方もこちらの常識など通用しない方だからなあ」
「ノア様達がお部屋から出る頃にまた来るみたいですよね。・・・精霊王様のお部屋を御用意しますか?」
頭が痛いとばかりのウラノスにそうレーゲンが言った。
確かに・・・。
「今回の件で、精霊王がちょくちょく訪ねてきそうだから、あった方が良いだろうな。アヴィール、その様に手配してくれるか?」
「畏まりました」
そうして部屋を整えた後、ノア達が発情期明けで部屋から出てきたタイミングで再び精霊王がやって来た。
「精霊王、ウラノス義父様がこの邸に精霊王のお部屋を一つ用意してくれたんだって!」
《そうらしいの。助かる》
「部屋は自由に模様替えして良いが、あまりヘンなことはするなよ?」
アークも王宮の庭園の騒ぎを聞いたのだろう。
ウチではやるなよ、と釘を刺していた。
《やらないよ、そんなには・・・》
「・・・・・・」
《ほどほどに・・・?》
「---・・・・・・はあ・・・。部屋以外に被害は出すなよ?」
《もちろん、結界張るから!》
「頼むよ?」
もはやどちらが大人か分からないやり取りを二人がしているのを見守る大公家の人達。
この後、嬉々として与えられた部屋を魔改造する精霊王の姿が見られた。
その様子をチラリと覗いたノアとアークはこう言った。
「めちゃくちゃ可愛らしい」
「・・・子供部屋だな」
どうやら至るところで集めてきた可愛い玩具や絵本、ぬいぐるみなどを飾っているようだ。
《せっかくあるんだから、飾って使って貰おうと思って》
「・・・え?」
《何時かは其方らにも子が出来よう? その時にでも使っておくれ。部屋の中に状態保存の魔法をかけておくのでな》
何時でも良いぞ、と微笑む精霊王に呆気にとられる二人。
「・・・ありがとう」
「・・・・・・何時か、その時は・・・」
ノア達はそう言って御礼を言った。
ヴァルハラ大公家の皆はその話を聞いて嬉しくて大号泣していたそうだ。
「王宮の庭園みたいになるかと思ってたよ!」
「良かったねえ!」
《失礼な。我とて時と場所をちゃんと考えておるわ》
そう言いながら、またそのうちな、と還っていった。
それからちょくちょく訪ねてきては、自由に邸の内も外もふらふら歩き、厨房で菓子や料理をつまみ食いし、庭園の一部をやはり王宮の庭園のように弄ってしまい、たまにやって来る不法侵入者が知らずに捕獲されていた。
「---平和だねえ」
「・・・ソーデスネ」
いい加減、邸の皆は慣れたようで、そこかしこに精霊王が出没しても動じなくなった。
しかし、こんなに来ていて古の森は大丈夫なのかと少々心配なウラノス達だった・・・。
233
お気に入りに追加
7,359
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる