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308 いつぞやの再現
しおりを挟む「---迷宮内は勝手に再生するから気持ちは分かるんだけど・・・」
「・・・・・・やっぱり、相当鬱憤が溜まってたんだな、ノア」
「八つ当たりの規模が違うよなぁ」
ルルが呆れた声で言い、アークがしみじみと声を漏らし、ギギが遠い目をした。
目の前で繰り広げられる惨状に理解がおよんでいないクリカラやウラノス、その側近と近衛の四人。
ルドヴィカとカイン、スレインは要塞都市と竜王国でそれなりに見慣れていたので苦笑するに留まっているが。
『魔物のリスポーンが追いついてないぞ。少し止めたらどうだ?』
ヴァンがちょっとうんざりしたように呟く。
しかしアーク達はそれに否やを出した。
「だってさあ、あんなに、嬉々として暴れてるの、止められるか?」
「だよねぇ。そうでなくたって普段は無意識に自制して溜めちゃうのに、ココで発散しなくて何処でやるの?」
「今は誰にも迷惑かけてないんだし、気の済むまでやらせてやろうぜ」
『・・・それもそうなんだが・・・肉・・・』
ギギルル兄弟がそう言ってアークも追従した。
そこに不貞腐れたように言ったヴァンの台詞にふと気付く。
「---ああ、昼飯の時間か?!」
『我は腹が減った!』
「ああ、なるほど。ドロップアイテム狙いだったか」
「相変わらず食い意地はってんなぁ」
「そういうことなら---ノア! お昼だからちょっと休め!」
「---はーい!」
そのアーク達のやり取りに、ノアの張った結界の中で呆然としていたクリカラ達は途端に気が抜けた。
戦闘を止めてこちらに歩いてくるノアは普段のぽやんとした雰囲気に戻っている。
「ごめんね? 夢中になってて気付かなくて」
「俺達も忘れてたから気にすんな。何時ものテーブル出すか?」
「足り無くない?」
「大丈夫、おっきいの用意してあるよ」
結界の中でわいわいし始めたアーク達に、ボケッとしていたクリカラ達がハッと我に返って漸く動き出した。
「・・・いやあ、ノアちゃんの戦闘を目の前で見たが、凄まじいな」
「随分と魔法を使ってたけど、大丈夫なのかい?」
「え? ああ、精霊王のおかげで魔力、無尽蔵なんだ。幾らでも平気だよ?」
「あ」
「え?」
「「・・・あーあ・・・」」
『・・・・・・言っちゃったか』
ノアの発言にアークが気付き、呟きを漏らす。
ノアがポカンとしてギギルル兄弟が察し、ヴァンがトドメを刺した。
《やっほー! 喚ばれたから来ちゃったー!》
唐突に金色キラキラで召喚された・・・もとい自力で転移してきた精霊王に皆がツッコむ。
「「「「喚んでない!」」」」
「こんにちは。お昼だから一緒に食べよう?」
その声には構わずに精霊王を当たり前のように迎え入れるマイペースなノア。
《ノアちゃん、良い子---っ!!》
精霊王がノアに引っ付き、アークに引き剥がされた。
これももはや見慣れた光景だ。
「・・・・・・やっぱりこうなるんだな」
「精霊王、やっぱり暇なんじゃん?」
ギギルル兄弟も呆れて、レオニード達も苦笑い。
再び固まるクリカラ達は、まだまだ慣れないようだ。
《御飯の御礼に迷宮に魔力分けてあげるから》
そう言う精霊王に苦笑して手を放すアーク。
見渡せば辺り一面更地で、ボコボコに穴が開き、岩が溶け、地面が凍り付いていた。
「---さすがに再生が追いついてないもんな」
《だから早く再生できるように魔力を送ってあげよう。だから御飯!! デザート!!》
自ら催促をする精霊王。
麗しさとかどっかに置いてきたらしい。
「ここにも欠食児童がいたぜ」
「・・・欠食・・・って言って良いのかな? 嗜好品扱いでしょ?」
ギギルル兄弟がそう言うとアークが疲れた顔で言った。
「何でも良いよ。とにかくノアの料理が食べたいだけだろうが」
《そうそう。クリカラ達も食べて食べて!》
「アンタが勧めるな!」
「アークも食べて。皆もどうぞ」
大きいテーブルを出し、人数分の椅子も出して料理を並べてそう言うノアに、まあ良いか、とそれぞれつまみ出すのだった。
その傍らでは必死に再生しようと頑張る迷宮。
お疲れ様です。
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