319 / 533
315 ヴァンの○○小屋を作ろう
しおりを挟むノアとアークが置き土産の鑑定の後、ベッドでイチャイチャとしていると、ヴァンがぽそりと呟いた。
『我は今夜何処に泊まろう?』
それを聞いたノアがハッとした。
イチャイチャしてる場合じゃ無かった!
「そうだよね、何時もテント出すかギギ達と一緒に泊まってたよね! ごめん、考え無しだった」
「・・・ヴァンなら適当にその辺で野宿でも問題ないだろう。元々野生なんだし」
せっかくノアとイチャイチャタイムだったのに邪魔をされたアークは不機嫌を隠しもせずにそうぼやいた。
「そうだけど、今はアークの従魔で俺達の家族も同じでしょ? うちのテントだけじゃ無くてヴァンにも自分専用のプライベートな場所があった方がいいよね?」
「ええ---必要か?」
胡乱げな目でヴァンを見つめるアークにヴァンが言った。
『我個人の部屋でもあれば、お主らは何時でも好きにイチャイチャ出来るのう』
「---!! 確かに、気にしなくて良いな」
『我はその辺り、何時もちゃんと空気を読んでいるだろ?』
ヴァンがニヤリと笑うと、アークもニヤリとした。
「『利害の一致だな』」
ノアはそれに気付かずに、早速錬金の準備を始めていた。
「ヴァン、大きさはどれくらいが良い?」
『うむ・・・我が本来のサイズに戻って体を伸ばしたりしても全然余裕なくらいは欲しいかな? 尻尾までだらーんとしても平気なくらいの広さは欲しい』
少し考えた後にそう言ったヴァンにうんうんと頷くノア。
「水浴びとか出来たら良いよね?」
『おう、あれば願ったりだな!』
「御飯も当然、そこで自由に取り出して食べられたら良いね」
『うむ。そこは大事だな!』
「さすが筋金入りの食いしん坊だな」
『煩いぞ、アーク』
アークのツッコミにすかさず返すヴァン。
二人を気にせず一人ブツブツと呟いているノア。
「・・・そうすると、俺のインベントリ・・・は無理だから、マジックバッグとヴァンの腕輪を繋げて、料理をマジックバッグにたくさん入れておけばヴァンは好きなモノを取り出せるから・・・」
そんなことを言いながらインベントリから次々と素材を取り出していく。
「あ、ねえ、ヴァンは室内でも運動したい?」
『あ? いや、さすがに室内ではのんびりしたいが。動きたくなったら狩りがてら外へ行くよ』
何でだと疑問に思いつつも律儀に返答するヴァンに残念そうな顔のノア。
何で?
「・・・そっか。キャットタワーならぬドッグランとかちょっと憧れるんだけど、要らないなら仕方ないか」
『・・・・・・オイ、我は狼ぞ? 猫でもないしもちろん犬でも無いんだが?』
ギョッとしたヴァンが訝しげにノアに言うが、もうノアの意識は別な方にあるようで聞こえていないようだった。
「・・・聞いちゃいないようだな。・・・・・・ふっ、犬・・・ヴァンが犬扱い・・・ウケる!」
『・・・・・・我、ちゃんとフェンリルって言ったよな? 知ってるよな? フェンリルって狼なんだぞ?!』
「まあ、平たく言えば同じイヌ科?」
『我、幻獣! 根本的に種族が違うだろう!! イヌ科で纏めるな!!』
「あっははっ!!」
アークとヴァンがやり合っている間にも淡々と材料を取り出していくノア。
イメージが纏まったのか、気付いたアークとヴァンが注視したときには錬成が始まっていた。
そして重要なことに気付く。
「---あのまま錬成したら、出来上がったモノは元のサイズになるんじゃないか?」
『・・・・・・さすがに我が寛げるくらいとは言っても、精々がこの部屋くらいじゃ・・・?』
「良く思い出せ。お前が水浴びとか出来るスペースを作ったらそれだけでもかなりの広さになる。そこにお前が寝転んでも大丈夫な広さに高さ・・・ただの部屋のはず無いだろう?」
『ぅ、うむ・・・。ここに収まらない・・・かも?』
「いや待てよ、ノアのことだ、小さいサイズで作ってから中を拡張するという可能性も・・・」
だがしかし、そんな不穏な事が大当たりした。
ノアがガッツリ魔力を籠めて出来上がったモノは、やはり部屋に入りきらず・・・。
結界のおかげで破壊と騒音は免れたが、ぶつかった振動は思いっきり伝わったようで・・・。
「お前たち、何やったらこうなるんだ?!」
駆けつけてきたウラノスと側近のレーゲンが唖然として、ルドヴィカは大笑い。
アーク達の部屋の中。
視線の先には小振りだが普通に戸建ての家一軒が結界の中で窮屈そうに屋根で天井を押し上げているように見える光景が・・・。
「・・・・・・ヴァンの、イヌ小屋?」
てへっと付きそうな声でそう言ったノアに全員がその場に崩れた。
---フェンリルがイヌ。
---イヌ小屋・・・。
---やっぱ面白えわ、ノアちゃん!
「・・・な?」
『---な?じゃ無いわ! 我は幻獣!!』
その後、速やかにイヌ・・・ゴホン、ヴァンの個室?を回収したノアは、魔法付与でサイズを小さくした。もちろん外見は小さくても中身は特製テントと同じく広いままだ。
「ヴァン、従魔の腕輪をちょっと貸してくれる?」
『・・・おう、好きにしてくれ』
「コレにも紐付けして、と。俺のマジックバッグと共有にしたから、マジックバッグの中の料理は好きに食べて良いよ。念じれば検索して取り出せるから。食器は浄化してしまってくれると助かるよ」
『! それは助かる! もちろんそれくらいはお安いご用だ。ありがとうの』
「どう致しまして。あ、義父様達、お騒がせしました」
崩れたままのウラノス達を振り返る。
声にならないのか、廊下で蹲ったまま手をあげていたので、大丈夫そう。
「ほら、分かったらもう戻ってけっこうだよ。寧ろ早く戻れ」
「・・・・・・はいはい、ごゆっくりどうぞ。ウラノス様、部屋に戻りますよ!」
「---はあ、了解・・・・・・」
ルドヴィカに連れられて去って行ったウラノス達を見送って部屋に戻り、ひと息吐いた。
「・・・・・・なんか気が削がれた」
「うん・・・・・・なんかごめん?」
『どうせじきに昼飯だし、夜に盛ってくれ』
「盛っ・・・・・・ぅ、ごめん」
「そうだな、夜までお預けで、その後は・・・」
舌舐めずりするアークに、ちょっと耐えきれずに夜までどきどきするノアだった。
※実際、オオカミはイヌ科らしいですが、ここではヴァンは幻獣(何度も叫んでましたが)なので、イヌ科扱いはありません。
悪しからず。
218
お気に入りに追加
7,359
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる