迷い子の月下美人

エウラ

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301 閑話 ヴェルザンティの嫁取り作戦 1

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「---ということで、俺達は陛下達とは別行動・・・っと」
「・・・すまない、俺のせいで貴重な休日を・・・」
「なーに水臭いことを言ってんの! 俺達、幼馴染みだろ!」
「そうそう。こんな時だからこそ頼ってくれないとな」

陛下達が街へと向かった後に残された近衛騎士三人は、とりあえず、とヴェルザンティの部屋に移動していた。

この三人は実は幼馴染みで、気の置けない間柄だった。
今回、護衛として選ばれたのは実力ももちろん申し分ない上に、このトリオの連携プレーが類を見ないほど息ピッタリなのだ。
なので何時も三人セットが当たり前だった。

今回、そんな三人の内の一人、兄弟に例えるなら次男に当たる立ち位置のヴェルザンティに、何と番いが見つかったのだ。

どうも魔人国に向かう頃から妙な違和感があったらしい。
予兆というか、予感というか・・・。
しかし本人やウルズ、スクルドもちょっとヘンだなとしか思わなかった。

その辺りは既婚者の陛下達の方がさすがにピンときたようだったが・・・。

まさかその番いが魔人国の第3王子殿下だとは思わなかったが。
初日の晩餐会でのヴェルザンティの挙動はちょっと笑えた。

「しっかし、まさかの第3王子殿下とはねぇ」

スクルドがソファにだらしなく背を預けて言う。
ウルズはソレをチラッと横目で見て軽く溜息を吐くとヴェルザンティに言った。

「ヴェル、いくら番いだろうと相手は一国の王族だ。竜人の番い至上主義は知識としてあるだろうが、だからといってがっついてはいけないぞ」
「そうそう。さすがにココは正攻法で攻めないと。アルカンシエル様のように出逢って一時間もしないうちに手籠めにしちゃマズいよ?」

スクルドがカラカラと笑って言ったが、ソレ、不敬じゃないのか、とヴェルザンティはウルズと苦笑した。

初日から竜王陛下達に『護衛任務は良いから夫問つまどい頑張れよ』とは言われたが、結局、今日までろくに動けなかった。

相手が相手だけに、さすがに無理矢理は出来ない。

ヴァルハラ大公家の三男であるアルカンシエル様は、とある迷宮で番いであるノア様と出逢い、アルカンシエル様の薫りフェロモンにあてられて発情状態になったノア様をその場(のテントの中)で三日三晩抱き潰して朦朧としたノア様のうなじを上手いこと言いくるめ・・・いや誘導して咬んだらしい。

・・・記録媒体の魔導具に言質を取って記録してあるとか・・・。
半ば強引にコトにおよんだんじゃないですか?
貴方、そんな竜人ひとでしたっけ?!

人伝にソレを聞いたときはちょっと引きましたけど?!

---番いに出逢うと変わるんだなって事を、今自分が身をもって体験しているけども・・・。

「とりあえず、お茶にでも誘ってみれば? もしくは城下街へお忍びデートとか」
「・・・・・・耐えられる気がしない。今なら分かる。アルカンシエル様、アレでもいきなり咬まないだけ理性的だったんだな・・・」
「---ぇ、そんなに・・・?」
「うーん、今の俺達には理解できない心情だ」

スクルドが健全なお付き合いを提案してくれるが、無理だ。
目の前にいたら抱き締めて離さない自信しかない。
出来ることなら口付けて身体中弄って高めてツッコんで啼かせたい!

「---なんか、ヤバい事を妄想してるのは分かる」
「据え膳食わぬはなんとやら・・・ってヤツだな」

スクルドとウルズが半目で呆れたように呟いた。

「いくら竜王陛下が魔王陛下に俺の番いがエクシア殿下だと話を通していても、魔王陛下がエクシア殿下にその事実を伝えているのかは分からないしなぁ」

ヴェルザンティがそう言うと、ウルズは思案顔で言った。

「いや、さすがに殿下にも伝えているだろう。そもそも宰相のラヴィア殿が黙ってはいまい」

確かに、宰相はそんな感じがする。
ぽやぽやの魔王陛下と違ってしっかりしているものな。

「じゃあさ、俺達も付いていって暴走しそうになったら止めたげるからさ、ひとまずお茶を一緒に飲めるか予定を窺おうよ。な?」
「そうだ。そもそもヴェル、エクシア殿下の事を何も知らないだろう? 殿下だってヴェルの事を知らないだろうし。いい機会だからそういうのを話せ」
「・・・・・・分かった」
「じゃあ、俺、さっそく聞いてくるわ!」

そう言ってサッサと部屋を出て行くスクルドを見送り、ウルズとヴェルザンティは一息吐いた。

「・・・・・・まだ滞在日数はある。焦ることはないさ。ソレにエクシア殿下が、容姿もだが性質も魔王陛下に似ているなら・・・・・・」

---案外チョロいかもな。

ウルズが、魔人国の人が聞いたら不敬だろうという発言をポロッとしていて、ヴェルザンティは思わず笑ったのだった。


ソレから十数分後。

エクシア殿下がお茶会を承諾してくれたとほくほく顔でスクルドが帰ってきた。

離宮の中庭で急遽お茶会をする事になって、侍従や使用人達総出で支度に取りかかったのだった。


---おそらく、お見合いという名のお茶会になるのだろう。












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