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293 天然なノアと精霊王
しおりを挟む《お主ら、この間振りだの。そちらは、初めましてかな?》
レオニード達に目を向けてから、つい、と視線をクリカラ達に移動させるとそう言った。
あれ、そういえば大祖父様や義父様は話を聞いただけで実際に会ったことは無かったっけ。
「大祖父様、義父様、護衛の皆さんも。こちらが古の森の精霊王で俺の義父母?養父母?です」
《精霊王だ。よろしく》
「・・・よろしくお願い致します、精霊王様。今代竜王のクリカラと申します。彼等は側近と身内と護衛騎士です」
さすがに立ち直ったクリカラが代表して挨拶を交わす。
何処となく緊張しているようだ。
それもそうか、いくら長生きといえども精霊王なんて見る機会は無いだろうし。
《ふむ、其方らはノア達の敵では無いからそんなに心配するな。取って食いやしないよ。食べ物は嗜好品扱いで口には出来るけども。でもノアなら食べてみたいな》
「精霊王、発言がちょっと危ない!!」
「言葉足らず! カニバリズムっぽく聞こえるから止めて!」
「ノアの料理って意味だろ?!」
《そうだが?》
「うがーっ! 精霊王、ノア並みに天然?!」
「いやあ、ノアよりも常識は無いだろうな・・・精霊王だし!!」
もはやツッコミどころ満載でギギルル兄弟が発狂しそう。
ノアは仲良さそうだね、と三人を見てほのほのとしているしアークは呆れている。
収拾がつかなくなったので、カフカがおずおずと声をかけた。
「精霊王様、せっかく来て頂いたので例のアレのサイズをちょっと変えて頂けますか?」
その声にピタッと止まってカフカを見た精霊王は、思い出したように言った。
《ノア、アレ大きくするから一度本気で威圧してあげなさい》
「え、本当に良いの?」
《心配するな。我が死ぬ寸前で遮断してやろう》
「やった! じゃあ遠慮なく」
やたらと物騒な台詞を吐きながらアレを受け取ると魔力を込めて実物よりは少し小さめに戻す。
《さすがに部屋が狭いし、かといって小さすぎると威圧に耐えきれずに死ぬかもしれんのでな。このくらいが妥当であろうよ》
そう言う精霊王の魔力は、きらきらしい金色にほんの少しの漆黒の粒が混じっているような気がする。
皆がドン引きする中、檻の中で悪態を吐くダンダリアン。
『沈黙』の魔法で声は聞こえないが、おそらく魔力を吸収されて体調が悪いのだろう。
疲れて歪な笑顔で何かを呟いているようだ。
ノアはソイツを見て、誰が見ても分かる程眉間に皺を寄せて何の前置きもなく本気で威圧した。
瞬間、ダンダリアンは泡を吹いて失禁し、気絶した。
・・・そりゃあそうなるよな。
死なないのは宣言通り精霊王が止めたからなのだろう。
一瞬だったが、生きた心地がしなかった。
クリカラでさえ冷や汗だらだらだった。
そんな中、アレを見るのもイヤそうなノアのためにアークは魔法でさっさと浄化してノアを抱き込んだ。
「気は済んだか?」
「・・・少しは」
「少しか・・・。後は皆と、話し合いだな」
「うん」
アークがクスリと笑ってノアをぎゅっと抱き締めているウチに再び掌サイズにした檻をカフカに渡すと、精霊王はノアにお茶をせびった。
《ノア、我、ちゃんと遮断したぞ! ご褒美に茶と茶菓子を所望する!》
さっきの黒い感じは消えて、にっこにこでそう言う精霊王に、皆は一気に肩の力が抜けるのを感じたのだった。
※遅くなりました。
短いです。
次話はやっと会議・・・と思う。
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