迷い子の月下美人

エウラ

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298 魔人国と竜王国の協議会 4

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真っ黒な笑みを浮かべて話し合いを始める精霊王達。

とてもじゃないが口を挟める雰囲気じゃ無い。
もっともセラフィムが精霊王達に任せた時点で口を出す権利は無いのだが。

そして内緒話をするように竜王陛下の周りに固まってこそこそする様子が何とも言えない。

手持ち無沙汰になってしまった魔人国側は、ラヴィアが命じて使用人に淹れて貰ったお茶を飲みながら成り行きを見守った。


それから数十分ほど経ったろうか。

暇だったセラフィム達は精霊王の創った檻の花が幾つか実をつけてきたのを観察していたのだが、不意に精霊王の声が聞こえて意識をそちらに戻した。

そして固まった。

先ほどよりも凶悪な笑顔をしていたからだ。

《其奴の罰が決まったぞ》

それにハッとして動き出すセラフィム達。
周りを見れば、クリカラ達も黒い笑顔だ。

「ひえ」

思わずといった感じでセラフィムが声に出すと、隣のラヴィアが深い溜息を吐いた。

「・・・もう、貴方はそのままで良いです」
「ご、ごめんなさい」

シュンとしたセラフィムを一別して、ラヴィアが精霊王に話の続きを促す。

---それを纏めると、こんな感じだった。

まずダンダリアンの管理は竜王国で行う。
檻と共に精霊王が定期的に見に行ってメンテナンスを行う。

---ようは、死なない程度に生かすということだ。
直ぐに死なれては、こちらの気持ちは晴れない。
だから長く生かして、長く苦しんで貰う。


最終的には一番の被害者であるリンドヴルムに手を下して貰いたい。
それまでは永遠ともいえる時を苦しんで貰うのだ。
そしていつかリンドヴルムが目を醒ますまでは、クリカラのインベントリで生きていて貰おう。

・・・まあ、リンドヴルムの封印の件は秘匿事項なので、ここでは明言しないが。

《それで、其奴はどうやら己の美貌にやたらと自信を持っているようなので、その矜持をへし折ってやろうと思ってな、檻の壁を魔法で鏡にしてやった》
「・・・・・・え? いやだが、こちらから良く見えるが・・・・・・」

セラフィムが困惑顔で言うと、精霊王はニヤリと笑った。

《外からは普通に見えるが、中からは全方位鏡なのだよ。何処を見ても己しか見えん。その中で、魔力の花が実をつけるたびに老いていく自分を見るしか出来ない。これほど屈辱的な事はあるまい?》

何、狂わないように精神耐性の魔法もかけてあるから心配要らんよ、なんて言われたが。

「ある程度老いたら、精霊王様が進行を止めて下さるそうだ。だから死にはしない」

そうクリカラが付け足すが、そういう問題ではなくて!
とはツッコめないセラフィム達だった。

「ノアはの顔も見たくないそうだから、それが叶うなら精霊王と竜王陛下達に任せるさ」

アークがそう言って、ギギ達も頷いた。
ノアはアークの胸元に顔を埋めてずっと無言だった。
本当にイヤなんだろう。

「そういうことで、良いでしょうか」

リュウギが確認をする体で決定事項のように言ったのにセラフィム達は速攻同意した。

彼等に逆らってはいけないと、本能が言っていた。

「いやあ、案外早く決まって良かったなあ」
「ここでごねられたら、精霊王様を止められる気がしない」
「良かった良かった」

はっはっは、なんて笑ってるが、笑い事じゃ無い台詞が聞こえて魔人国側は血の気が引いたのだった。

オッケー出して良かった!

---一番の厄介事が片付いた事にホッとして『箱庭の迷宮』問題はひとまず幕を下ろしたのだった。

「それで、竜王陛下方はこの後のご予定は?」
「それなんだが、城下街などの観光をしても良いかな? せっかく滞在しておるしの」

予定よりもスムーズに運んだおかげでだいぶ日程に余裕が出来た。
魔人国側は最長の一週間を予定していたので全然問題は無い。

「こちらは問題ありません。まあ、お出かけの際はあまり騒がれないようにお忍びをお勧め致しますが」

ラヴィアがそう言うと、鷹揚に頷いたクリカラ。

「あい分かった。ではもう暫く世話になる」
「はい。ではごゆるりと」
《我はコレを預かって一度古の森に戻る》
「精霊王様、よろしく頼みます」
「精霊王、またね」
《ノアも息災でな。アーク、ノアを頼むぞ。ではな》
「ああ」

そう言うと金色の魔力を散らして精霊王が還っていった。

「では私達も、これで失礼致します」
「何かあればギルドに何時でもお越し下さい」
「ギルマス達もお疲れ様。気を付けて」

カフカ達もホッとした顔で声をかけてきた。
それに応えるノア。

そうして各々、会議場をあとにしたのだった。







※先日はうっかりポチッと更新失礼しました。
次話、R回の予定です。

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