298 / 533
294 魔人国と竜王国の協議会 1
しおりを挟む何だか皆、午前中でぐったり疲れた気がする。
・・・主に気疲れだが。
せっかくだからと、あの後、精霊王にはお茶とお茶請けのお菓子をあげて、クリカラ達には軽食を出して渡した。
旅先で気軽に食べられるようにとお弁当のように容器に詰めたサンドイッチやおかず、そしてカップにスープを注いで配った。
彼等はそもそも早起きしてしっかり朝食を摂ったらしい。
のんびりしていたのはノアとアークくらいだった。
そうして時間を潰して、いざ協議会へと臨んだのだった。
会議場は、普段魔王陛下が臣下と打ち合わせに使う大きな円卓のある部屋だ。
華美な装飾など無く、柔らかいアイボリーのウッドカラーで統一されている。
何となく猫の逃げた魔王陛下の雰囲気だな、と思った。
間違っても他国侵略や大量虐殺を計画しそうな雰囲気では無い。
「昨夜は寛げましたか? 皆様、元気そうで・・・」
そう言ったセラフィムが不自然に言葉を切ったのを不思議に思っていると・・・。
「・・・・・・あの、そちらの方は・・・・・・?」
「・・・・・・ああ、精霊王です」
「・・・・・・・・・・・・精霊王・・・・・・精霊王?!」
セラフィムの叫びに、先に集まっていた魔人国の宰相ラヴィアや外交官達も驚愕してガン見した。
それを気にした風もなく、ほのほのと笑っている精霊王。
《今日からアレの処罰の話し合いなのだろう? 我もノアの関係者だからの。混ぜて貰うよ。それにアレを閉じ込めた檻は我にしかどうにも出来んのでな》
「ついさっき、昼前に前触れもなく現れたので連絡を忘れておった。儂らも動揺していてな、スマンの」
精霊王の後にクリカラが苦笑した。
精霊王を前に普段どおりなのはノア達冒険者組くらいだ。
「いえ、あの、その、だだだだ大丈夫っでしゅ・・・・・・ぅあ」
動揺して噛んだせいで真っ赤になったセラフィムを皆が注目する。
・・・・・・うん、魔王陛下の元に帰ってきていた猫数匹が再び旅立った模様。
もう誰もツッコまないので、諦めたんだろうな。
クリカラが笑いを堪えているのを横からバシッと叩くリュウギに魔人国の人がギョッとしたが、笑ってしれっと流す。
「コホン、では座っても?」
「あ、ああ失礼。では着席して始めよう」
そして漸く始まりを迎えた協議会。
処罰の優先度は竜王国が高いので、交渉にすらならないかもしれない会議が始まった。
まずはやはり今回の大まかな騒動の概要を話し、その中で問題となった第4王子殿下の行動とノアの拉致事件、犯人の過去の問題行動が焦点となった。
「では、まずは第4王子殿下の処罰をそちらがどうお考えかお聞かせ願います」
リュウギがどうやらこの場を取り仕切るようだ。
「時間は限られておりますゆえ、サクサクと進めましょう」
そう言ってにこりと笑う。
・・・ちょっと慇懃無礼な感じだが。
いくら予定を考えて日程を組んでいるとはいえ、竜王陛下であるクリカラはそんなに暇では無いのだ。
魔人国に来るだけでも片道一週間かかっている。そこに会議で最長一週間を見込んで予定を開けた。
そして帰国にまた片道一週間。
半月以上を不在にするのは、ひとえにダンダリアンの処罰の為。
---リンドヴルムとアリテシア、そしてノアの為なのだ。
「・・・こちらとしては第4王子の身分を剥奪、廃嫡して北の塔に幽閉を考えております。生涯をそこで過ごすことになります」
淡々と告げるラヴィアとは対称的に顔色の悪いセラフィム。
そりゃあそうなるよな。
自身の胎を痛めた可愛い我が子を、一生出られない塔に幽閉するんだものな。
「その辺りが妥当かの」
クリカラがそう言った直後、ノアが思わず口を挟んだ。
「あの、幽閉まではしなくていいんじゃないかな」
「・・・だが」
「身分を剥奪して王子じゃなくなれば、後はちょっと誓約で縛って、冒険者でいられるようにしたら良いと思う。俺は彼に特に酷い目に合わされてないし」
「・・・良いのか?」
ノアの提案にアークが困り顔で聞く。
「だって、魔王様と宰相様っていう両親がいて、お兄様達もいて、家族なんだよ? まあ、色々ヤンチャしちゃって今回は大事になったけど、反省はしてるんだよね?」
「---今までに無いくらい、落ち込んで塞ぎ込んでおります」
ラヴィアが息子の様子をそう告げる。
セラフィムも眉を下げてうんうんと頷いている。
「・・・・・・王族としての責任を問うなら、甘いことを言ってると思う。でも、生きているのに会えないっていうのは、凄く辛いよ」
せっかく側にいるのに。
会えないことの辛さは俺が一番分かってる。
そう言って儚く微笑んだノアに、誰が何を言えようか・・・。
静まり返った部屋で、ぼたぼたと涙を溢すセラフィムがゆっくりと頭を下げた。
「我が、言えた事では無いが・・・どうか・・・寛大な、処罰を・・・っ」
それに倣って、ラヴィア達も頭を下げる。
「---愛されてるんだね・・・良かった」
ノアが安心したように笑った。
それを合図に、部屋の空気も和やかになった。
「---では、誓約の内容は後で詰めるとして、王子の身分を剥奪、廃嫡でただの冒険者とする・・・でよろしいですね?」
「うむ、良かろう」
「---ありがとうございます」
こうして第4王子殿下の処罰が決まった。
※暫くアレと記載していたので名前を忘れて確認してしまったw
212
お気に入りに追加
7,359
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる