迷い子の月下美人

エウラ

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294 魔人国と竜王国の協議会 1

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何だか皆、午前中でぐったり疲れた気がする。
・・・主に気疲れだが。

せっかくだからと、あの後、精霊王にはお茶とお茶請けのお菓子をあげて、クリカラ達には軽食を出して渡した。

旅先で気軽に食べられるようにとお弁当のように容器に詰めたサンドイッチやおかず、そしてカップにスープを注いで配った。

彼等はそもそも早起きしてしっかり朝食を摂ったらしい。
のんびりしていたのはノアとアークくらいだった。


そうして時間を潰して、いざ協議会へと臨んだのだった。



会議場は、普段魔王陛下が臣下と打ち合わせに使う大きな円卓のある部屋だ。

華美な装飾など無く、柔らかいアイボリーのウッドカラーで統一されている。
何となく猫の逃げた魔王陛下の雰囲気だな、と思った。

間違っても他国侵略や大量虐殺を計画しそうな雰囲気では無い。

「昨夜は寛げましたか? 皆様、元気そうで・・・」

そう言ったセラフィムが不自然に言葉を切ったのを不思議に思っていると・・・。

「・・・・・・あの、そちらの方は・・・・・・?」
「・・・・・・ああ、精霊王です」
「・・・・・・・・・・・・精霊王・・・・・・精霊王?!」

セラフィムの叫びに、先に集まっていた魔人国の宰相ラヴィアや外交官達も驚愕してガン見した。

それを気にした風もなく、ほのほのと笑っている精霊王。

《今日からの処罰の話し合いなのだろう? 我もノアの関係者だからの。混ぜて貰うよ。それにを閉じ込めた檻は我にしかどうにも出来んのでな》
「ついさっき、昼前に前触れもなく現れたので連絡を忘れておった。儂らも動揺していてな、スマンの」

精霊王の後にクリカラが苦笑した。
精霊王を前に普段どおりなのはノア達冒険者組くらいだ。

「いえ、あの、その、だだだだ大丈夫っでしゅ・・・・・・ぅあ」

動揺して噛んだせいで真っ赤になったセラフィムを皆が注目する。

・・・・・・うん、魔王陛下の元に帰ってきていた猫数匹が再び旅立った模様。
もう誰もツッコまないので、諦めたんだろうな。

クリカラが笑いを堪えているのを横からバシッと叩くリュウギに魔人国の人がギョッとしたが、笑ってしれっと流す。

「コホン、では座っても?」
「あ、ああ失礼。では着席して始めよう」

そして漸く始まりを迎えた協議会。

処罰の優先度は竜王国が高いので、交渉にすらならないかもしれない会議が始まった。

まずはやはり今回の大まかな騒動の概要を話し、その中で問題となった第4王子殿下の行動とノアの拉致事件、犯人の過去の問題行動が焦点となった。

「では、まずは第4王子殿下の処罰をそちらがどうお考えかお聞かせ願います」

リュウギがどうやらこの場を取り仕切るようだ。

「時間は限られておりますゆえ、サクサクと進めましょう」

そう言ってにこりと笑う。
・・・ちょっと慇懃無礼な感じだが。

いくら予定を考えて日程を組んでいるとはいえ、竜王陛下であるクリカラはそんなに暇では無いのだ。
魔人国に来るだけでも片道一週間かかっている。そこに会議で最長一週間を見込んで予定を開けた。
そして帰国にまた片道一週間。

半月以上を不在にするのは、ひとえにダンダリアンの処罰の為。
---リンドヴルムとアリテシア、そしてノアの為なのだ。

「・・・こちらとしては第4王子の身分を剥奪、廃嫡して北の塔に幽閉を考えております。生涯をそこで過ごすことになります」

淡々と告げるラヴィアとは対称的に顔色の悪いセラフィム。
そりゃあそうなるよな。
自身の胎を痛めた可愛い我が子を、一生出られない塔に幽閉するんだものな。

「その辺りが妥当かの」

クリカラがそう言った直後、ノアが思わず口を挟んだ。

「あの、幽閉まではしなくていいんじゃないかな」
「・・・だが」
「身分を剥奪して王子じゃなくなれば、後はちょっと誓約で縛って、冒険者でいられるようにしたら良いと思う。俺は彼に特に酷い目に合わされてないし」
「・・・良いのか?」

ノアの提案にアークが困り顔で聞く。

「だって、魔王様と宰相様っていう両親がいて、お兄様達もいて、家族なんだよ? まあ、色々ヤンチャしちゃって今回は大事になったけど、反省はしてるんだよね?」
「---今までに無いくらい、落ち込んで塞ぎ込んでおります」

ラヴィアが息子王子の様子をそう告げる。
セラフィムも眉を下げてうんうんと頷いている。

「・・・・・・王族としての責任を問うなら、甘いことを言ってると思う。でも、生きているのに会えないっていうのは、凄く辛いよ」

せっかく側にいるのに。
会えないことの辛さは俺が一番分かってる。

そう言って儚く微笑んだノアに、誰が何を言えようか・・・。



静まり返った部屋で、ぼたぼたと涙を溢すセラフィムがゆっくりと頭を下げた。

「我が、言えた事では無いが・・・どうか・・・寛大な、処罰を・・・っ」

それに倣って、ラヴィア達も頭を下げる。

「---愛されてるんだね・・・良かった」

ノアが安心したように笑った。
それを合図に、部屋の空気も和やかになった。

「---では、誓約の内容は後で詰めるとして、王子の身分を剥奪、廃嫡でただの冒険者とする・・・でよろしいですね?」
「うむ、良かろう」
「---ありがとうございます」


こうして第4王子殿下の処罰が決まった。






※暫くと記載していたので名前を忘れて確認してしまったw



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