289 / 533
285 その頃の竜王陛下(ノア行方不明事件)
しおりを挟む※遅くなりました。
「何ぃ---!! ノアちゃんが行方不明だと---?!」
ここは竜王陛下の執務室。
今しがた齎された『ノアズアーク隊』からの情報に、竜王陛下は椅子を後ろに倒すほどの勢いで起ち上がり、叫んだ。
あまりの怒声に咄嗟に耳を塞ぐ側近達と護衛の近衛騎士達。
---防音のしっかりした部屋で良かった。
キーンとなった耳を労りながら、竜王陛下以外の面々は心の中で思った。
と、次の瞬間・・・。
「討ち入りじゃ---!! コレから魔人国に討ち入りするぞ---!!」
「はぁ---?! 何、バカなこと言ってんですか?!」
「そんなこと出来るわけ無いでしょうが!! 戦争になりますって!!」
「お前達、陛下を取り押さえろ!!」
「「陛下!! 落ち着いて!!」」
それなりにお歳を召しているとはいえ、さすが現役バリバリの竜王である。
側近3人に近衛騎士2人が総出で抑え込んでもじりじりと扉に向かっていく竜王陛下を最終的に止めたのは側近の一人リュウギのひと声だった。
「そんなことをして、後でノア様が知ったら泣きますよ、絶対に!!」
「---う、そ・・・そうかな・・・そうだな。優しいものな・・・、自分のせいだと責めるよな・・・」
「・・・分かったら落ち着きなさい」
「・・・はい」
叱られた子供のようにしおらしくなった陛下を見て、もう大丈夫だろうと皆は離れた。
側近である三人は陛下が落ち着いたところで執務室の片付けに動いた。
まず、青竜であるオウリュウが倒れた椅子を戻して陛下を座らせる。
次に銀竜のリュウギが鎮静作用のあるハーブティーを淹れてきて陛下に飲ませる。
最後に赤竜のリョウメが吹き飛び散らかった書類を拾い集めて揃えると、机に戻した。
「・・・落ち着いたか、クリカラ」
陛下の乳兄弟で付き合いの長いリュウギがわざわざ私事の時のように陛下の名を呼び、落ち着かせた。
「---おお、すまん、つい。ありがとう」
ハーブティーを飲み始めて落ち着いたようだ。
フーッと溜息を吐く竜王陛下。
「・・・では落ち着いたところで、続きを話しても?」
オウリュウが手元の書類を見ながら声をかけたので、クリカラも頷く。
「---届いた情報によると、ノア様が迷宮に攫われた原因の一つに魔人国の第4王子殿下が関係しているようですね」
「・・・・・・どういう事だ?」
「アルカンシエル様達の証言によると、スタンピード並みに襲ってきた魔物に混じって、それまで行方不明だった冒険者達も操られたように襲ってきたそうです。その中に要救助者として依頼を受けた第4王子殿下がいらっしゃったそうで・・・・・・」
オウリュウが言葉を切った。
クリカラもリュウギもリョウメも黙った。
・・・つまりは、だ。
「ノアちゃんの性格上、救助依頼の人物な上に周りも同じ冒険者達だから手を出しづらかったのであろうな・・・。ソコを狙われたか」
クリカラが苦い顔で呟く。
それに頷く側近達。
側で聞いていた近衛騎士達もうんうんと頷いている。
「そもそも、何故ノア様が狙われたのかって話なんですが?」
リョウメがもっともな疑問を投げかけた。
確かに、いくら可愛いからといってピンポイントで狙われた意味が分からない。
「・・・それが、どうやら銀色の瞳の者を狙っていたようで・・・。精査してみたら今までの行方不明者も色の濃淡はありますが銀色に近い色合いの瞳だったらしく」
「---何か意味があるのか?」
「その辺りはまだ何とも・・・次の情報を待つしかありませんが・・・」
「今の問題はソコよりも、アルカンシエル様ですよ」
オウリュウの言葉に一同、深い溜息を吐く。
「・・・何とかなっているのだろう? 何処かが消えたと言うような情報は入っていないよな?」
「レオニード様達が根性で抑えてくれたようですね」
「・・・・・・はぁ、この時ほど弟が冒険者で良かったと思ったことは無いのう。よくぞ止めてくれた・・・。じゃが、まあ、ノアちゃんが無事かどうかで今後の流れが変わるだろうな」
「ノア様に何かあれば、その時は・・・」
「討ち入りじゃ!」
「「「デスヨネ!!」」」
竜王陛下とその側近達の黒い笑みに、近衛騎士達も賛同するように笑った。
今は堪えたが、次は無い。
---その頃の魔人国では・・・。
「---っ悪寒が・・・?!」
「・・・陛下? 如何なさいましたか?」
「---いや、気のせいだろう・・・。はぁ、あの愚息は全くろくな事をせんな・・・」
「無事に保護はされましたが・・・その代償が・・・」
「・・・竜王国から宣戦布告でもされそうでコワイ・・・・・・」
「早いところ解決して貰わねば・・・はぁ---」
執務室では、魔人国の国王が何やら感じたのか、体をブルッと震えさせたとか何とか・・・。
数日の後に、本当に震え上がることになろうとはこの時は夢にも思わなかっただろう。
204
お気に入りに追加
7,359
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる