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279 閑話 ラミエルの想い 3
しおりを挟む栄養を摂って元に戻ったラミエルは、ギルドタグで体力がFだったのがAにまで戻り、元々高かった魔力も、訓練して普通の魔法も使えるようになってS+にまで上がった。
カフカとPTを組んで、ぐんぐんとランクを上げた。
そしてAランクになって俺にも『光速の雷』なんて二つ名が付いたある日、討伐依頼先の洞窟内で予想外の崩落が起きた。
巨大な水晶が岩などと共に崩れ落ち、ラミエルの頭上から襲ってきたのだ。
「ラミエル!!」
「カフカ?!」
咄嗟にカフカがラミエルを押しのけ、結果、カフカが串刺しに---。
「カフカ、カフカ?! 死ぬな! 待ってろ、すぐに助けるから・・・!!」
どう見ても助からないような傷だったが、ラミエルは叫びながらカフカの体から水晶を抜いた。
---次の瞬間、瞬く間に傷が塞がった。
「---へ?」
「・・・・・・ぅ、るさい・・・」
「は?」
何処からどう見ても瀕死だった。
ピクリともしていなかった。
なのに、これは・・・夢?
「---あー、うん。混乱するよなあ。・・・ちょっと待て。場所を変えよう」
ムクッと起きると、何事も無かったように穴だらけで血塗れの服のまま歩き出したカフカの後を呆然と追いかけた。
「---つまり、カフカの体はほぼほぼ不老不死、だと・・・」
安全を確保したところで着替えたカフカからザッと話を聞いて、なるほどと思った。
以前からカフカは、何処か線引きしてそれ以上踏み込ませないところがあったからだ。
「そうだ。・・・騙すつもりは無かった。今までこんな重傷を負う事も無かったからな。それに、どうせラミエルの方が先に逝くだろう? 話せばきっと一緒にいるのが辛くなって去って行くだろうと・・・なら黙っていれば良いかなと・・・自己保身だな。すまない」
ラミエルが離れていくのが怖かったと言って、しょんぼりしているカフカが可愛くて。
「それって、俺もなれますか?」
「---え?」
「俺も、貴方みたいに、貴方と同じになれるかって言った。俺も貴方と同じ不老不死になって、ずっと、貴方と生きていきたい。愛しているんです、貴方を」
揺るがない愛情を持って見つめた。
「---たぶん、出来るよ。ずっと俺の体液を摂取してるし、眷属として、おそらく俺の血を飲めば適合すると思う。だが、途中で気が変わっても解除は出来ない。・・・良いのか?」
迷っているカフカに俺は頷く。
「貴方にこの命を救われてからずっと、俺は俺の一生を捧げると決めて今まで生きてきました。後悔はしません。寧ろ、ここで諦める事の方が後悔する。お願いします」
「---分かった。目を閉じてくれるか?」
そう言ったカフカを信じて目を伏せると、掌を切ったようで、血の匂いがした。
そのまま口元にカフカの唇が合わさり、口の中に血の味が広がった。
それをコクンと飲み干し、目を開けるとカフカが心配そうに見つめていた。
思ったよりも変化は無い。
短剣で掌を切ると、切ったそばから塞がった。
「---大丈夫そうだな」
驚いている俺に複雑な顔でそう言ったカフカ。
だから俺は笑って言ったんだ。
「これでやっとカフカと一つになれた。身も心も、俺達は一つだ。ありがとう、愛してるカフカ」
「---俺も愛してる。本当はずっと言いたかった。俺の番いになってくれ、ラミエル」
「---っ喜んで!!」
かつてリンデンとラグナロクに言われた『お前はカフカの番いらしい』という言葉を改めて思い出す。
---ああ、本当に番いだった。
こんなに嬉しいことはない。
こうして晴れて番いになった俺達は、後始末をして冒険者ギルドに戻ると、暫く二人っきりで蜜月を過ごした。
暫くして拠点を転々と変えながら、腰を据えようと冒険者を引退後、カフカはここ魔人国のサブギルドマスターに落ち着いたのだった。
カフカにとっては原点回帰したことになるが。
俺は同じく引退後、サポートとしてカフカに影のように寄り添った。
もちろん私生活でも常に寄り添っている。
俺にはナイトメアの能力として夢渡りという特殊なモノがある。
この夢渡りは文字通り人の夢や精神に潜り込み、移動することが出来るというものだ。
だが実は、これは相手が夢を見ていなくても起きていても可能なのだ。
影に潜むような能力だから。
そして主にカフカの元に戻るのに便利だ。
諜報として潜り込むのにも向いているのでめちゃくちゃ役に立っている。
もちろん誰にでも潜れるわけじゃないし、通れない結界もあるが。
こっそり影に潜んで盗み聞きなんて朝飯前だ。
今日も今日とて、愛するカフカの為に頑張る日々だ。
だからギルマスのオネエ。
アイツを思い出させる役立たずは早く消えろ。
カフカに余計な心労をかけるんじゃねえよ。
その数日後、カフカがギルマスに、ラミエルがサブギルマスになったのであった。
そしてこの偶然が実は必然だったと気付くのはもう少し後・・・・・・。
※次から本編に戻ります。
読んで下さってありがとうございます。
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