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282 竜王陛下に御願い!!
しおりを挟む「---どうしてこうなった?」
アレからとんとん拍子に話が進み、何故か竜王陛下御自ら魔人国に非公式訪問をする事が決定した。
日程は今日から一週間後。
協議の内容によっては時間がかかるかもしれないからと、数日から一週間ほどの滞在の余裕を持たせてあるそうだ。
来るのは竜王陛下御本人とその側近1名、陛下方の護衛として近衛騎士5名。
そしてヴァルハラ大公閣下とその側近1名、更に魔法騎士団長とその部下2名の総勢12名。
お忍び故の少数精鋭、面子が豪華過ぎる。
カフカが机の上に肘を置き、組んだ手の甲に額をのせて項垂れ、深い溜息を吐く。
「・・・・・・さすがに圧巻ですね。錚々たるメンバーで・・・」
そう言って肩の力を抜くラミエルも緊張しきりだった。
思い返すのは昨日---。
ノアの錬成した手の平サイズの通信魔導具をアークがヴァルハラ大公家に転移し、本当に竜王陛下の元まで持っていかせたのだ。
それも渋々とかではなく、ウラノス自ら仕事を放り出し嬉々として王城へと向かっていったのだ。
向かう馬車の中で、その間、試運転よろしくウラノスとノアはずーっと喋っていた。
それだけでノアがどれだけ大公家の人達に溺愛されているのかがよく分かる。
確か、三男であるアルカンシエルを溺愛していたのでは無かったのか?
思わずラミエルにアイコンタクトを取ってしまったくらい驚いた。
ノアの方がよほど溺愛されているのでは無いだろうか?
そしてそれは王城でも言えた。
ずっと繋がりっぱなしで話しているウラノスを見て近付いて行っては、相手がノアだと知れば気さくに声をかける。
特に竜王陛下の様子には目を疑った。
『ノアちゃん---!! 大祖父様じゃよ---!!』
ギルドで様子を見ていると凄い勢いでやって来て、開口一番のセリフがアレだった。
思わずギョッとしたのはカフカとラミエルだけだったが。
ノアは動じることなく普通に会話をしていく。
レオン達もいたって普通にしているので、これが通常運転なのだと知れた。
「ご無沙汰してます、大祖父様。お元気そうで何よりです」
『うんうん。ノアちゃんも聞いたぞ! 魔人国で大変だったんじゃろう? ソイツを成敗しに儂もそっちに行くからの、待ってておくれ!』
「ありがとうございます。それで、あの、その事で魔人国の冒険者ギルドのギルドマスターと話をして貰いたくて。今、時間大丈夫です? ギルドマスターとサブギルドマスターも一枚噛みたいそうなので」
もしもしノア殿?
その言い方、悪巧みの台詞っぽいんですけど?!
一応、お伺いを立てるノアにニカッと笑って応える竜王陛下。
『おう、構わんよ。面白そうだ。どうせそっちが最優先事項じゃ。良いな?』
そう言われて応えたのは陛下の側近。
溜息を堪えるように一呼吸置いてから言った。
『・・・陛下は言いだしたら聞かないでしょう? 構いませんよ。どうせ今もその事を話しておりましたので、このままどうぞ』
『・・・という事じゃ。で? お主がギルドマスターか?』
こちらに話を振られて、慌てて応えるカフカ。
「お初にお目にかかります。竜王国の太陽であるー・・・」
『よいよい、普通に話せ』
「・・・は、ありがとうございます」
気さくに応える竜王陛下に、カフカも恐縮しながらも応えた。
そんな感じでどんどん話が進み、怒涛の勢いで非公式の訪問をする事が決まっていったのだ。
そして---。
『詳しい日程と連れて行く人数と人選は、魔人国とやり取りをして決まったら知らせる』
そう言ってビシッと締めたと思ったら、ウラノスと陛下でノアの(映像と声を)取り合いする様子が映し出されて、呆れたような側近と近衛騎士も端に映って・・・。
「---じゃあ、後はヨロシク」
「またね、大祖父様、義父様」
アークとノアがそう言って通信を切って、静まり返る執務室。
「相変わらずだな、あの二人は」
「威厳ナニソレ?って感じだよな」
「ヴァルハラ家の人、もはやアークよりもノアの事を愛しちゃってるよねぇ・・・」
『・・・・・・輪をかけて重くなってないか?』
そんな会話を聞きつつ遠い目をしていたカフカとラミエルだった。
そうしたら、昨日の今日で日程と非公式訪問の人員のリストが回ってきて・・・。
「早っ?!」
仕事早すぎだろう。
苦笑するラミエルを横目にリストを読みすすめていくと、最後の方に一文添えてあった。
【魔人国冒険者ギルドマスター・カフカ及びサブギルドマスター・ラミエルも同席の上、処罰に意見を述べる事を認める】
「・・・・・・本当に頼んでくれたんだな・・・」
アレへの怨みを晴らす機会を作ってくれた。
「良かったな、カフカ」
「ラミエルこそ」
これで思う存分、倍返し、いや百倍返しくらい出来そうだ。
二人してニヤリと笑った。
※ストック切れました。更新遅れるかもです。
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