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267 オトシマエ 1
しおりを挟む実はめちゃくちゃ怒っていたということが分かった精霊王だったが、その後、詳しく話を聞くと・・・。
《この蔓性植物は、我が改良した古の森の植物でな、我が壊そうとか許しを与えるとき以外では切れない蔓なのだ。そしてこの蔓は中のモノの魔力をぎりぎりまで吸収して花をつける》
「・・・・・・それって・・・」
「・・・まさか、生命維持に必要な分以外を吸い取るってヤツ?」
ギギルル兄弟が思い至って、思わず呟く。
《そうさの。中のモノの寿命が尽きるまで吸い取って花を咲かせ続ける。そして咲いた花は魔石の実をつけるのだよ。不要な魔力の再利用・・・素晴らしいだろう?》
言外に『お前の生存価値はそれだけ』といっているようなモノだった。
---精霊王って、実は恐ろしい・・・・・・?!
ノアと同列で怒らせたら恐い方だ・・・と全員が認識したのだった。
「・・・ところで、コイツって今、迷宮の支配者じゃない? 迷宮から切り離して大丈夫なの? いや、迷宮の方が心配なんだけど」
ルルが戸惑いつつもそう言ってきた。
それにいたって普通に応える精霊王。
《何、まだ迷宮と接して日も浅いし、少ーし干渉出来るくらいの些細な関係性なのでな、全く問題ない。時間が経てばすぐに元の迷宮に戻るさ》
「・・・・・・日も浅いって・・・でも、ゆうに200年はココに居たんだよね?」
「・・・精霊王の感覚だと、瞬き一つくらいなんじゃねえの? 大体、精霊王って何歳なん---うわ、藪蛇だった!」
またしてもギギの失言に、シェイラがチラッと睨んだ。
「・・・学習しないねえ」
やれやれと深ーい溜息を吐くルルに苦笑いのレオン達だった。
「---そういえばさ、コイツってアリテシアの仇なんだよね?」
スンッとした顔でノアがそう言った。
先ほど、ノアは全部憶えていると言っていた。
操られていたときのことも全部聞いて憶えていると。
ノアの言葉に、まさか聞かれていたとは思わなかったのか、ダンダリアンは檻の中で真っ青な顔になった。
「ああ、得意げにそう言ってたな」
「「言ってた」」
「バッチリ聞いたよ」
「おう。巫山戯んなって感じだったぜ」
『此奴のせいで・・・許すまじ!』
アークを筆頭にヴァンも思わず呻ると叫んだ。
それを知らなかった精霊王は目を瞠った後、イイコトを聞いたとでも言いそうな黒い笑顔でニヤリと笑った。
《ほお・・・初耳だの。それならばもっと仕置きをせねばなあ・・・?》
そう言ってブツブツと独り言を言い始めた精霊王。
時折漏れ出る単語にあらぬ想像をしてしまい、皆、戦々恐々としてしまった。
---いやだって『蔓でたまに締め付けて』とか『古の森の魔獣の群れの中に置き去りに』とか聞こえるんだけど!
もちろん誰一人として同情なんかはしないけども。
出来れば八つ裂きにしてやりたいが、リンデンが自分の手でやりたいだろうし、何より今回の事件の重罪人なので生きて冒険者ギルドに連れて行かないと、だし。
「精霊王、そんなんでも今回すぐには殺れないから、無力化して連れて行って。後で好きにしていいと言われたらな。殺るのはコイツが一瞬で楽になるから駄目だ」
「この先、死ぬ瞬間まで苦しめば良い」
アークに続いてノアも絶対零度の銀の瞳を向けてそう言いきった。
---本当は腸が煮えくりかえっているよな。
アークはノアを甘やかし構い倒そうと心に誓った。
精霊王を何とか宥めすかして、蔓の檻の中のダンダリアンにノアがその場で錬成した魔法使用不可の首枷を嵌め、騒がれると煩いので『沈黙』の魔法をかけてから、迷宮内の転移の水晶に触れて迷宮の出入り口に転移した。
ちなみに、蔓の檻は精霊王の力でギュッと圧縮されて、今は手のひらサイズの球体に縮んでいる。
これも精霊王のさじ加減で大きさは自由自在だ。
当然、元のサイズよりは大きくならないが。
「---っ!! お帰りなさいませ!! 皆様、無事で・・・っ!」
迷宮から転移した瞬間、ギルド職員が気付いて駆け寄ってきた。
どうやら先に精霊王が転移させた冒険者達の介抱やら何やらで人手を増やして対応していたらしい。
見ると何人もの職員や冒険者達が忙しなく動き回っていた。
「---無事に戻られたようで何よりです」
アーク達に近付いてきてそう声をかけたのはサブギルマスのラミエルだった。
連絡を受けて、行方不明だった冒険者達の後始末に来たのだろう。
中には問題の王子もいただろうし。
それともそろそろ問題解決になりそうと踏んでいたのか?
---有り得るな。
暗部のような仕事をしていたそうだから、何かしら分かるのかもしれない。
アーク達の気持ちを察したのか、にっこりと人好きのする微笑みを見せる腹黒だった。
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