迷い子の月下美人

エウラ

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257 番い至上主義の傾向と対策

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一旦冒険者ギルドを後にしたアーク達は、泊まっている宿『火の鳥』に戻った。

「---お帰りなさいませぇ・・・?!」

宿の主人が気付いて声をかけたが、異様な雰囲気にビビって言葉が止まってしまった。

「---おおい、どうしたんだよ? 何でこんなヤバめな空気なの?! 何かあった?!」
「---あー・・・・・・悪いな。かなりヤバい事になっちまって、アークの機嫌は奈落の底まで落ちてる・・・」

思わずギギを引っ張って小声で問い質せば、そんな返答が返ってきて、宿主は顔を真っ青にした。

「・・・そういや、一人足りない。ぇ? アルカンシエル様の番い様・・・ノア様が、いないじゃん。---?!」

ちょっと待って待って!!
竜人の番い至上主義の事は俺でも知ってるぞ!
囲って監禁、げふんげふん、めちゃくちゃ嫉妬深くて独占欲の塊のヤンデレ---って!

そんな竜人のアルカンシエル様が番い様を手放すはずもない。

・・・・・・まさかトラブルに巻き込まれた?!

「・・・・・・そういや、少し前に『箱庭の迷宮』の方から竜化した竜人達が翔んできたって・・・あれ?」

今、Sランク冒険者達に迷宮の調査依頼出してて、ココにはそのSランク冒険者達が揃ってて?

今、一人欠けてるって事は・・・?

「---まさか、迷宮で何か、ノア様にあったって事?!」
「・・・そういうことだ。・・・ノアが迷宮に攫われた。今のアークには近付くな。死ぬぞ?」
「---ひえ・・・・・・りょりょ、了解デス」

ひとまずギギに全員の部屋の鍵を渡すと、当分繋ぎはギギかルルに間に入って貰うことを約束して宿主は別れた。

部屋へ上がっていく後ろ姿を見送りながら、宿主は独りごちた。

「・・・・・・ノア様、無事だと良いけど・・・。何かあれば、この国、消えてるよな・・・」

冒険者の切った張ったは自己責任となっているが、さすがにSランク冒険者の指名依頼での死亡など起こっては冒険者ギルドの責任追及も有り得る。

そうでなくとも、今回はその指名依頼のSランク冒険者が竜王国の王族関係だということ。

このまま解決しなければ、下手をしたら国同士の揉め事に発展するだろう。
そうなったら、魔人国ウチは間違いなく負ける。

真っ青になる宿主だが、その前にアークによって物理的に消滅する可能性が高いことには気付いていないのだった。



さて、とりあえず、とアークとノアの部屋に集まって防音結界の魔法を展開すると、レオニードが言った。

「アーク、さっきはさすがに動揺していた上にゴタゴタしていたから確認できなかったが、何か、ノアと連絡が取れるような、もしくは位置が分かるような手段が無かったか?」

それを聞いて、アークがハッとした。
自分の左腕の腕輪を見る。

ノアが錬成したお揃いの婚姻の腕輪だ。

これは精霊王に初めて会ったときにノアが改良したもので、他人には見えない地図上にマーカーが点灯するようになっていた。

「---そうだ。これ、この腕輪に互いの位置が分かるようになっている。ただ、迷宮の中と外では反応しないかもしれない」

アークの言葉を聞いて、しかし皆は頷く。

「試しにやれるか?」
「・・・やってみよう」

そう言って起動させると反応があったが、ずっと『箱庭の迷宮』の場所を指している。

「・・・・・・マーカーが出たが、迷宮から移動してはいないようだ」

だが、マーカーが出ているということは、生きているということ。
本人の魔力に反応するようになっているからだ。

「ということは、確実に中にはいるということだな。さすがはノアの魔導具! ヨシ、それだけでも上等だよ!」
「ああ、そうだな! アーク、ノアの為にもノアの手料理でも食べて体力をつけておけよ。じゃないと、助けられるものも助けられなくなる」
「・・・今はノアちゃんの為に、耐えろ。ほら、何時ものテントの中ならノアちゃんのものがたくさんあるだろう?」
「そうだよ。少し休め。俺達が色々と動いておくからさ」
『お主がヘタレていては、ノアが心配するぞ』

レオンを始め、皆がそう言って笑った。
その気遣いにアークも幾分肩の力を抜いた。

「---そうだ、な。うん、少し寝るわ」

その言葉に皆が部屋を出て行く。
ヴァンはソファに寝そべった。

『ほら、早うテントでノアのモノでも抱き締めて寝ることだ』
「はは、ノアのモノ、か。・・・早く本物を抱き締めて眠りたいよ」

そう言ってテントを出すと中に入っていった。

『---ノア・・・。早く連れ戻さないと、アークは迷宮ごとココを破壊しそうだ』

リンドヴルムの再来は勘弁して欲しいの・・・。

そう思わずにはいられないヴァンだった。


---一方、その頃。

番い至上主義の竜人にとっては番いが全て。
傾向は概ね同じで嫉妬と独占欲。
囲い込んで、場合によっては監禁紛いの事をするヤンデレ気質。

対策としては、とにかく番いから離さないこと。
番いに拒否されると絶望的になったり、番いを巣に閉じ込めて一生外に出さない事もあるなどと言われているが、個人差がある。

アークは理性的な方だが、ノアが絡むとポンコツになりやすい。

---というような事をレオニード達とギギ達が話していることを知らないアークだった。

ギギ達も、知ったからといってどうにもならないのだが。








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