250 / 534
246 着任早々大問題
しおりを挟む新ギルマスのカフカを先頭に執務室に向かった一行は、勧められるままソファに座った。
といっても、ノア以外図体のデカい5人に通常サイズのフェンリルが座るスペースはさすがに無い。
取りあえずノアを膝に乗せて一人用のソファにアークが座り、ノアの膝に仔狼サイズになったヴァンが乗った。
隣のソファにレオニードとシェイラが座り、ギギルル兄弟はレオニード達のソファの後ろに立ったままだ。
後ろに視線を寄越して気にしたノアに、ギギは気にするなとウインクをして、ルルはにっこり笑った。
全然問題無さそうなので、ノアも良いかと前を向いた。
いつの間にかラミエルによってお茶も出されていた。
立っているギギルル以外のメンバーはひとまずお茶で唇を湿らせた。
「---今回の後始末はそちらに任せよう、カフカ殿。ところでラミエル殿は見かけない顔だが、元々ギルド職員だったのか?」
「---ギルド職員ではありましたが、裏方の・・・王家でいうところの『影』『隠密』といったところでしょうか」
レオニードが代表して話し出すが、どうやら現サブギルマスに面識が無かったようでカフカに聞いたところ、そんな返事が返ってきた。
「・・・そんな裏方を今回サブギルマスとして表舞台に出す意味は?」
レオニードが若干険しい声で問う。
そんな人物をサブギルマスにするなんて、何か裏があるかもしれない。
「・・・・・・警戒はごもっともです。ですが、今回の件でほとほとあの元ギルマスには参っておりまして・・・いい加減使えない・・・いえ、役立たず、ええと、疫病神ですね! もう本当に後始末が大変で大変で・・・。ラミエルにも随分働いて貰ってるのですよ。ですから、私がギルドマスターになったときには彼しかサブギルドマスターはいないと思いまして・・・」
違った。
めちゃくちゃ苦労人だった。
机に肘をつき項垂れている顔は、何とも言い難い苦渋の表情だった。
そりゃあ、そんな苦労を共にし、今まで片腕のように後始末をしていればそのままいて欲しいよな。
だがしかし、ノアには人好きのする柔和な美丈夫に見えるだろうが、ラミエルは一癖も二癖もある厄介な性格だぞ。
カフカくらいにしか手綱は握れないかもしれない。
味方であれば頼もしいだろうが。
これからも敵にならないことを祈るだけだ。
そういうわけで、空気を読んで誰も深くツッコまなかった。
・・・藪を突いて蛇を出したくは無い。
「---ん? 今回の件って?」
不意にノアが声を上げた。
「? 今回の件って、昨日の暴走じゃねえの?」
ギギが首を傾げて言ったが、ノアが首を横に振った。
「いや、ほとほと参ってるって、現在進行形だったよね? 片付いていないんでしょ? 昨日とは別件じゃないの?」
ノアに言われてハッとしたアーク達はカフカに注目する。
「・・・さすがですね、ノア殿。ええ、現在進行形で厄介な事が起こっているんですよ。それで今回の指名依頼で出した内容を追加というか変更したいのです」
「---今回の指名依頼って、『箱庭の迷宮』の調査だろう? 行方不明者が多数いるってヤツ・・・」
レオニードが確認する。
指名依頼はそういう内容だったはずだ。
アーク達も頷く。
「・・・・・・ええ、そうです。それで依頼しています。・・・ただ、出来れば行方不明者の捜索も御願いしたいのです」
「・・・・・・それは、ついでだしそのつもりでいるが・・・わざわざお願いするという事は、何かあるのか?」
その質問に、端整な顔立ちを歪ませてカフカが応えた。
「・・・・・・行方不明者の中に、我が国の王族が一人、含まれているのです・・・」
「---は?」
「---あのバカが良く確認もせずに『箱庭の迷宮』の立ち入り許可を出した挙げ句、今現在、行方不明になってしまっているのですよ!!」
カフカが思わず声を荒げて叫んだ。
195
お気に入りに追加
7,357
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶のみ失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる