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243 宿の確保と冒険者ギルド 2
しおりを挟む「痛たた・・・、ちょっとぉ、アンタ達ギルマスの扱いが酷いわね!」
クエストボードの下辺りに投げられたギルマス(仮)が、野太い声で文句を言いながら頭を擦りつつ体を起こした。
ギギ達に投げられて逆さまになっていたから、頭を打ったようだ。
幸いクエストボード付近に人はおらず、被害は壁の凹みと付近の椅子くらいで済んだようである。
それにしても平然としている冒険者や職員達を見るに、こういうのは日常茶飯事なのだろう。
・・・良いのかそれで、ギルマス(仮)。
ちなみに本人から紹介を受けていないので一応(仮)を付けた。
「そもそもいきなり突撃してくるギルマスが悪い」
「そうそう。俺達の情報はギルド経由で受け取ってるんだろ? なら、ノアがアンタみたいなヤツが苦手だって分かってたよな?」
「・・・・・・う、だってぇ、待ちきれなかったんだもん・・・」
シュンとしつつも、モジモジと指を弄る身長2m越えの筋肉ムキムキ色黒金髪野郎・・・。
---うん、可愛くねえ。
「もんなんて言っても可愛くねえし!」
「何でよ! 人それぞれ、個性よ個性!!」
「・・・・・・俺達には無理。・・・まあ長い人生、誰か一人くらいはいるんじゃないか、アンタを可愛いと言って受け入れてくれるヤツ」
「---いねえから頑張って婚活してんだろうが!!」
ギルマス(仮)が逆ギレして叫んだ。
普通に叫んだ。
「いや、もういい加減先に進もうぜ。そもそもアンタは誰なんだ? 俺達、紹介されてないんで分からないんだが?」
ずっとやりとりを横で見ていたアークが呆れてツッコんだ。
ノアは今の雄叫びでまたちょっとぴるぴるしていてアークは威圧したいところを堪えていた。
「もう面倒臭いから宿を探しに行くか?」
「そうだね。ノアちゃんを怖がらせるヤツのいるところになんか、いなくていいよね? ギギ達、何処か良い宿紹介してくれる?」
レオニードとシェイラもイラッとしている。
若干威圧が出ていて、職員達が顔を青ざめさせた。
「---ああ、その方が良いな。んじゃ、宿を先に確保しよう。遅くなったら部屋が埋まっちまうかも」
「そうしよう。じゃあそういうことで」
「---え、ちょっ・・・待っ---!!」
ギルマス(仮)が手を伸ばして引き留めようとするも、するりと躱してギルドから出て行ってしまったアーク達。
「---・・・まじ?」
静まり返ったギルド内に情けない声が響き渡る。
そして突き刺さる職員達と冒険者の冷ややかな視線。
「・・・・・・すみませんでした・・・」
思わず土下座するギルマス(仮)だった。
この時たまたま席を外していたサブギルマスが戻ってきて、壁の凹みと土下座するギルマス(仮)、それを見る冷ややかな目の職員達を見ておおよその見当がついたようで、深ーい溜息を吐いた。
「・・・・・・またやらかしたんですね?」
「---スマン・・・」
「・・・謝るくらいなら気を付けて止める努力をして下さい。で? 今回は何だったんですか?」
「---だ・・・」
「・・・・・・はい? 聞こえませんけど!」
めちゃくちゃ気まずそうにモジモジするムキムキ大男にイラッとしながら聞き返す。
それに更に縮こまってボソボソと話すオネエ。
「・・・指名依頼受けた、Sランク冒険者達とギギ達が来たんだけど・・・怒って帰っちゃった・・・」
「・・・・・・Sランク冒険者・・・・・・? まさか、レオニード殿達じゃあ無いですよね?」
サブギルマスが少し考えたあと、まさか、という表情で念の為、聞き直した。
「・・・・・・そのまさか・・・・・・テへッ」
モジモジしながら眉を下げて困ったような顔で言ったあとの『テへッ』に合わせたようにサブギルマスの鉄拳がギルマス(仮)の顔面にヒットした。
---ガスンッ!!
重たい音がして、再びクエストボードの下の凹みが深くなった。
ギギ達と違って容赦ない右ストレートの衝撃に耐えられなかったギルマス(仮)が気絶という名の沈黙状態になったところでサブギルマスが吐き捨てるように言った。
「---この愚図が」
この魔人国の冒険者ギルドの実質的なトップは実はサブギルマスだった。
本来ならばギルマスになれる器だったが、魔人族の中ではとにかく見た目が細くて美人。
初見で侮られ易い見た目を気にして、見た目ゴツいオネエが代わりにギルマスになったのだった。
代わりとは言ってもその立場に相応しい実力はあるのだが・・・。
やや性格に問題ありで、頻繁に揉め事を起こしてはサブギルマスが尻拭いをするという・・・。
結果、次に何かしでかしたらトップ交代という最後通告をしていた。
そして今回の件。
「私が最初からギルマスやってれば良かった」
この先を思うと頭が痛いサブギルマスだった。
※ギルマス(仮)のまま、名前出ず。
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