迷い子の月下美人

エウラ

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227 冒険者ギルドの特別上映会

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竜王国王宮内の魔法騎士団の鍛錬場での騒動から10日後。

本日、冒険者ギルドの訓練所は1日貸切状態だった。

何故ならこれからノアとアルカンシエルがエキシビションマッチを行う予定だからである。

そしてその前に、とあるツテから入手した記録媒体の魔導具を訓練所でどどんと上映するのだ。

興味のある冒険者達の他にも一般人も視聴可としたので訓練所は多くの人でごった返していた。

もっとも、ギルマス達が厳選して入所させた観客なのでどことなくガラが悪い。


10日前の鍛錬場での出来事は箝口令が敷かれたが、人の口に戸は立てられないもの。
少しずつ漏れていき、街中でもじわじわと噂が広がっていった。

曰く、やっぱり金竜だった。
曰く、死に神のようだった。

など。

いい加減、街中が噂で持ちきりになった今日、遂に真相が暴かれると良い意味でも悪い意味でももの凄く盛り上がっていた。

ちなみに何故10日も後になったかというと、鍛錬場の直後にノアが発情期に突入してしまったからであるが、そこは城下には漏れていない情報である。

なので噂を広めるために設けられた期間だと思われていた。

真相を知る者はギルマスとサブギルマスのみ。
ちなみにサブギルマスはクーロンという竜人で、ギルマスの従兄弟らしい。
最初にアーク達が冒険者ギルドに来たときは所用で不在だったらしい。


そうして集まった・・・ある意味集められた観客の前には記録媒体の魔導具が設置されていた。
空中に浮かび上がる映像に固唾を呑む。

---それは凄惨な映像だった。

様々な角度から記録されたは、最初にとある騎士の罵倒から始まり、大人しそうな、華奢なノアの雰囲気がガラッと変わると一瞬にして緊迫した空気になり、戦闘開始からわずか5分で屍の山が築かれていた。

その後もノアがポーションをかけて傷を治してはまた攻撃して、ということを繰り返している辺りでざわめきは消えた。

後半は興奮したのかノアが噂通りの黄金色の翼を顕現し、爪や瞳も竜人化していた。

魔法はおろか、剣や戦鎚を軽々と振り回す姿に畏怖の念を抱く。

「・・・・・・噂では聞いちゃいたが、こりゃあ噂以上だな・・・」

思わず呟くギルマスのカロン。
隣のサブギルマスのクーロンも冷や汗が止まらない。

こんなにやられてるのに死人が出てないのは、ひとえに部隊長が殺さないでくれと頼んだからだと聞いている。
それを守るだけの理性があってこれなんだな。

もし、理性が無くなったら・・・竜王国だってあっと言う間に消えちまうな。


最後はアルカンシエルがやって来たところで終わった。

訓練所は静まり返っていた。

記録媒体の魔導具だからもちろんコレは全て本当のことで。

散々バカにしていた冒険者達は顔を真っ青にしていたのだった。


それから10分後くらいに、訓練所にアークとノアが入ってきた。
ついでとばかりに、その後ろにはギギとルル兄弟、フェンリルのヴァンもいた。
もちろんギルマス公認だ。

「いやあ、アーク達が手合わせするって聞いたらいてもたってもいられなくてな」
「こんな面白いこと、蚊帳の外に置かれちゃあたまんないよね」
『仕方が無い。我も混じりたいが今回は見るだけにしてやろう』
「「代わりに特等席!」」

そういって間近で観戦する気満々だった。

「お前らそういうとこあるよな」
「流れ弾行ったらゴメンね?」

苦笑するアークに、サラッとヤバい発言をするノア。

「それは勘弁な!」
「普通に死ぬから!」
『・・・・・・どうせ結界魔法使うんだろう?』
「まあね。被害出たら困るし」
「だが本気は出さないから大丈夫だろう」
「まあ、張り切っちゃったらごめんなさい」
「「・・・・・・」」

さっきの上映見た後にそんなこと言われても説得力が・・・・・・。

なんて観客の気持ちはノアには伝わらなかった。



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