迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
上 下
227 / 534

223 ルドヴィカは密かに笑う

しおりを挟む

竜王国に帰って来たアーク達を大公家に送り届けたのち、王城に戻ったルドヴィカはコレから起こるであろう諸々の騒動に、密かに胸躍らせた。

絶対、面白いことが起こるって!


少し前、アーク達が神聖な霊山の街に着いたとき、たまたま大公家に居合わせたリュカリオン殿下が話を聞いて突撃していった後、帰り際に殿下に言ったことがフラグだったようだ。

下界で色々とノアがやらかしたようで、ありそうで無さそうな嘘か本当かって言うくらいの噂が飛び交っていた。

その中でもダントツに多いのが、竜人と兎人の混血と金竜の噂話だった。

どうやら下界の迷宮でガッツリ翼を顕現して翔んでたらしい。
確かにアソコは翔べないとキツいよな。
まあ翼を出したって事は、アークもノアももう隠したり誤魔化す必要が無くなったって事なんだろう。

近いうちに真実が知れるかもな。


数日後。

そんな噂を放置・・・ある意味ワザと広げているっぽい様子に、何かやりそうだなとウキウキしていると、リュカリオン殿下に招喚されて登城してきたアークとノアが俺の元にやって来た。

「よぉ」

自分の団長室だから気兼ねなく乳兄弟の口調に戻す。

「ルドヴィカに用があるんだが、頼まれてくれるよな?」

アークがお伺いを立てているようで有無を言わせない口調で言ってきたのに笑って、二つ返事でオッケーをする。

「良いぜ。何をするんだ?」
「仕事終わったら後でウチに来い。ソコで詳しく話そう」
「了解。あ、リュカリオン殿下は」
「さっき断って許可を取った。お前を貸してくれるってさ」
「なら、良い」
「じゃあ邪魔したな」
「・・・お邪魔しました」
「またね、ノアちゃん」

ゆるーく会話を交わして別れ、その日の仕事帰りにヴァルハラ大公家に寄る。


ソコでアークに聞かされた話に、やっぱり面白いことになったと内心にんまりしたぜ!

ちなみにこの時はノアに記録媒体の魔導具を隠蔽機能付きで大量に錬成して貰ってた。

だからノアはなーんにも知らずにアークに頼まれたからと快く引き受けてくれたんだそうだ。

「・・・・・・良いのか、それで? さすがにノアが不憫だぜ・・・」
「仕方ないだろう。使い道なんか言っちゃうと、ヘンなところで賢いから勘付いちゃうんだよ。後で幾らでも慰めるさ」
「---あー、お前のに聞こえる---」
「んだと、コラ」
「図星だろ?」

にしし、と笑っていると、魔導具を作り終えたようでノアがやって来た。

「こんばんは、いらっしゃい」
「こんばんは。お邪魔してるよ」
「ちょうど良かった。頼まれたモノ出来上がったから、確認して持って帰ってね?」
「おう、有りがとな!!」
「じゃあ、俺、義父様達のところでお菓子食べてくるね。ルドヴィカ、またね」

そういって部屋をあとにしたノアを見送って魔導具を確認した後、アークにぽそっと聞いた。

「・・・金竜の事はもう隠さないのか?」
「---ああ。陛下にも奏上したし、時間の問題だからな」
「・・・・・・片親の竜人のことを俺が聞いても・・・?」
「そうだな。父達も知っているし・・・。だがまだ漏らすなよ?」
「誓約が効いてるからな、言えねえよ」
「そうだったな。・・・ノアの父親の方の竜人はリンデンという。大賢者ラグナロクのPT仲間だ。ノアの育ての親がその大賢者ラグナロクで、リンデンは実は古竜なんだ」
「へー、大賢者が育ての親、ナルホドだからあんな魔法を・・・っておい、は? 古竜?! おまっ、何サラッと言ってくれてんの?!」
「本名はリンドヴルム。ヴァンも知己だったそうだ」
「・・・・・・はー、そう・・・・・・としか言えんわ」

なんつーか、どエラい爆弾を抱えてた。

ツッコミどころがあり過ぎてツッコめなかったわ。

「そういうわけで、口外するなよ」
「---出来んわ!! さすがに俺でも言えんわ!!」


いやあ、トンデモな情報がきてビビった。

とりあえずは直近のお楽しみを待つかな。
鍛錬場にこっそり魔導具を仕込んで、と。

くふふと笑いながら大公家をあとにした。





※前回、太刀魚で怪我した指がやっと治った!と思ったらついさっき右手親指をうっかりざっくり。前回の指先用バンドエイドが大活躍!
皆様はあまりないと思いますが刃物にはお気を付け下さいませ。
(何でそんな持ち方をしたし?!というマヌケ)
しおりを挟む
感想 1,184

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶のみ失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

処理中です...