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228 エキシビションマッチ
しおりを挟むわいわいと楽しそうなノア達とは対称的に静まり返る訓練所。
そんなことお構いなしにアークがギルマスに声をかける。
「ギルマスー、始めて良いか?」
「あ、ああ。ノアは結界魔法頼むぞ」
「了解」
心なしかウキウキ声のノアが無詠唱で瞬時に結界魔法を展開すると、観客席からはざわっとした声が上がった。
ついさっき見たまんまの魔法に、動揺したのだ。
やはりアレは本当なのだと。
とてもそういう風に見えないノアがあんなに強いなんてと、信じられないでいたからだ。
それでもまだ信じられない、信じたくないという気持ちが強いのだろう。
アーク達の手合わせに皆が固唾を呑んで見守る中・・・。
それは不意に始まった。
キィン!
甲高い金属音が響いた瞬間、結界で来るはずの無い風圧が襲ってきた、ような感覚に囚われた。
皆、瞬きすら忘れて見つめていたはずなのに、何が起こったのか皆目見当がつかなかった。
おそらく見えていたのはヴァンとギギルル兄弟にギルマスとサブギルマス。
後はAランクの冒険者で辛うじて、というところか。
最初にお互いの得物で斬り結び、その音が響いたようだった。
あまりに速い動きで衝撃が後から来たようだ。
気付いた時にはもの凄い速さで二人の打ち合いが行われていた。
それもほとんどその場を動いていない。
避けるのも受けるのも紙一重で、あのスピードで有り得ないと皆が唖然としていた。
ちなみにアークは大剣でノアはバスタードソードだが、ノアはあんなに細腕で打ち負けていない。
アークもノアも心なしか笑って見える。
数分間続いた剣での打ち合いだが、ノアが一旦距離を取ると剣をしまい、次に戦鎚を出した。
映像でも出た、ノアよりも長さのある大きなヤツだ。
絶対重いだろう、アレ。
だってノアが持った瞬間、訓練所の地面が重みで沈んでるんだから!
「・・・・・・アレ、話に聞いた魔導銀ゴーレム叩き潰したっていうヤツじゃないか?」
「・・・そうだと思う。うっわ、あんなので殴られたら死ぬって。なにあれ、ノアの足元、重みで抉れてんじゃん」
ギギルル兄弟がご丁寧に説明してくれるおかげでヤバい情報が追加された。
観客席からは悲鳴が上がっている。
想像したんだろうか。
ギギルル兄弟は、この手合わせの本当の意味を知っているので『いい気味だ』と内心思った。
ノア達と別行動をしていた二人は、街中の噂をしっかり収集していて、ギルマス達と色々探っていたのだ。
そうしてノアには内緒でこっそりとアークと連絡を取り合い、この舞台を準備したのだ。
---まあ、純粋に二人の手合わせを見たかったのもあったが。
そうこうしているうちに、アークが岩や氷などを魔法でガンガン作ってノアに放ち始めた。
大小さまざまで、大きいのはノアが隠れるくらい、小さいのは豆粒くらいとバリエーション豊富に大量に飛ばしていく。
それを楽しそうに戦鎚で砕き、打ち払い、片手で振り回す。
もう片方、左手には小振りな刀を持ち、小さい粒を綺麗に斬っていた。
そこに今度は魔法を無詠唱で放ち、サンダーでピンポイントに撃ち落とした。
その次には戦鎚を消して、魔法戦に突入した。
やはり無詠唱で焔や水、氷、雷などをガンガン放つ。
それを今度はアークが大剣で斬り、消滅させていた。
「---魔法って、剣で切れるんだ・・・」
「いやいや、普通は斬れないって! お前、俺が斬ってるトコ見たことあんのか?!」
「・・・・・・無いね? え、じゃあアークも十分異常じゃん・・・」
『何、気合いと根性を入れれば斬れるんじゃ無いか?』
「「んな訳あるか?!」」
そんな二人と一頭のツッコミを他所に、観客席はざわざわしたり静まり返ったりと忙しい。
「ギルマス、彼等の実力を知ってました?」
「情報としてはな・・・。直に見るのは初めてだ」
「・・・・・・敵で無くて本当に良かったですね」
「まったくだ」
ギルマス達も心底安堵した。
その数分後。
ギギルル兄弟達の掛け合いの合間にノアが結界の中に一回り小さな結界を張って、その中に魔法を放った。
「『インフェルノ』」
無詠唱でも問題ないが、コレはパフォーマンスなので、場を盛り上げるためにノアがワザと短縮詠唱をしたようだ。
魔法を放った瞬間、二重結界のはずなのに熱風が訓練所を覆った。
結界の中、地面が高温で溶けている。
そこに今度は別の魔法を放った。
「『アブソリュート・ゼロ』」
結界内は一気に絶対零度の寒さになり、訓練所内の者は大なり小なり、寒さに震えた。
いや、寒さのせいだけじゃ無い。
インフェルノはアブソリュート・ゼロに消火されて、一面真っ白な氷に覆われていた。
---コレを自分が食らったら・・・・・・。
そんな最悪を想像して、震えが止まらなかったのだ。
※忙しくて書き終わらなかった。
何とか今日中に投稿出来ます。
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