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207 竜王陛下への奏上 2
しおりを挟む王城の入り口の門で謁見の召喚状を見せて中へ入る。
馬車を降りると、案内人らしき従者と近衛騎士だという竜人が出迎えに来ていた。
「お待ちしておりました。ヴァルハラ大公様、御子息様、そして御子息様の番い様」
「ああ、ありがとう。案内頼むよ」
「世話になる」
「・・・よろしくお願いします」
ウラノスとアークはフード無しのコートだったが、ノアは人見知りなのでフード付きな上に目深に被っていた。
さすがにここからは不敬だろうと、挨拶がてらフードを脱ぐと、従者と近衛騎士はポカンとした。
何なら、ロータリーで警護していた他の騎士も、たまたま居合わせた貴族達もポカンとしていた。
「---おい」
アークがピリッとしたのにハッとして我に返る。
「・・・失礼致しました。こちらへどうぞ」
「・・・頼むよ?」
番い至上主義を良く知ってるだろうに・・・まあ、身内目線でもノアちゃんはめちゃくちゃ儚げ美人だからね、気持ちは分かるけど。
「ノア」
「ん」
アークに促されて手を出すと、恋人繋ぎでしっかりガッツリ握られて歩き出す。
周りの奴らのギョッとした顔。
それくらい普段の、今までのアルカンシエルからは想像もつかない行為に甘い表情。
うんうん。
その調子でどんどん見せつけてやりなさい。
湧いて寄ってくる害虫共は私達が払ってやるから。
うん。
アーク曰く『ノアにさせるとオーバー・キル』だって言うからさあ・・・。
だからノアちゃんは何も知らないまま気付かないまま誘蛾灯の役目を果たしておくれ。
ゴメンね。
アルカンシエルが後で憂さ晴らし?八つ当たり?の場は設けてくれるらしいので!
さて一度、謁見の間の控え室に移動する。
ココで呼ばれるのを待つわけだが、普通は前後数人(もしくは数組)待っているはずだが、今日はいないのか?
これも陛下の配慮だろう。
いや、もしかすると、ご自分より先に他の面々に知られたくないという嫉妬かな?
あの方もアルカンシエルを溺愛しているからなあ・・・。
「ヴァルハラ大公様、準備が整いました。こちらへどうぞ」
「ああ。アルカンシエル、ノア」
「「はい」」
「出陣だ」
いや、何処の戦場にだよ!
というツッコミを辛うじて抑えた従者が無表情を貫き、謁見の間へと案内すると門を警備する騎士に声をかける。
騎士は門の中に向かって声をあげた。
「ヴァルハラ大公家大公閣下ウラノス様、並びにアルカンシエル様、ノア様が参じます」
「---入れ」
威厳のある声がかかり、重厚そうな造りの扉が開かれる。
促されて足を踏み入れると、すでに玉座には竜王陛下の姿が。
顔を見ないように、ウラノスの後にアークと並んで進み、膝を折る。
「竜王国の太陽である竜王陛下にご挨拶申し上げます。ご尊顔を拝謁する栄誉を賜ります事、望外の喜び---」
「口上は良いから、早う紹介せんか、ウラノス!!」
「ぴえっ?!」
「ッノア、落ち着け、大丈夫だから」
「・・・・・・あちゃあ・・・・・・」
静かに口上を述べていたウラノスを遮るようにガタガタと起ち上がる音と、大きな声が響いて、思わずノアはヘンな叫び声をあげてアークにしがみつき、ぴるぴる震えてしまった。
アークは焦ってノアを落ちつかせようと懸命に宥め、ウラノスは渋い顔をした。
当の本人である竜王陛下はポカンとした後、めちゃくちゃ焦った。
「えっ?! あっ、いやそのだな」
「---陛下、発言の許可を」
「許す!」
「事前に申し上げましたよね? ノアは極度の人見知りだと。初対面の方、特に大声で叫ぶ方には怯えると」
「そ、そうだった・・・聞いていたが、つい、思わず・・・」
「思わずじゃありません! 見て下さい、こんなにぴるぴる震えて、可哀想に・・・!!」
ウラノスがビシッと指差した方を見れば、涙目でぴるぴる震えてアークに顔中口付けをされているノアが・・・。
真っ赤になって、違う意味で涙目ぴるぴるのノアに、その場にいたほとんどの竜人は庇護欲をそそられて悶えていた。
「・・・・・・あれ?」
ウラノスはちょっと想定外の状況に戸惑いつつも、何とかノアの紹介を終え、そのまま今度は竜王陛下の私室で、と移動することになった。
さすがに私室には竜王陛下と側近、近衛騎士、ウラノス達3人のみで、気楽にしていいと言われて、お茶を淹れて貰った後に断ってからノアのえげつない防音結界魔法を展開した。
「さて、ココには信頼する者しかおらんからの、詳しい内容を聞かせて貰おうかの」
ニカッと笑った顔はアークに似ていて、ああ、本当に身内なんだなとほっとしたノアを確認して、ウラノスはアルカンシエルからの話を始めた・・・・・・。
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