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200 二人の衣装合わせ 2
しおりを挟む結局テンション高いまま、すでに始まっていた布地選びを再開したようである。
「何色が良いかな?」
「黒髪で色白で、何でも似合うよね」
「お互いの色を纏わせなくちゃねえ」
「ノアちゃんの瞳とアークの髪色に金色を差し色にして・・・」
ツッコミ担当(おそらくレーゲン)が不在の為、大人しく採寸されているノアは口を挟まずに言われるがままメジャーで測って貰っていた。
ちなみに、採寸は何故かルフトである。
仕立て屋さんがいざ採寸を、となった途端にアークが。
「触らせたくない! ノアの体格は俺が把握している!」
---と言って聞かないので、ルフトが服の上から測る事で妥協した。
「ではアルカンシエル様、貴方の把握しているサイズをここに記入して下さい。私は誤差を確認致します」
「分かった。・・・いやそもそも俺が採寸すればイイのでは?」
「貴方、お針子さんの採寸の仕方なんてご存知ないでしょう? 素人は黙っていなさい」
「・・・・・・わ、悪かったよ」
面倒くさそうに言い放ったルフトに居心地悪そうなお針子さん、ムスッとしたアークに眉を下げて申し訳なさそうなノア。
そして忘れていたが、仔狼サイズのヴァンが部屋の片隅で寝転びながら言った。
『さっさと終わらせないとウラノス達が煩くなるのではないか?』
その一言にアーク達はハッとして慌てて動き出した。
『やれやれ。人型の貴族は面倒よな』
やれ洋服だ、礼儀作法だとやることがいっぱいで面倒くさい。
自分はこういうとき幻獣で良かったと思うヴァンだった。
「---それにしても貴方、ほとんど誤差が無いんですけど。何なんですか貴方、番いの事になるとバケモノなんですか?」
「そりゃあ、毎日のように抱き潰して御世話して何時も抱き上げているからな」
「ぅぎゃーっ! ななななに言ってんのアーク?!」
ルフトの指摘にサラッと恥ずかしい事言ったよこの人?!
羞恥心ってモノが無いのか!
---あ、無かったわ。
世話されてなんぼのお坊ちゃまだった。
侍従に裸体を洗って貰うのが当然の人だった!
「ぅわーん・・・!」
半ベソでヴァンに突進し、元のサイズに戻って貰うとその極上の毛皮に潜り込んだ。
「ノア?!」
「・・・・・・今のは貴方が悪いですよ。貴族と違って普通は閨事は秘するものです。特にノア様は恥ずかしがり屋なんでしょう?」
「---あ、ああそういう・・・スマン、ノア」
そうは言っても、ノアは暫くショックで不貞腐れてヴァンのもふもふに癒されていた。
服の諸々を選びながら横目でその様子を窺っていたウラノス達はほのほのと笑っていた。
「さっさと終わらせてノアを構ってやらないとな」
ウラノスの言葉にサクサクと用を済ませて、最速で作るように注文すると、部屋中の布地をマジックバッグに収納して仕立て屋は帰って行った。
その頃、漸く機嫌を直したノアにアークが抱き付いて離れなくなっていた。
ヴァンは仔狼サイズになっている。
「お疲れさま、ノアちゃん、向こうでお茶にしよう」
「俺、何にもしてないけど。色々とありがとう義母様達」
アンジェリクのひと声に賛成!と皆が移動してお茶会になった。
「衣装は最速でと頼んであるけど、はやくても3日後かな? その頃には謁見も許可が下りると思うから、良かったら明日は街を散策して来ると良いよ」
ウラノスの言葉にぱあっと瞳を輝かせるノアにデレモードのアークが蕩ける笑顔で言った。
「じゃあ、薬草屋や素材屋、ギルドにも行こう。後は食材に調味料・・・」
「---おいおい、それってデートスポットじゃ無いんじゃ・・・」
アークが挙げた店に対してアルジェントやシルヴァラが唖然とした。
どう見ても番い同士の散策で行くところじゃ無い。
・・・だが、ノアといえば・・・・・・。
「やった! 嬉しい!! あのねあのね、錬金術の素材扱ってるところとか知らない?! ねえ、義父様達?!」
「うわ、凄い食いつき・・・マジかあ」
「ノアはこういうヤツだから。一般的な宝飾品とか薔薇園とか興味ないぞ。素材かどうかが喜ぶ基準だ」
思わずアークがドヤ顔を決めて言った。
「・・・えー?! アークがくれるものは別にタダの石だって嬉しいよ?! 今まで爺さん以外には貰ったことないもの。まあ、爺さんもくれたのは皆、素材だったけど!」
ノアもなんてことないようにサラッと惚気た。
本人は気付いていなさそうだが。
何にしても、一番喜ぶのは番いからの贈り物で、次は薬師や錬金術関連のモノ・・・ということが分かった。
「じゃあ、その辺りの店に紹介状を書こう。そういう店って店主が割と偏屈で、一見さんお断りのところが多いからねえ」
そういってウラノスはペンと手紙を用意させた。
「そういえばエイダンの街の素材屋さんも一見さんお断りだったね」
「そうだな。元錬金術師だって言ってたな。ノアの錬金術見て驚いてたなあ」
「大したことしてないけどね?」
---いやいや何言ってんのこの子、錬金術師自体が超貴重な存在なのに?!
4人+使用人が一斉にノアを見たが、キョトンとした顔をするだけだった。
コレはわかってないな、と今度はアークを見つめる。
アークはしっかりと意味を読みとって、頷いた。
---コレは本当に全力で護らないとアカンヤツ!!
一同、気持ちを新たに誓うのだった。
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