迷い子の月下美人

エウラ

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190 いざ、迷宮初踏破!

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門に入って十数分。
踏破した証の宝箱が目の前にある。

---うん?
・・・迷宮のボスはどうなったんだって?


初めこそ皆で色んな所を攻撃してヘカトンケイルの力を削いでいたんだけど、アイツ、ちょっと再生能力があったもんで。

100本ある腕の幾つか切ってもにょきっと生えて、頭もモグモ(※モグラの魔物)叩きのように潰してももっこり生えて・・・。

八つ当たり気味のノアが戦鎚ウォーハンマーとバスタードソードで暫く、叩く&斬るを続けていたが。

「---飽きた」

ポツリと呟いて『フレア』の魔法で爆殺していた。

---うん、安定のオーバーキル。

もはや笑うしかねえわ。

そんな訳で、戦利品の初踏破のお宝は・・・。

「・・・・・・何コレ、キショ・・・」

ルルが引いてる。

「『百腕のマッサージ器』って表示出た」

ノアの鑑定に出た名称が何とも言えない・・・。
まさしく小さく細い腕がみっちり生えた板状の魔導具・・・?
引きながらもルルが一応聞いてきた。

「・・・効果は?」
「・・・・・・『どんな凝りでも解します。何時でも何処でも貴方に癒しを』・・・だって」
「---アーク、知ってたのか? てか、当然知ってたよなあ?!」

皆が胡乱な目を向ける先で腹を抱えて蹲る美丈夫。

「肩が震えてんぞ、アーク」
「声も堪える気無いよね?」
「---っひー!! ふっ・・・・・・ははっ、ダメ! ムリ・・・・・・!!!」
『・・・お前なぁ・・・』

一人まじまじと鑑定でじっくり見ていたノアはおもむろにマッサージ器を手に取ると笑い転げるアークの背中に押し当てた。

すると勝手にうごうごしだして、アークをマッサージし始めた。
---否、擽り始めた。

「---っ!!! ぅひゃっ?! やっ、やめ---?! 擽ってぇ---!」
「うーん、凝ってない人には効果が無いのか」
「・・・・・・ノアさん?」

引き攣った声でルルが問いかける。
が、聞いていないようだ。

「ヴァンは? 全身マッサージ、どう?」
『・・・・・・っいいいいや、結構だ! 我をモフるのはノアだけで良い!! そんな怪しげな魔導具なぞ御免被る!!』
「えー、じゃあ、ギ」
「断る! 凝ってない!」
「じゃあル」
「俺もいいいいらない!!」

皆、食い気味に断られた。
何故に?

「・・・・・・そう? じゃああとで誰か探して実験しよう」

---今確実に実験ってイイマシタヨネ?!

怖えよ、ノア!!

「・・・・・・っおい! ノア、ひひっ・・・い、いい加減・・・・・・止めろぉ---!!」
「・・・あっごめんなさい!」

えへへ、忘れてた---!

なんて言ってはにかむが、割と番いへの扱い、雑なんだな?!


その後一旦迷宮から出たノア達だが、ノアの『リベンジ』という名の素材収集に付き合わされて、結局、夕方まで何度も出ては潜ってを繰り返し、多くの冒険者達に恐れられた。

そもそも1日に何度も踏破する迷宮じゃないのに、けろっとして連チャンするなんて正気の沙汰じゃないとまで言われるほど。

そうとも知らず、ほくほく顔で冒険者ギルドに戻り、不要な素材をデデンと買い取りカウンターに出してギルド内を再びザワつかせるのだった。

そしてギルマス達が胃が弱い?と小耳に挟んだノアが特製胃薬を卸して評判となり、各地の胃の痛いギルマス達に愛用されるのはそう遠くない未来・・・。

知らぬは当の本人ばかりである。


さて、今日も今日とて宿に戻り、個室で夕御飯を食べると、珍しく疲れたらしいノアはストンと秒で眠りに落ちた。

『珍しいの』
「・・・よっぽど楽しかったんだろう。あんなにはしゃいでいるノアは初めて見た」
『翼も出せずにいたからな。思う存分翔んでいたしの』
「・・・おそらくすでに竜王国に話は伝わっているだろうな」
『---そうだな。・・・で、どうするのだ?』
「何処にでも馬鹿はいるからなあ・・・。もう数日間滞在してからウチに向かうさ。ウチでも対策は練られているだろうし。どのみち、ノアを泣かすなら、殺るだけさ」
『・・・そうだな。ふふん、楽しみだ』

そんな不穏な会話も全く気にならないほどぐっすり寝ていたノアは、おそらく楽しい夢でも見ているのだろう、ふっと口元を緩めて小さく、アークと呟いていた。


聞こえていたアークは蕩ける笑みでノアに口付けを落とすと、自身もノアの隣で目を瞑った。


良い夢を・・・・・・。






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