迷い子の月下美人

エウラ

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189 不思議な大樹のボス

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ノアの翼は大層目立った。
それはそれは注目を浴びた。

だって、黄金色だったのだから。

そこにきて、番いとして銀竜のアークが寄り添っているのだから。
そしてこの迷宮には多くの竜人の冒険者がいるのだから。

そんな中、何時もならぴるぴる震えるノアが楽しそうにしている。

「ノア、人見知りよりも翔ぶ楽しさの方が勝ったんだな」
「まあ、良かったんじゃない? ぴるぴるも可愛いけどさ、ノアはやっぱり笑ってる方が断然良いよ」
「だな」

ギギとルルは、二人から少し離れたところを翔びながらノアの様子に安堵した。
ノアが翼を出すことに躊躇いがあることを知っていたからだ。

魔人族俺達だって知っている、金竜が伝説と言われて久しい事を。
今現在、その姿を見た者はいないと言われるほど稀少な竜人。
ソレが例え混血だろうと、今、目の前に現れたらどうなるかなんて分かりきっている。

目立ち騒がれることを良しとしないノアが、そんなことお構いなしに思いっきり翼を広げて翔んでいる。
何があってもアークが護ってくれる。
アークだけは裏切らない。
そんなふうに番いアークに全幅の信頼を寄せているのだ。

竜人の番いとはこうも愛情の深い重いモノなのかと、ギギルル兄弟は引き攣りつつも羨ましく思ったのだった。


途中で休憩をしながら数時間後、大樹の頂上にやって来たノア達は、目の前に建つ大きな門に唖然とした。

「・・・・・・え、何コレ?」
「「・・・でっか!」」
『うむ。大きいのう』
「だろう? 5mはあるかな。コレを潜るとボス部屋になる」
「はええ・・・。こんな迷宮だから最後はどうなっているのかと思ってたけど、入口の門みたい」

平らになっている天辺にはデカい門が鎮座しているのみ。

「ボスって?」
「中に入ってからのお楽しみ」

ノアが何気に聞いたが、アークはニヤリと笑うだけ。

「それもそうか」
「久々にわくわくするぜ」
「楽しみ―!」
『我の出番はあるかな?』
「あるかなー?」
「無いんじゃないか?」

何が出たってノアが瞬殺だよな・・・。

ノア以外は皆思っていた。

「ま、憂さ晴らしだからノアの好きにすればイイさ」
「「賛成!!」」
『そうだった。ノア、遠慮なくってしまえ!』
「・・・えへへ、ありがとう?」

何故か照れくさそうにはにかんでいるが、言ってることは殺伐としているだろう・・・。

偶然居合わせた冒険者PTが何とも言えない空気で見守っている中、門の中に足を踏み入れていったアーク達だった。


門の中には、今入った門の3倍はあるだろう巨人がいた。

「---ヘカトンケイル? 初めて見る」
「・・・百腕の巨人・・・」
「でっか! でもってキショい!」
『ううむ・・・どうやって動いてるんだ?』
「---だろう? 不思議だよな?」

---魔物の不思議か迷宮の不思議か。

巨人の頭の部分には小振りな頭がおそらく50あり、それに伴い、これまた体格よりは小振りな腕が100本・・・数えていないが。

触手のようにうねうねしている腕はどうやって動かしてるのかとか、あのたくさんの頭は独立して思考してるのかとか思うところはたくさんあるが・・・・・・。

「まあ、迷宮だしね」
「「「だな」」」
『うむ』
「俺達はボスを倒しに来たんだから気にしない気にしない!」

グオオオオ---!!

各々得意の得物を装備すると、ヘカトンケイルの雄叫びを合図に突撃していった。







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