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185 迷宮探索という名の憂さ晴らし 1
しおりを挟む冒険者ギルドを出て、迷宮に向かうノア達。
かなりお怒りだったノアも少し落ち着きを取り戻した。
「なあ、ここの迷宮ってどんな感じなんだ?」
ギギがアークに尋ねる。
この中で唯一の経験者だろう。
ノアも興味津々だった。
「あー、ここの迷宮って難易度はそんなに高くないんだけどさ、ちょっと厄介・・・かな?」
「え? どんな風に?」
「ここのはさ、竜王国のある場所だからなのか、空に向かってるんだよ」
「「「空?」」」
三人は声を揃えて疑問符を浮かべた。
「空にって事は、ひたすら階段とかで上に登るって事?」
「それはそれで凄え疲れそうだ」
「ね、降りる方が楽だよね」
三人ともそんなイメージだったが。
「いいや? 階段なんか無いぜ。翔ぶんだよ」
アークがしてやったりという顔で言った。
・・・翔ぶ?
「---え、まさか、空を翔んで行くの?」
「ああ。道なんて無い。中央にえらくデカい大樹がデーンと生えてて、途中は適当に枝に止まって休む感じだ。何階層なんてモノは無い」
「はええ・・・。じゃあ何日も潜って、なんて事は出来ないの?」
「そうだな、翔べれば数時間で天辺に着くからなあ。まあ、セーフティエリアみたいなところは数カ所あるから、何日か潜ることは可能だ。・・・・・・なんか潜るって言い方もヘンだが」
苦笑しながら教えてくれたアークに、確かに潜るって言わないのかも、なんて思いつつも導き出された答えにノアの目がキラキラと輝いた。
「---つまり、竜人は翼で翔んでいけると言うことだよね?!」
「そういうことだ」
アークが頷く。
「ギギ達は魔法で翔べるし!」
「お、おう」
「ああ、うん」
「ヴァンは仔狼サイズでも良いし、枝をぴょんぴょん跳んで行けるし!」
『まあな、我なら楽勝だな!』
ギギ達はちょっと引き気味だが、ヴァンはまんざらでもない様子で。
「楽しそう---!!」
珍しくノアがニコッと笑って叫んだ。
その様子を見て、誰が止められようか。
早く早くとアークを引っ張って急かすノアを見て、さっきの夜叉のような雰囲気が消えてくれて良かったと一安心するギギ達だった。
それで肝心の迷宮はというと・・・。
「---え? これ?」
「そうだ」
「・・・でも、コレって・・・」
扉しか無いんだけど・・・。
そう。
ノア達が戸惑うのも無理は無い。
ここの迷宮は、ゲートとなる扉が石組みで組まれているだけで、その先には何もない。
試しに裏に回ってみても、扉があるだけ。
「こんにちは。久しぶりですね、アルカンシエル様。お連れ様は初めまして」
「あ、初めまして。アークの番いでノアと言います」
「「ギギとルルだ」」
『我はヴァンだ』
ノアはちょっとぴるぴるしながらもしっかり挨拶をして、ギギ達もそれに続いた。
「こちらの迷宮は扉を潜ると迷宮に繋がります。彼の大賢者様が開発した魔導具で、扉で空間を固定してあるとか何とか、迷宮の不思議だとか・・・詳しいことはサッパリですが」
そういってギルド職員は続けた。
「実際の迷宮は神聖な霊山の途中にあります。ここから行くには遠い場所でしたので、こういう仕様になりました。出入り口は固定されているのでここからしか入れませんけどね」
初見の人には何時も説明しているのだろう。
流れるような説明だ。
「---へえ、凄いなー転移とは仕組みが違うんだね。迷宮限定かー、どうやってるんだろう。作り方知りたいなー。・・・ん? 大賢者様ってラグ爺さんのこと?」
何気にノアが鑑定しているが、どうやら迷宮の謎仕様が加わっているようでよく分からないようだ。
「いやいや、作ってどうすんだよ」
ギギが呆れたようにツッコむ。
「いや、だって転移の魔導具って普通、生き物はスプラッタだからどうにかなるかなって? ああ、そう言えば精霊王は転移したりさせたりしてたよね?! 精霊王に頼めば生き物も転移出来るんじゃ」
「いやいやいや、精霊王はそもそも魔力の塊みたいなモンだし、人じゃ無いから大丈夫なんじゃねえの?!」
「おーい、ノアさーん?! 聞いてる?!」
・・・聞いてないようだ。
なんかブツブツ言ってる。
---忘れてたし使ってないけど、そもそも俺達の腕輪に精霊王が古の森に直接転移出来る魔法付与してたよな?
今度頼んでみよう。
教えてくれるかな?
鑑定じゃあ分からないんだよな。
もしかしたら精霊王限定かもしれないし、俺には無理かな?
・・・って事を言ってるのが聞こえた。
「・・・・・・何か聞き捨てならない言葉とか言葉とか、たくさんありましたが気のせいですよね? ね?! とにかく、潜れば大樹の目の前に移送されますので、お気をつけてどうぞ。ああ、こちらは階層が無いので、途中に幾つかある転移の水晶に触れればここに戻りますので!」
それを聞いたノアがおもむろに呟いた。
「・・・そう言えば、気にしてなかったけど迷宮の転移の魔法陣やら水晶は、生き物オッケーだった。---ええ? 精霊王まさかの迷宮と同じ謎仕様?!」
「「「ぶはっ!!?」」」
『・・・アホ』
それを聞いた三人と一頭が噴き出し、呆れた。
「・・・・・・えーと・・・??」
ギルド職員は戸惑っていた。
---コレって如何すれば?
腹を抱えて笑う三人と深い溜息の一頭、キョトンとした一人を遠い目で見つめているのだった・・・。
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