187 / 533
183 久しぶりに冒険者っぽいことをしようとした結果
しおりを挟む数日はのんびりしようということで、久しぶりに冒険者ギルドにやって来た。
・・・・・・のんびりするんじゃ無いのって?
いやいや、ノーザンクロスではコレといった依頼は受けて無かったし、ずっと雪の中の旅路でたまに狩りするくらいだったから、なんかこう、ぱーっと体を動かしたいなって・・・。
うん?
夜の運動?!
あれはそういう運動じゃ無いからな!!
---なんて言い訳じみた事を顔を赤くしてぽそぽそとギギ達に言ってるノアが超絶可愛い。
何はともあれ、ご無沙汰な冒険者ギルドに皆してやって来たんだが・・・。
「案の定、視線がウザい」
「・・・・・・」
「気にしなさんな」
「ノア、大丈夫? なんかぴるぴる悪化してない?」
「ほら、ヴァンをモフってろ」
『・・・致し方あるまい』
アークが一歩踏み込んだ途端、一斉に向けられた視線。
その場にいた冒険者と職員達が何気に出入り口を見て、そのまま固まったのだ。
ノアは人見知りを発動した。
それはそれは驚くほどの速さでアークの背中にしがみついた。
なのでそのまま、アークのフードに潜っていたヴァンがノアの標的になった。
無言でヴァンをそろっと抱えると、無表情で高速もふもふしている。
なんなら顔も埋めている。
ヴァンは遠い目をして諦めた。
「ウザい」
アークはひと言言って、軽く威圧を放った。
おかげで一瞬にして視線が外れた。
それでもノアはまだぴるぴるしながらヴァンをモフっているので、アークは片手でノアをひょいと持ち上げ、縦抱っこで受付まで移動する。
アークの肩とノアの顔に挟まれて死んだ目をしてモフられるヴァンと苦笑しているギギルル兄弟。
周りの空気が何とも言えない感じになったが、それを気にすることもなく受付に話しかける。
「久しぶりだな。ギルマスはいるか?」
「っご無沙汰しております、アルカンシエル様。ギルドマスターは生憎とただいまは席を外しております。御用向きは何でございますか?」
「ああいや、久しぶりに帰ってきたんで、顔出しついでに何か依頼でも受けようと思って来ただけだ。ああ、彼はノア。俺の番いだから手ぇ出すなよ。あと、従魔のフェンリルのヴァンと・・・」
「ギギとルルだ。魔人族の兄弟だ。よろしくな」
「よろしく」
話をふられたギギ達が自己紹介をした。
ノアはといえば、一心不乱にモフっているが、落ち着いたようで、アークに下ろして貰っていた。
「・・・ノアです。よろしくお願いします。あの・・・買い取りお願い、します。ポーションとか」
「はい、ありがとうございます。喜んで買い取らせて頂きます」
「ん」
そういってヴァンのお腹に鼻を埋めた。
それを目聡くアークが気付いて、ばっと引き剥がす。
「ノアはこっち! 俺に引っ付け!」
『・・・やれやれ・・・威嚇しなくても良いだろう』
「「ははは」」
周りで唖然とした空気が漂っていたが、それを無視してクエストボードに移動する。
もちろんSランクの依頼をチェック。
「今のところ緊急なモノは無さそうだな。迷宮に潜るか?」
「---迷宮!」
ココにもあるんだ?!
急にノアが復活して、皆、大笑い。
「本当に好きだよな、迷宮」
「う、だって色んな素材が採れるし、周りを気にせず倒しまくれるし・・・」
なんてごにょごにょ言ってる姿が可愛いと、アーク達のみならずギルド職員もほっこりした。
「先にポーション売るか」
アークについていって、買い取りカウンターに品物を並べる。
ひとまずポーション類を出して、ギルドタグのかかったネックレスを引っ張り出す。
「あの、買い取りお願いします」
「---! はい、喜んで!」
薬師マイスターのタグを見て大喜びで叫ぶ職員に怪訝そうな冒険者達。
アークは知られているがノアは全くの初見だからか、ちらほらとイヤな視線が飛んでくる。
---ナニアレ、いくら番いだからって甘えすぎじゃん。
---何様だよ。
---どうせ顔だけだろ。
そんな声がこれ見よがしに聞こえてくる。
当然、アークはイラッとしてピンポイントに威圧を飛ばす。
「・・・アイツら、アホだな」
「死にたいんでしょ?」
『そうらしいな』
ヴァンが通常サイズに戻って、威圧で気絶している冒険者達を踏み潰している。
「ヴァン、そんなゴミ踏んだらバッチィよ?」
「・・・・・・ノアの言い様が・・・」
「直球だな!」
「・・・ゴミ扱い・・・ふっ」
アークが思わず噴き出す。
「俺だって言われっぱなしじゃないよ。黙って流してたけど、アークの不利になるようならトコトンやるよ。大体、見かけで判断するなって言うの。番いに甘えて何が悪い。大体、俺が何様だって? ほら良くタグを見ろよ、Sランク様だよ。薬師マイスター様だよ。文句あるか? ああ?!」
「・・・ああ、あんなに饒舌に・・・ノア、かなりキレてたんだ・・・」
「アークみたい。ガラが悪い」
「でも可愛い!」
『もっと言ってやれ!』
とっくに意識の無い冒険者達に容赦ない口撃&攻撃(主にフェンリルの)で追い撃ちをかけるノアが、先ほどまでぴるぴるしていた人とは思えないくらい冷酷で、冒険者達はアークの時以上に恐怖した。
実はアルカンシエル様よりもヤヴァイんでは・・・という気持ちで一同一致したのだった。
253
お気に入りに追加
7,359
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる