迷い子の月下美人

エウラ

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183 久しぶりに冒険者っぽいことをしようとした結果

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数日はのんびりしようということで、久しぶりに冒険者ギルドにやって来た。

・・・・・・のんびりするんじゃ無いのって?
いやいや、ノーザンクロスではコレといった依頼は受けて無かったし、ずっと雪の中の旅路でたまに狩りするくらいだったから、なんかこう、ぱーっと体を動かしたいなって・・・。

うん?

夜の運動?!
あれはそういう運動じゃ無いからな!!

---なんて言い訳じみた事を顔を赤くしてぽそぽそとギギ達に言ってるノアが超絶可愛い。

何はともあれ、ご無沙汰な冒険者ギルドに皆してやって来たんだが・・・。

「案の定、視線がウザい」
「・・・・・・」
「気にしなさんな」
「ノア、大丈夫? なんかぴるぴる悪化してない?」
「ほら、ヴァンをモフってろ」
『・・・致し方あるまい』

アークが一歩踏み込んだ途端、一斉に向けられた視線。

その場にいた冒険者と職員達が何気に出入り口を見て、そのまま固まったのだ。

ノアは人見知りを発動した。
それはそれは驚くほどの速さでアークの背中にしがみついた。

なのでそのまま、アークのフードに潜っていたヴァンがノアの標的になった。
無言でヴァンをそろっと抱えると、無表情で高速もふもふしている。
なんなら顔も埋めている。

ヴァンは遠い目をして諦めた。

「ウザい」

アークはひと言言って、軽く威圧を放った。
おかげで一瞬にして視線が外れた。
それでもノアはまだぴるぴるしながらヴァンをモフっているので、アークは片手でノアをひょいと持ち上げ、縦抱っこで受付まで移動する。

アークの肩とノアの顔に挟まれて死んだ目をしてモフられるヴァンと苦笑しているギギルル兄弟。

周りの空気が何とも言えない感じになったが、それを気にすることもなく受付に話しかける。

「久しぶりだな。ギルマスはいるか?」
「っご無沙汰しております、アルカンシエル様。ギルドマスターは生憎とただいまは席を外しております。御用向きは何でございますか?」
「ああいや、久しぶりに帰ってきたんで、顔出しついでに何か依頼でも受けようと思って来ただけだ。ああ、彼はノア。俺の番いだから手ぇ出すなよ。あと、従魔のフェンリルのヴァンと・・・」
「ギギとルルだ。魔人族の兄弟だ。よろしくな」
「よろしく」

話をふられたギギ達が自己紹介をした。
ノアはといえば、一心不乱にモフっているが、落ち着いたようで、アークに下ろして貰っていた。

「・・・ノアです。よろしくお願いします。あの・・・買い取りお願い、します。ポーションとか」
「はい、ありがとうございます。喜んで買い取らせて頂きます」
「ん」

そういってヴァンのお腹に鼻を埋めた。
それを目聡くアークが気付いて、ばっと引き剥がす。

「ノアはこっち! 俺に引っ付け!」
『・・・やれやれ・・・威嚇しなくても良いだろう』
「「ははは」」

周りで唖然とした空気が漂っていたが、それを無視してクエストボードに移動する。
もちろんSランクの依頼をチェック。

「今のところ緊急なモノは無さそうだな。迷宮に潜るか?」
「---迷宮!」

ココにもあるんだ?!

急にノアが復活して、皆、大笑い。

「本当に好きだよな、迷宮」
「う、だって色んな素材が採れるし、周りを気にせず倒しまくれるし・・・」

なんてごにょごにょ言ってる姿が可愛いと、アーク達のみならずギルド職員もほっこりした。

「先にポーション売るか」

アークについていって、買い取りカウンターに品物を並べる。
ひとまずポーション類を出して、ギルドタグのかかったネックレスを引っ張り出す。

「あの、買い取りお願いします」
「---! はい、喜んで!」

薬師マイスターのタグを見て大喜びで叫ぶ職員に怪訝そうな冒険者達。

アークは知られているがノアは全くの初見だからか、ちらほらとイヤな視線が飛んでくる。

---ナニアレ、いくら番いだからって甘えすぎじゃん。
---何様だよ。
---どうせ顔だけだろ。

そんな声がこれ見よがしに聞こえてくる。
当然、アークはイラッとしてピンポイントに威圧を飛ばす。

「・・・アイツら、アホだな」
「死にたいんでしょ?」
『そうらしいな』

ヴァンが通常サイズに戻って、威圧で気絶している冒険者達を踏み潰している。

「ヴァン、そんなゴミ踏んだらバッチィよ?」
「・・・・・・ノアの言い様が・・・」
「直球だな!」
「・・・ゴミ扱い・・・ふっ」

アークが思わず噴き出す。

「俺だって言われっぱなしじゃないよ。黙って流してたけど、アークの不利になるようならトコトンやるよ。大体、見かけで判断するなって言うの。番いに甘えて何が悪い。大体、俺が何様だって? ほら良くタグを見ろよ、Sランク様だよ。薬師マイスター様だよ。文句あるか? ああ?!」
「・・・ああ、あんなに饒舌に・・・ノア、かなりキレてたんだ・・・」
「アークみたい。ガラが悪い」
「でも可愛い!」
『もっと言ってやれ!』

とっくに意識の無い冒険者達に容赦ない口撃&攻撃(主にフェンリルの)で追い撃ちをかけるノアが、先ほどまでぴるぴるしていた人とは思えないくらい冷酷で、冒険者達はアークの時以上に恐怖した。

実はアルカンシエル様よりもヤヴァイんでは・・・という気持ちで一同一致したのだった。






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