迷い子の月下美人

エウラ

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178 心臓に悪い方々 1(side神聖な霊山の門衛スリク)

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久しぶりの青空を清々しい気持ちで見上げていた昼下がり。

雪に覆われて一面銀世界の彼方から飛行してくる4つの、いや5つの気配を察知して、門衛の詰め所は騒然となった。

「・・・抑えられてはいますが、かなり強い魔力の気配です。ですが幸い、魔獣や魔物の類いでは無さそうとの事です」
「・・・そうか、単に強いだけの人かな? そうすると竜人族か魔人族辺りかな・・・」

詰め所内で報告を受けた門衛隊長のスリクが呟く。

「危険は無さそうだが、気は抜くな」
「「「はい!!」」」

通常通りで大丈夫だろうと指示を出す。
雪深い今の時期にこのセイクリッド・リョーゼンを訪れる者は限られている。

文字通り翔んでこないと辿り着けないくらい雪に覆われているからだ。
魔物の類いでは無いのなら、高魔力で飛行する種族など限られる。

心配は要らないだろう。

・・・・・・確かに心配は要らなかったが・・・。

おいおい、何処の御貴族様だ?!
なんで冒険者用の門に向かってくるんだよ!


概ね予想通り、少し手前で降り立ったのは竜人族の番い夫夫と思しき二人と、よく似た風体の魔人族二人・・・兄弟か?

あと、竜人族の美丈夫のフードに潜っていた仔狼・・・いやいや、まさかフェンリルか?!

「・・・なんなんだ、この組み合わせ・・・・・・あれか、お忍び貴族と護衛か? 間違えてるのか? お忍びだろうと普通の門へ行けって。こっちはギルドタグが無いと通れない門なんだよ」

詰め所内から様子を窺いながら独りごちたが無情にも歩みは止まらず、冒険者専用の門衛の元へ着いた4人は、遠回しに『貴方方の通る門はこっちじゃ無いですよ』と言う門衛を一瞥して、表情も変えずにギルドタグを出した。

えええ---、マジで冒険者なの?!

周りの門衛も驚きのあまり固まっていたが、タグを見た門衛が更に驚きの声をあげたのをきっかけに慌ただしく動き出した。

「---おい! 誰か竜王国のヴァルハラ大公家に連絡を!! 大至急!!」

俺は慌てて叫んだ。
竜王国のヴァルハラ大公家から、三男のアルカンシエル様が来たときには連絡をするようにと、かなり前から通達されていたのだ。

の家はアルカンシエル様への溺愛が重すぎ・・・コホン、愛情が深いので、こういったことは他でも度々ある。
あるが、実際にご本人が訪れた事は今まで無かったので容姿は存じ上げなかったが、さすがに今回は驚いた。

アルカンシエル様の番い様と思われる方も貴族なのだろうか?
物静かでほっそりとした美人だ。

控室に移動するときにさり気なく指を絡めて恋人繋ぎをしていた。

・・・・・・羨ましい。


とりあえず控室にお通ししてお茶を持っていくと、テーブルに何やらお茶菓子が・・・。
え?
番い様お手製ですかそうですか羨ましくなんか・・・。

何やら色々と負けた気がするが気にしちゃいかん。
そもそも何と張り合っているんだ、俺は。

混乱の極みだった。

いつか俺にもその内可愛い嫁が・・・・・・!!
なんてトンチンカンな思考に陥っていた。

それを正気に戻したのは、この部下の言葉だった。

「スリク隊長! 先ほどヴァルハラ大公家に通信魔導具で連絡をしておきました・・・んですけど・・・」
「・・・何だ?」

門衛の一人が連絡をしてきたが、目を泳がせて言い淀んでいる・・・何かあったか?
門衛は意を決したように目線を合わせて言った。

「あの、リュカリオン殿下がいらっしゃるかもしれません・・・」
「---は?」

リュカリオン殿下?
竜王国第二王子殿下?
何故に?!

「先ほど連絡をしたときにちょうどヴァルハラ大公家にいらっしゃったようです・・・止めるのも聞かずに飛び出したようで、大騒ぎの声が・・・」
「・・・・・・まてまてまて、さっきだよな? でも竜人族の翔ぶ速さって尋常じゃ無く速いんだよな?!」

---ヤベえじゃん!!

俺達門衛全員、真っ青になった。



どうすんだよ---!!





※なんかお気に入り6000人になったっぽい?!
ありがとうございます!
思わず更新しちゃいました!








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