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177 神聖な霊山で暫し心の洗濯 3
しおりを挟むオススメされた宿はやはり貴族向けの高級宿だったが、アークとノアは慣れたモノで、躊躇無く中に入った。
「いらっしゃいませ。御予約のお客様でございますか?」
「いや、無い。門衛のスリク殿に薦められて来たのだが」
受付の従業員にアークがそう言って紹介状を渡した。
「拝見いたします」
そう断ってその場で検めた受付の従業員は一瞬目を見開くと、そっと紹介状を戻して努めて冷静な声でアーク達に告げた。
「失礼致しました。ヴァルハラ大公家御子息御夫夫様には番い様専用室を、お連れ様お二人様にはツインの特別室を御用意出来ますが」
「ああ、それで頼む。料金は私が全て支払う」
「「え、アーク、それは・・・」」
「これぐらい、なんてこと無いから。良いね?」
アルカイックスマイルで貴族の顔になったアークに何も言えない。
ギギ達は無言で頷いた。
「それではご案内致します。こちらへどうぞ」
別の従業員にそう案内されてついて行った先は広くて部屋が幾つもあった。
おそらく従者や護衛も泊まれるように使用人部屋になっているんだろう。
生憎とアーク達は二人と一頭だけだが。
ギギ達の部屋は少し離れていたが、同じように部屋が幾つかあるようだ。
入った瞬間、面白いように固まっていて、アークは密かに笑った。
「御食事は如何致しましょう? お部屋でとることも出来ますが」
「そうだな、個室を使えるか? 使えるなら連れの二人も一緒に使いたい。あと従魔のフェンリルの分も頼む。普通に食べるのでな」
「畏まりました。御時間になりましたらお声がけさせて頂きます。何か御座いましたらベルをお鳴らし下さい。当宿の従業員がお伺い致します」
「ありがとう。よろしく頼む」
「では失礼致します」
そういって深く礼をして去って行った。
それを見てギギ達が近付いてくる。
「---はぁ、びっくりした。ナニコレ、ノーザンクロスの時より凄えんだけど・・・」
「びっくりだよ。ねえ、本当に宿代、良いの? 俺達は別に支払い大丈夫だけど・・・」
ギギ達が心配そうに聞いてきた。
別に払えない訳じゃ無い。
Aランクだし長いこと冒険者やってるから寧ろ金は十分稼いでるし。
だから奢って貰うのもなあ・・・って。
ソレに苦笑してアークが言う。
「二人とも俺等に付き合わせたようなモンだからな。そうでなきゃもっと普通の宿に泊まってたろう? 迷惑料と思ってくれていい」
「・・・まあ、そういうことなら、遠慮無く」
「うん、ありがとう! たまには高級宿も良いね。御飯楽しみー」
そういって一旦部屋に入っていった。
それを見てアーク達も中に入った。
「・・・ノーザンクロスの宿も広かったけど、ここはもっと広いねえ」
「ガッツリ貴族の番い用だからな。ベッドも広いが、付き添う従者や護衛も泊まれるように部屋が幾つもある」
「あっ、お風呂も大きい! アーク、後で入ろうね」
「一緒にって意味だよな?」
「・・・! もももちろん・・・!」
ノアは顔を赤くしてどもりながら応えた。
最近はテントの魔改造で寝室の続きに浴室を設置したので、何時も一緒に入るようになった。
おかげで事後どころか事前にも色々と大っぴらに言えないような事をされていたりする。
---アークはしてやったりと何時も張り切っているが、ノアは一般的な常識を知らないのでコレが普通なのかと受け入れていた。
恥ずかしいだけで、アークを拒むことは無い。
誰かに『いや違うだろう!』とツッコまれるまで気付かないだろう。
まあ、アークはそんなヘマはしないし、ノアは恥ずかしいので絶対に公言しないからおそらく永遠にツッコまれる事は無いだろうが。
誰だって番い同士の閨事情に首をツッコむことはしないのである(死にたくは無いから)。
「じゃあ今晩、食事をしたら、な?」
「・・・・・・っうん・・・」
---お前を食うから。
耳元で囁くアークの壮絶な色気に腰が砕けそうなノアだった。
『お前ら、我を忘れておらんか・・・?』
すっかり蚊帳の外のヴァンが独りごちたが、その言葉は甘い空気に溶けて消えていった。
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