180 / 534
176 神聖な霊山で暫し心の洗濯 2
しおりを挟む皆が着席して一旦落ち着いたところで、ルドヴィカが切り出した。
「何故殿下が来たのか、ですが、公務をサボって大公家に遊びに来ていたからです。そこにたまたまアークがここに着いたと連絡が入って、止める間もなくここに来ちゃったというわけで。そこで俺に連絡が来たので超特急で翔んできました。あ、ちなみに俺は魔法騎士団長のルドヴィカ・アルバトロスといいます。アークの従兄弟で乳兄弟ね。そこのお二人、初めましてだよね。よろしく!」
ルドヴィカが困った子供を見るように笑って言ったあと、ギギ達に明るく自己紹介をした。
リュカリオン殿下は眉を寄せてバツが悪そうにそっぽを向いた。
それを見てノアはあれ?と思った。
そういえば見た目に反して殿下の言動が少し幼い感じが・・・。
もしかして、俺より年下・・・?
・・・・・・いやいや、そもそも俺は221歳でアークより実質年上だった・・・凹む。
「・・・あの、失礼ですがリュカリオン殿下はお幾つで・・・?」
「・・・・・・20だ」
リュカリオンの様子に気付いたのか、おずおずと聞いたルルにムスッとしながら応えるリュカリオン。
20歳かぁ。
俺より一つ下だが顔立ちや体格は俺よりガッチリしてて男前だ。
アークに似て褐色の肌、腰くらいの銀髪に金色の瞳だからおそらく銀竜なんだろう。
それにしても、と考える。
王族だし教育もしっかりされているだろうし、20歳で反抗期っていうのも無くは無いのだろうが、何が嫌だったんだろうか。
ノアはすでに独りで生活していたから、その辺りの感情がよく分からない。
もちろん反抗期らしい事も無かった気がする。
「・・・公務はサボっちゃ駄目だろう。常日頃、『兄上を支えるんだ』と言ってたのは嘘だったのか?」
「っ違う! 嘘じゃない! ただ、公務がちょっと、イヤだったんだ・・・。高位貴族の年頃の息子達とお茶会で・・・ギラギラとした目で圧をかけてくるから・・・・・・」
「---ああ、うん・・・。そっか、ソレはイヤだな。竜人は番い至上主義だけど、王族は政略とか無くもないもんな・・・。どうでもいい奴を相手にして愛想笑い・・・・・・辛いよな」
リュカリオンを諭していたかと思えば、どんどんとどんよりした空気を背負い出すアークに、お前も通ってきた道なんだなと、皆が思った。
王族(高位貴族)怖え・・・・・・。
あと、お茶会って公務なんだ?!
驚いていたら、アークがコソッと、月イチで決められている公務扱いの交流会の事なんだって。
腹の探り合いとか狙った獲物を狩る場所とか、ノアはよく分からなかったが、ギギ達は納得していた。
「---ああ、まあ何だ。そんなヤツら気にするなってこと。・・・ともかく、リュカリオン殿下は城に戻って下さい。護衛振り切って来たでしょ? 殿下の逃亡劇の割を食うのは彼等なんですよ。首が飛ぶとまでは言いませんが、責任問題で減俸とか普通にあるんです。そこら辺良く考えて行動して下さいね」
ルドヴィカにそう言われてハッとしたリュカリオン殿下。
「---ああ。すまなかった。アークも悪かったな。・・・・・・ノア殿、驚かせてすまなかった。アークとゆっくり過ごしてくれ」
「・・・・・・はい、ありがとうございます」
ノアがはにかみながら返事をした。
心なしかリュカリオンの褐色の頬が桜色に染まった。
アークはイラッとしたが顔には出さずにルドヴィカに声をかける。
「ルドヴィカ、一緒について行ってくれるな?」
「元よりそのつもりで来たのでちゃんと送り届けるよ。・・・あ、大公家ではレーゲン様やアヴィールが閣下達を止めてたので、これ以上の突撃は無いと思うぜ」
思い出したようにニカッと笑った。
「・・・・・・助かる。父達には数日羽を伸ばしてから帰るつもりだと伝えておいてくれ」
「了解。---んじゃ、お邪魔しました! 殿下、行きますよ!」
「分かっている。邪魔したな」
「「「「お気を付けて」」」」
『またな』
来たときよりは静かに、それでもバタバタとしながら去って行く二人を見送って、皆はホッと肩の力を抜いた。
「あー、心臓に悪いわ」
「まさかの第二王子殿下とか・・・まあ、そういえばアークも大公家の三男だしなあ・・・忘れてたわ」
「悪かったな」
いろんな意味で。
アークがニヤリと笑う。
「---色々と大変なんだね、王族って」
ノアが他人事のように言うが、お前もすでに仲間入りしてるからな?
アークが苦笑した。
「これでも他の国からしたら緩い方だと思うけどな。振り切ったとはいえ護衛無しで出歩けるのも竜人だからってのもあるし、護衛も体裁上のところが大きい。皆、普通に強いからな」
「あー、確かに。そういうのも堅苦しくて面倒くさいね。俺、アークの番いで良かったよ」
「だろう?! 割と自由に過ごせるし! 家族の過保護が無ければもっと・・・いや、ノアにはあれくらいあった方が・・・?」
「・・・・・・アーク?」
後半はブツブツ小声でよく分からない。
「いや、とりあえず数日はのんびり出来そうだから、宿を取ってゆっくりしようぜ」
「「賛成!!」」
「門衛さんに聞けばオススメ教えてくれるよね」
『御飯が美味いところが良いな』
「そうだね!!」
和やかに笑いながら門衛に宿を聞いて、アーク達はようやく街中へと繰り出したのだった。
274
お気に入りに追加
7,357
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶のみ失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる