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174 神聖な霊山(セイクリッド・リョーゼン)
しおりを挟むあの後、大した質問もなく説明会は終わった。
ラクスは冬の間は冬眠(と言って良いのか?)しているらしく、今回はヴァンとリンドヴルムの魔力の気配を感じて目を覚ましたらしい。
《毎年寝てるけど、別に睡眠は必要じゃ無いんだ。この季節にここに来る者がいないから暇でさ、すること無いから寝てるだけ》
ノアが不思議に思ってラクスに聞いた。
「・・・精霊王のところとか、他の場所に行けないの?」
それにちょっと苦笑してラクスが教えてくれる。
《うーんとね、居着いた場所で上位の精霊になっちゃうとそこで存在が固定されてしまうんだ。○○の精霊って感じに。そうすると移動は限定されるかな。私の場合は近くに他の湖なんて無いからこの湖限定で、周りをちょっと移動するくらいかな。遠くには行けない》
それを聞いたノアはぽそぽそと言った。
「・・・俺、今はこうしてあちこち出歩いてるけど、アークと出逢うまで街と迷宮くらいしか行ったこと無くて・・・。でも外の世界を知って、今までの生活って寂しいものだったなって。・・・だからラクスにもたくさん外を見て欲しいなって思ったんだ。でも難しいんだね」
《・・・・・・優しい子。大丈夫って言っても気にするよね。じゃあさ、たまにここに来て私に話を聞かせて欲しいな。雪が解けて暖かくなったら、またおいで。楽しみに待ってる》
そういってラクスは優しく頭を撫でてくれた。
「---きっと、また来る」
《うんうん。またね》
そうして湖に一泊した後、ラクスにお別れをして先へ進んだ。
その後も途中、何泊か野営をしながら順調に進んで、寒さも本格的になってきた頃・・・。
ついに竜王国一歩手前の神聖な霊山に到着した。
「---はええ・・・」
「「・・・側で見るとデカいなあ・・・」」
『久しいな』
「・・・うん、俺も久しぶり」
アークはそもそも、翔んで直接竜王国に入るから麓の街にほとんど入ったことが無い。
霊山が大きいせいか、街もかなり大きい。
そして山の天辺は雲に隠れていて見えない。
街の入口には他の街と同じように通常の門と冒険者用の門があるので、何時ものように冒険者用の門に向かう。
すると門衛が困惑気味に言った。
「・・・こちらは冒険者用の門ですが、入り口をお間違えでは・・・?」
「・・・いや、合ってる。ギルドタグだ。確認してくれ」
アークは、久しぶりだな、この対応・・・と思いながらタグを見せる。
ノアはなんの疑問も持たずにアークに倣う。
ギギとルルはもう片方の門衛にタグを見せながらこそこそと話す。
「コイツら絶対、初見で貴族と間違われてるわ。・・・いや貴族だったわ!」
「ノアは何となく貴族っぽいし、今はアークの番いで事実上の貴族になってるし・・・あれ、俺達もしかしてお忍び貴族とその護衛的な?」
「「・・・・・・有り得る・・・」」
「---は、え・・・? Sランク?! アルカンシエル様?! ヴァルハラ大公家の?! え? お連れ様もS?! は?! 番い様?!」
アーク達のタグを確認した門衛は驚きのあまり挙動不審になって、他の門衛が何事かとわらわらと集まってきた。
「「・・・俺達のもタグを確認してくれ。そして街へ入れてくれ」」
『我も! 従魔ぞ! 早う中へ入れろ!』
アークのフードに潜っていた仔狼サイズのヴァンが急かすようにガウッと一声。
ギギ達のタグを確認していた門衛も何時になく焦った。
「は、Aランク冒険者お二人にフェンリル?! へっ?!」
「---おい! 誰か竜王国のヴァルハラ大公家へ連絡を!! 大至急!!」
「---あ、待て。連絡は・・・あー、遅かった」
アークが止めようとしたが間に合わなかったようだ。
周りの門衛が報告に走って行った。
通信魔導具を使うのだろう。
「アルカンシエル様、こちらの控え室に。お連れ様もどうぞ!!」
「・・・アーク? どうする?」
「・・・行くしか無いだろう。良いか?」
「別に良いけど・・・」
「「俺達も構わないが・・・」」
『面倒よな』
はーっと大きな溜息を吐いて、門衛に促されて後を着いていった。
「・・・直接竜王国に行った方が良かったかな? 行ったら行ったで煩いんだよなあ・・・」
アークが渋面でぽそっと呟いたが、ノアは周りをキョロキョロとしていて気付かなかった。
ちなみに手はしっかりと恋人繋ぎである。
「アークんち、今までの事を鑑みるに、過保護過干渉な溺愛家族だよね」
「・・・ウザったいくらいな・・・」
「・・・・・・コレも、門でチェックしたら連絡しろって通達してるんだろうね。指名手配犯か。笑えるわ」
『まだ他所だからそれくらいで済んでるんだろう。実家だと自制が効かないらしいぞ。アークの都合もお構いなしに四六時中突撃してくるらしい』
「「・・・・・・まじ?」」
『まじ』
こそこそと話す二人と一頭にもノアは気付かないがアークには聞こえていたようで、チラリと睨まれた。
なので、お口を閉じました。
そんでもって否定しないって事は事実なんだな・・・・・・。
どんだけなんだよヴァルハラ大公家。
怖いわ。
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