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173 氷の湖と精霊と金竜 3
しおりを挟む「・・・とりあえず、俺達の知っている情報を簡単に説明するから、聞いてくれ。質問は後からだ。良いか?」
アークが真剣な顔で皆に聞く。
「「分かった」」
『ああ』
《私もそれで良い》
皆が頷いたのを確認して話し出す。
「まず最初、事の起こりはノアの父親・・・古竜であり金竜であるリンドヴルム・・・当時は素性を隠して冒険者リンデンと名乗っていたそうだが、彼の番いであった黒兎人のアリテシアが身重の時に攫われて殺された・・・これが221年前。ノアが生まれたときだ」
この件はギギ達も聞いて知っていたので驚きは無い。
まあ、ノアの父親の素性はさすがに知らなかったのろう、目を瞠っていたからな。
「その時に大賢者ラグナロクとそこのフェンリルのヴァンが、番いを喪って狂竜となってしまったリンドヴルムを封印したそうだ」
ヴァンが頷く。
「故あって封印に200年かかったそうだ。アリテシアの死の直前に精霊王がノアを助け、魔力を注いでノアの命を繋いでくれたのがその200年間。ようやく目覚めて、ちょうど封印をし終えた大賢者ラグナロクが引き取って育ててくれたそうだ。それが21年前」
ノアが頷いて話を引き取る。
「俺は何も知らずに、爺さん・・・ラグナロクに育てられた。色々と教えて貰いながら。俺が15になった頃、寿命だったんだろう・・・亡くなってしまって。俺は最近まで何も知らず、天涯孤独で種族不明なヤツだったんだ」
「俺がノアと出逢って番いになってから、ノアの置かれた境遇や両親の事を色々と知ることが出来たんだ」
「・・・簡単に言うとこんな感じなんだけど」
アークとノアが簡潔に纏めてくれたが。
「・・・・・・つまり、ノアの翼が金色だったのは父親が金竜だったから、なんだな?」
ギギがぽそっと呟いた。
「ああ。だからあの時、後でなって言ったんだ。心臓に悪いだろう?」
アークがニヤリと黒い笑みを浮かべた。
「それはそうだけどよ! どのみち心臓に悪いわ!!」
「うんうん」
「金竜どころかエンシェントドラゴンって! 尚更悪いわ!!」
「うんうん!」
「---ふふ」
「「ノアさーん?!」」
「いや、こんな話を聞いてもいつも通りにしてくれる二人が・・・嬉しくて、ありがとう」
「「友達なんだから当たり前だろう!」」
「うん、ありがとう」
思わず嬉し涙のノアをアークがギュッと抱きしめて皆から隠す。
『・・・さすが、竜人。ブレないな』
《・・・・・・はええ、そんなことになってたんだ》
わいわい騒いでいる側でヴァンとラクスは話を続けた。
《・・・・・・封印って事は、死んではいないんだよね?》
『ああ。さすがに古竜は無理だ。・・・・・・一時、正気に返って自分から封印されたのだ』
《・・・そっか。知らなかったとはいえ、大変だったんだねえ》
『まあな。今は旅をしながら竜王国に向かっているところだ』
《そう・・・。私は何もしてあげられないけど、もし、もしも何時ものリンドヴルムと再会出来たら・・・また遊びにおいでよ》
『・・・・・・そうだな。約束は出来ないが、その時は・・・・・・』
凍っていない、優しい湖を見に来よう・・・。
ヴァンは湖を懐かしそうに見つめた。
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