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171 氷の湖と精霊と金竜 1
しおりを挟むめちゃくちゃ感じまくったあの日のあと。
数日ぶりに雪が止んで、外は深い雪に覆われていた。
街道は魔導具のおかげで、辛うじて道と分かるくらいの凹み具合だが、それでも膝は埋まるだろう。
テント周りは結界のおかげで全然積もっていなかった。
装備を整えてテントを出て片付けると、そこだけぽっかりと地面が見えて面白い。
「さて、面倒だから翔んでいくか? 人気もないし、良いだろう」
「賛成!」
「翔ぶのか? 翼を出すのか?」
「ああ」
「え、まじ?」
「お前らは・・・『フライ』?」
「そうだね。俺がお兄も連れて翔ぶよ」
「・・・ああ、アレ・・・大丈夫?」
ノアの心配は、以前の迷宮での初対面で突っ込んでたからだな。
「大丈夫!」
めっちゃいい顔で言い切ったルルにホントか?って顔をしたのはギギだった。
信用ならないようだ。
「まあ、良い。この先、街道沿いにそうだな、馬車だと1日くらいかかりそうな距離に大きな湖があるから、取りあえずそこに行こう」
「「「了解」」」
「ヴァンは?」
『我は元のサイズで駆けていく。なに、慣れ親しんだ雪よ。心配は要らぬ。途中で獲物を狩ってこよう』
わくわくしているようだ。
それならば、とそれぞれ準備をして動き出す。
二人とも翼を顕現するのは要塞都市以来。
ノアも顕現してからは竜の本能が疼くのか、気持ちわくわくしているようだ。
「準備は良いかな?」
「「「良いよ!」」」
『おう!』
「---じゃあ、翔ぶぞ」
アークのかけ声でノアも翼を顕現する。
ヴァンはフライングでさっさと駆けて行ってしまった。
ギギ達はノアの翼に唖然とした。
・・・そういえば見せたこと無かったなと気付いたがもう遅い。
「おま・・・ソレ・・・」
「---金色じゃん!!」
「・・・えへへ」
「えへへじゃねーよ?!」
「おい、アーク?!」
「・・・まあ、後でな」
「「ちょっと---!!」」
モヤモヤしながら飛び立つギギ達だった。
あまり早くない速度で街道沿いを翔んでいると、少し先にヴァンが魔獣を狩っているのが見えた。
寒いのに冬眠し損なったベア系だ。
まずまず脂がのっていそうだ。
「お鍋に良さそう」
ノアがポツリと呟いた。
「・・・いやお前ら、ホントに素材じゃなくて食材に変換してんのな・・・」
「諦めようよ、お兄。美味けりゃ良いじゃん」
「そうだけどよお・・・」
そんな会話をしつつ、途中で休憩してお茶を飲み、昼頃には目的地の湖に到着した。
ちなみに、ルルは宣言通りちゃんとギギを地面に降ろしていた。
「---!! おっきい上に、凍ってる! 乗っても割れないかな?」
「かなり分厚い氷だから平気だろう。滑るから気を付け---っ」
「---うわ」
「いってえ!」
「あわわっ!」
「・・・・・・言った側から、お前らは・・・」
「あ、ありがとう」
アークは咄嗟にノアを抱きしめて転ばずにすんだが、ギギとルルはそのまま滑って転けた。
「おおう。面白え!」
ギギが上手いこと滑り出すとルルも真似して滑り出した。
「ノア、アイツらほっといて昼御飯の支度しようぜ」
「ん。この辺りの雪を退けて・・・」
ギギ達が滑って遊んでる間にテントを出していると、ヴァンもハフッハフ言いながらやって来た。
『ノア、このベア食いたい!』
そういってさっき狩ってたベアを渡してきたので、早速解体して下拵えをする。
「野菜もたくさん入れてと」
「・・・美味そう・・・!!」
「出汁が出て野菜も美味しいからたくさん食べてね」
竈に特大サイズの大鍋をかけて、肉や野菜をたっぷり。
その他にも挽き肉にした熊肉でハンバーグを焼いて。
「「「「頂きます!!」」」」
『頂きます!』
大きめのスープ皿に大盛りよそって、はふはふしながら口に運んで、無言のまま咀嚼し。
そのままかき込んで、あっと言う間に2杯目、3杯目と続く。
合間にハンバーグをペロリと平らげてみるみるうちに食い尽くした。
唖然としながらも空になった鍋を嬉しそうに片付けるノア。
「あの、デザートあるけど」
「「「『食べるっ!!!』」」」
食い気味に即答した3人と1頭に笑いながら、ノアは食後のデザートを出すのだった。
ちなみにデザートはカスタードプリン(大盛り)だった。
「一度作ってみたかったんだよね、バケツプリンってやつ」
・・・・・・直径30㎝ほどのサイズの容器にたんまりと入っていたソレを皆で分けっこしました。
めちゃくちゃ美味しかったです。
一面銀世界で静寂が辺りを包む湖で、人知れず見つめる視線が一つ。
この時気付いていたのはヴァンだけだった。
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