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214 俺の大切な好一対 1
しおりを挟む「誰がお前をあのお方の番いだと認めるものか!! ここにいる者達全員、お前を番いだなんて、相応しい竜人だなんて認めないからな!」
声高にそう叫ぶ騎士に追従して騒ぐ他の騎士達。
ここは竜王国魔法騎士団の詰め所がある鍛錬場だ。
ここ最近は冒険者ギルドと王宮に行き来していて、王宮内の雰囲気にもだいぶ慣れてきて。
今日はアークが王宮勤めのヴァルハラ大公に面会する用事があるというので、番いであるノアも当然一緒について来たのだが。
「ひとまず俺だけ面会するから、今のうちに魔法騎士団の詰め所を見学しておいで。終わったら呼びに行く」
「分かった。魔法騎士団の詰め所・・・ルドヴィカ・・・いるかなあ?」
「どうかな? まあ、いなかったらほら、要塞都市で顔見知りになったヤツが誰かはいるだろうから、暇を潰してこい」
「・・・? うん」
ノアは最後の言い方がちょっと引っかかったが・・・。
じゃあまた、と言ってアークと別れて、城の侍従に案内されて来たのは良いんだが・・・・・・。
ナニコレ?
何でこんなことになった?
侍従に向こうが詰め所でこっちが魔法騎士団の専用の鍛錬場だと説明を受けていると、要塞都市で顔見知りになった魔法騎士団員のエルリックとサディアナが、詰め所の方からノアに気付いてやって来た。
その反対側・・・鍛錬場の出入り口付近に第1部隊隊長のカナンと副隊長のスレインも見える。
「ノア様お久しぶりです!」
「ノア様、何時ここに?」
エルリックとサディアナが声をかけてきたのでノアは侍従に礼を言って下がらせた。
「お久しぶりです、エルリック、サディアナ。ついさっき、アークと一緒に」
「え、アルカンシエル様は?」
「所用でお父上と面会です。俺はその間、こちらで暇を潰すようにと」
「「・・・・・・」」
アークに言われたまんまを告げると、それを聞いた二人は暫し無言。
俺が首を傾げていると、おかしな雰囲気に気付いたのか、出入り口にいたカナンとスレインも近付いてきた。
「ノア殿、ご無沙汰しております」
「お久しぶりです、ノア様。どうかしましたか?」
「あ、部隊長達・・・ちょっと・・・」
ノアが返事をする前にそう言ってエルリックがカナン達に耳打ちをした。
それを聞いた二人も暫し無言。
その後すぐ、さも今考えついたように言った。
「ノア様、お時間があるのでしたら、中で見学していきませんか? それと、是非ノア様の腕前を披露して頂きたいです」
「そうそう、あの時は凄かったです! また見せて下さい!」
「・・・・・・それは別に構わないけど、鍛錬の邪魔では?」
「とんでもない!」
「あの時の連中は大喜びですよ! そうと決まれば、さあさあ!」
そう言ってグイグイ押されるように中へ入ると、待っていたのが冒頭の言葉だったんだが・・・。
「・・・・・・えっと?」
どうすんだ、コレ?
何で皆、殺気立ってんの?
ノアはいきなりの展開に戸惑っていた。
要塞都市で見知った顔の騎士達は離れて静観している。
今騒いでいる騎士達はどうやらほとんど魔法騎士団の独身者らしい。
既婚者の魔法騎士団員は騒いでいる騎士達を囲むように壁際に控えていた。
ていうか、責任者のはずの魔法騎士団長はどうした?
一緒に入ってきたカナン達も一歩下がって傍観者を決め込んでいる。
少し考えて状況を見る。
---ああ、そうか。
・・・そういうことか。
暇を潰してこいって、そういう意味。
魔法騎士団の中には要塞都市での俺のことを知っている者もいるけど、それ以外は面識が無いから俺の今の噂を鵜呑みしたんだな。
竜人らしくない俺がアークの番いになったから不満タラタラってところか。
王宮内でも城下街でもギルドでも散々聞いた陰口・・・。
アークが静観してたから俺も放置してたけど。
暇潰ししてこいって事ね。
---じゃあ、遠慮なく。
言葉の意味を正しく読み取ったノアはこの瞬間、完全にSランク冒険者の顔にシフトチェンジした。
騒ぐ騎士達に向き直る。
「そもそも、俺がアークの番いだとか相応しいとか、お前らに関係あるのか? お互いが番いと認識していればいい話だろう?」
コテンと首を傾げるノアの纏う空気がガラッと変わった。
後ろで傍観者となっていた4人はゴクッと息を呑む。
周りで静観している顔見知りの魔法騎士達も顔色が変わった。
それに気付いたのか、やや引け腰になったらしい喚いていた騎士達。
「お、俺達は誇り高き竜人の魔法騎士団だ! ぽっと出の、何処の馬の骨かも分からぬ竜人と繁殖しか能のない淫乱兎の混血とは流れる血も誇りも違うのだ!! 聞いたぞ! そもそもお前は捨て子なんだろう?! 拾って育てた爺もたかが知れる! そんなヤツがアルカンシエル様の番いであるはずが無い! 兎人のお前が唆したんだろう!!」
一気に叫んだあとの静寂・・・。
「・・・・・・言いたいことはそれだけか」
「・・・・・・は?」
もはや能面の顔となったノアが無感情な声で呟いた。
「なあ。コイツら全員殺って良い?」
後ろを振り返る事もなく淡々と聞いてくるノア。
カイン達には表情は見えない。
恐ろしいほど凪いだ声音だ。
「・・・・・・えーと・・・死なないようにお願いできます? 死なれると面倒なので、せめてポーションで回復できるくらいの範囲でお願いします」
「ああ、でも、心は折っちゃって構いません。寧ろ徹底的に、存分にどうぞ」
「分かった」
カインとスレインがそう応えると一言そう言って、次の瞬間、ノアは自分を含めた広範囲にえげつない防御結界魔法を無詠唱で展開した。
騒いでいた騎士達を囲んで・・・。
「・・・・・・アイツら死んだな・・・」
主に精神的な方が・・・。
まあ物理的にも瀕死確定だが・・・。
さっき許可したとはいえ、想像するだけで背筋が震えた。
スレインの言葉に残りの三人も静かに頷いた。
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