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149 鎮魂祭と雪祭り(月下美人)3
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※投稿遅れました。スミマセン。
師走めぇ・・・。じ、時間が・・・。
のんびりと散策したあと遅い昼御飯を軽く食べてから広場に行くと、氷で出来た色んな形の像がたくさん飾られていた。
「あれは何をしてるんだろう?」
「・・・なんだろうな?」
ノアが気になって呟いた。
アークも初めてなので同じように首を傾げていると、近くにいたお兄さんが応えてくれた。
「アレは氷で、亡くなった人が生前好きだったモノを作って飾ってるんだよ。例えばあそこの像は、亡くなった旦那さんが肉が大好きだったから骨付き肉の形で、こっちのは花が好きだった子供のやつ。よく見ると色々なモノがあって楽しいよ」
言われて見れば、可愛い動物の形やお菓子みたいなものなど色んなモノがたくさん飾られていた。
「暗くなるとここも魔導具で灯りが灯るんだ。綺麗だから是非見てくれ。明日の夜が鎮魂祭本番だよ。灯籠を飛ばすんだ。当日は至る所で売ってるから、一つ買ってみると良いよ」
「灯籠を飛ばすの?」
「ああ、灯籠に火を入れると空へ昇っていくんだ。それで死者の魂を空へ送るんだよ。数百の灯りが空へと還っていく様は圧巻だよ」
じゃあなと離れていったお兄さんに御礼を言ってアークとノアは広場を眺めながら歩いた。
「---アーク、俺も爺さんの大切なモノを作って良いかな?」
「良いんじゃないか? でもお爺さんの大切なモノってなんだったんだ?」
大賢者の好みが分からない。
ていうか、あるのか?
「うん、爺さんの大切だったものはね・・・」
そう言いながらノアは無詠唱で氷の魔法を発動した。
両手のひらの中に氷が形作られていく。
それが形になっていき・・・。
いつの間にか周りに大勢集まってきていたが気にならないくらい集中していた。
「---出来た」
そういって見せてくれたのは、両の掌におさまりきれないくらい大きな、大輪の・・・。
「月下美人」
爺さんが大切にしてた花。
「---意外だな。これをお爺さんが大切にしてたのか?」
「うーん、ええと、大切というか・・・。この花は年に1回もしくは数回、夜に一日だけ咲く花なんだけど。俺の誕生日に何時もプレゼントしてくれた思い出の花なんだ」
「この花を?」
「・・・そう。この花言葉はね、『儚い恋』が良く知られているけど『強い意志』って言葉もあるんだ。爺さんは俺に儚くも強く生きて欲しかったんだと思うよ」
俺にとっても大切で大好きな花。
だからこれを飾りたい。
「まあ、錬金術の材料になるっていうのもあったんだろうけどね」
そういってノアは微笑んだ。
「それで、明日の夜は一緒に灯籠を飛ばそう」
「そうだな」
ノアは他にも何個か作って、空いた場所に置いた。
「あとね、俺は全然記憶に無いけど、母さんの・・・」
「---ああ。そうだな」
ノアが少し辛そうに言った。
生まれた時に亡くした母親だものな。
「母さんが俺に瓜二つというくらいしか分からないから、せめて、ね?」
そういってノアは小さいサイズの竜を作った。
想像でしかないが、番いの竜だろう。
「母さんの大切で大好きなモノ・・・だよね」
「確かにな」
番い至上主義の竜にとっては番いがこの世で一番愛しく大切な存在だ。
きっと相手にとっても同じはず。
その竜を月下美人の隣に置く。
・・・もしかしたらノアの母親も月下美人のような人だったのかもな・・・。
大賢者なら知っていただろうから・・・。
アークがそう考えているとノアがあっと気付いたように叫ぶ。
「---あ、待って、もう一つ・・・!」
慌てて作った氷像は成獣のフェンリルのヴァン(10分の1サイズ)で、その場所だけ竜と月下美人と相まって神秘的な雰囲気を醸し出していた。
「爺さんと父さんとヴァンは戦友だったんでしょ?」
ノアがアークのフードにいる仔狼の姿のヴァンに声をかけた。
『・・・まあな』
ヴァンはリンドヴルムと一緒にラグナロクとも長く旅をした。
最後はラグナロクと2人でリンドヴルムを封印という結末だったが。
3人(2人+1頭)のその話を知ってしまった今では、この配置はどうなんだという何とも言えない空気になったが・・・。
「だからこれで爺さんも心置きなくもふもふ」
「しねえだろ・・・」
『無いな』
「えー、絶対もふもふするって!」
「ノアぐらいだろ、フェンリルをもふもふする気になるのは・・・」
「えええ、そうかなあ」
ノアの天然が炸裂して、ヘンな空気が一気に霧散した。
眉間に少しシワを寄せてちょっと不満げな顔でブツブツ言いながら、アークとノアはその場をあとにした。
それをポカンと見送った街の住人達や観光客は、我に返るとザワザワと話し出した。
「さっきの人達って・・・」
「例の噂の冒険者達だよね?!」
「カッコいい!」
「可愛い! そんでもって魔法凄かった!」
「ねー、無詠唱で氷の魔法で精緻な氷像!」
「明日の夜が楽しみ---!」
「来るって言ってたよね? 灯籠飛ばすって!!」
そんな感じで、あっと言う間に噂が広まり、氷像を見に来たり明日の準備をする人で大賑わいだったらしい。
---明日はどうなる事やら・・・?
師走めぇ・・・。じ、時間が・・・。
のんびりと散策したあと遅い昼御飯を軽く食べてから広場に行くと、氷で出来た色んな形の像がたくさん飾られていた。
「あれは何をしてるんだろう?」
「・・・なんだろうな?」
ノアが気になって呟いた。
アークも初めてなので同じように首を傾げていると、近くにいたお兄さんが応えてくれた。
「アレは氷で、亡くなった人が生前好きだったモノを作って飾ってるんだよ。例えばあそこの像は、亡くなった旦那さんが肉が大好きだったから骨付き肉の形で、こっちのは花が好きだった子供のやつ。よく見ると色々なモノがあって楽しいよ」
言われて見れば、可愛い動物の形やお菓子みたいなものなど色んなモノがたくさん飾られていた。
「暗くなるとここも魔導具で灯りが灯るんだ。綺麗だから是非見てくれ。明日の夜が鎮魂祭本番だよ。灯籠を飛ばすんだ。当日は至る所で売ってるから、一つ買ってみると良いよ」
「灯籠を飛ばすの?」
「ああ、灯籠に火を入れると空へ昇っていくんだ。それで死者の魂を空へ送るんだよ。数百の灯りが空へと還っていく様は圧巻だよ」
じゃあなと離れていったお兄さんに御礼を言ってアークとノアは広場を眺めながら歩いた。
「---アーク、俺も爺さんの大切なモノを作って良いかな?」
「良いんじゃないか? でもお爺さんの大切なモノってなんだったんだ?」
大賢者の好みが分からない。
ていうか、あるのか?
「うん、爺さんの大切だったものはね・・・」
そう言いながらノアは無詠唱で氷の魔法を発動した。
両手のひらの中に氷が形作られていく。
それが形になっていき・・・。
いつの間にか周りに大勢集まってきていたが気にならないくらい集中していた。
「---出来た」
そういって見せてくれたのは、両の掌におさまりきれないくらい大きな、大輪の・・・。
「月下美人」
爺さんが大切にしてた花。
「---意外だな。これをお爺さんが大切にしてたのか?」
「うーん、ええと、大切というか・・・。この花は年に1回もしくは数回、夜に一日だけ咲く花なんだけど。俺の誕生日に何時もプレゼントしてくれた思い出の花なんだ」
「この花を?」
「・・・そう。この花言葉はね、『儚い恋』が良く知られているけど『強い意志』って言葉もあるんだ。爺さんは俺に儚くも強く生きて欲しかったんだと思うよ」
俺にとっても大切で大好きな花。
だからこれを飾りたい。
「まあ、錬金術の材料になるっていうのもあったんだろうけどね」
そういってノアは微笑んだ。
「それで、明日の夜は一緒に灯籠を飛ばそう」
「そうだな」
ノアは他にも何個か作って、空いた場所に置いた。
「あとね、俺は全然記憶に無いけど、母さんの・・・」
「---ああ。そうだな」
ノアが少し辛そうに言った。
生まれた時に亡くした母親だものな。
「母さんが俺に瓜二つというくらいしか分からないから、せめて、ね?」
そういってノアは小さいサイズの竜を作った。
想像でしかないが、番いの竜だろう。
「母さんの大切で大好きなモノ・・・だよね」
「確かにな」
番い至上主義の竜にとっては番いがこの世で一番愛しく大切な存在だ。
きっと相手にとっても同じはず。
その竜を月下美人の隣に置く。
・・・もしかしたらノアの母親も月下美人のような人だったのかもな・・・。
大賢者なら知っていただろうから・・・。
アークがそう考えているとノアがあっと気付いたように叫ぶ。
「---あ、待って、もう一つ・・・!」
慌てて作った氷像は成獣のフェンリルのヴァン(10分の1サイズ)で、その場所だけ竜と月下美人と相まって神秘的な雰囲気を醸し出していた。
「爺さんと父さんとヴァンは戦友だったんでしょ?」
ノアがアークのフードにいる仔狼の姿のヴァンに声をかけた。
『・・・まあな』
ヴァンはリンドヴルムと一緒にラグナロクとも長く旅をした。
最後はラグナロクと2人でリンドヴルムを封印という結末だったが。
3人(2人+1頭)のその話を知ってしまった今では、この配置はどうなんだという何とも言えない空気になったが・・・。
「だからこれで爺さんも心置きなくもふもふ」
「しねえだろ・・・」
『無いな』
「えー、絶対もふもふするって!」
「ノアぐらいだろ、フェンリルをもふもふする気になるのは・・・」
「えええ、そうかなあ」
ノアの天然が炸裂して、ヘンな空気が一気に霧散した。
眉間に少しシワを寄せてちょっと不満げな顔でブツブツ言いながら、アークとノアはその場をあとにした。
それをポカンと見送った街の住人達や観光客は、我に返るとザワザワと話し出した。
「さっきの人達って・・・」
「例の噂の冒険者達だよね?!」
「カッコいい!」
「可愛い! そんでもって魔法凄かった!」
「ねー、無詠唱で氷の魔法で精緻な氷像!」
「明日の夜が楽しみ---!」
「来るって言ってたよね? 灯籠飛ばすって!!」
そんな感じで、あっと言う間に噂が広まり、氷像を見に来たり明日の準備をする人で大賑わいだったらしい。
---明日はどうなる事やら・・・?
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