迷い子の月下美人

エウラ

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192 大公家と初対面 1

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「---で? 何でお前がお出迎え?」

アークは胡乱げにルドヴィカを見た。

「言っておくが、俺だって暇じゃないぞ。ヴァルハラ大公家から頼まれたんだよ。・・・周りの牽制も兼ねて」

最後はアークにだけ聞こえるように言った。

『凄い噂になってるぜ。お前が番った事とか金竜の事とか』

ルドヴィカがニヤリとしながら言った。
アークがちらりと睨むが、どこ吹く風のルドヴィカ。
この状況を楽しんでいるようだ。

「ま、俺は大公家までの付き添いだ。ところでそちらの兄弟は如何するんだい? おそらく大公家でも部屋は用意してあると思うが」
「---俺達は遠慮するよ。何処か良い宿を紹介してくれ。・・・さすがに親子水入らずは・・・なあ?」
「・・・あの家族の中には、ねえ?」
「そうだと思って手配してある。部下が案内するぜ」

そう言うと二人の前に魔法騎士が一人現れた。

「---じゃあ、俺達はそっちに向かうわ。落ち着いたら連絡くれ!」
「分かった。ありがとう」
「ノア、またね!」
「ん、また」

そういって二人は離れていった。



さて、アーク達が竜王国に着いて真っ先に向かったのは、当然アークの実家でもあるヴァルハラ大公家。

大公家というだけあって、さすがに邸が大きい。
そして敷地もめちゃくちゃ広い。

以前訪れた領主邸など小さい部類に入るんじゃ無いかと、戦々恐々としているノアと、勝手知ったる我が家とばかりにズカズカと歩いているアーク。

単なるペットと化したヴァンは今はノアのフードに潜り込んで寝ている。

ルドヴィカは邸の前で別れて帰って行った。

「れれ連絡とか、したの?」
「いや? 自分ちだし、知らせると本当に煩い」
「・・・・・・煩い? アレより?」

確かに記録媒体手紙では、まあ賑やかではあったが。
そんなに煩いんだろうか?
ノアが頭の中に疑問符を浮かべたとき・・・。

「「「「アーク! ノアちゃん!! お帰り---!!」」」」
「---ッチ! 揃っていたか」
「・・・え? え?」
『・・・相変わらず煩いの』

邸の門の内側から、記録媒体手紙で見慣れたアークによく似た美丈夫3人と美人さん1人が両手をぶんぶん振り上げて叫んでいるのが見えて、ノアがビクッとした。

すかさずアークがノアを抱き締めて、門に向かって叫んだ。
丁寧な口調なんてクソ食らえって感じで。

「うるせえ!! ノアがビックリすんだろ、叫ぶな!!」
「「「「あっ!! ごめん!!」」」」

門の警護の騎士達が何時ものやり取りだと微笑ましく見ていたが、ノアはぴるぴるしていてそれどころじゃ無かった。

アークはノアを抱えて自分の肩にノアの顔を押し付けると、門を素通りして、足早に家族の前も素通りして、控えていた執事長にお茶の支度を頼むと自分の部屋へと歩いて行った。

「ちょちょ、アーク! 先に行くな!」
「待ちなさい、せめて実物のノアちゃんをひと目・・・!」
「・・・・・・一度部屋で旅装を解いてきます。サロンでお待ち頂けますか」
「「「「・・・・・・ハイ・・・」」」」

有無を言わさない圧に負けた4人はとぼとぼとサロンに歩いて行った。

アークは溜息を吐いて、未だぴるぴるしているノアをぎゅっと抱き締めた。

「すまない、手紙でも見ているだろうが、うちの家族は俺が絡むと何時もあんな感じで、騒がしいんだ。普段はマトモなんだが・・・手紙の時よりも凄まじいだろう?」

あまりに人見知りとぴるぴるが酷いせいで声が出ないノアは小さく何度もアークの首元でコクコクと頷いて返事をした。

驚きはしたが、怖さは無かった。

前に手紙を記録媒体仕様にしたときから賑やかなのは知っていたし、慣れたつもりだったが、
さすがに至近距離での大声にはびっくりした。

でも身に纏っている魔力の気配もアークに似ていてホッとするし、優しそうな表情だった。

たぶんもう少し静かでいてくれたら、慣れる・・・と思う。
・・・うん、ずっとあのテンションでこられると引く。


アークの部屋は、不在中もキチンと清掃されているようで、ホコリ一つ無いピカピカだった。
ノアをソファに下ろすと、自分の服を脱ぐ。
何時からいたのか、侍従らしき人がアークの脱いだ服を受け取っていて、ノアがビクッとした。

---え? いつの間に? 俺、気付かないくらいぽけっとしてた?!

ノアが焦っていると、その侍従はノアの前にそっと移動してノアの前に片膝をついて目を会わせて言った。

「失礼致しました。私、アルカンシエル様の専属侍従のルフトと申します。私の事は空気と思って頂けると幸いです」
「ルフトは俺が生まれたときからついてくれている侍従だ。安心して良い。・・・だが、ノアの体には触れるな。世話は俺がする」
「心得ております。何か御座いましたらお声がけ下さいませ」

そういってアークの世話に戻っていった。

そしてヴァンもいつの間にかフードから出てノアの膝に落ち着いている。

「---腹立たしいが、そのままノアの膝の上でモフられていろ。ノアを落ち着かせてやれ」
「・・・・・・え? あ・・・ヴァン、いつの間に?」
『だいぶ気疲れしているようだな? 少し休め』
「・・・ん、ありがとう、ヴァン・・・もふもふ」

顔を埋めて、もふもふと動いていた手がだんだんと動かなくなり、そのまま眠ってしまったようだ。

「眠っていると父上達に言っといてくれ」
「畏まりました」

このまま少し眠らせてやろう。
あのテンションに付き合わせるのは可哀想だから、せめてもう少し元気になってから・・・。

ノアの体を少し起こすと、手早く旅装を解いていく。
シャツの釦を上三つほど外して、ベルトも外し、ブーツを脱がせた。

ヴァンごとノアを抱きかかえてベッドに寝かせると、ヴァンがノアを潰さないように大きくなった。
2m程になると、ノアを囲うように丸まる。

ノアはヴァンのお腹を枕に本格的に寝入ったようだ。

身じろぎすらしない。

「ヴァン、俺は少し父達と話してくるから、ノアを頼む。何かあればすぐに念話しろ」
『おう』
「・・・ノア、少ーし離れる。寂しいが我慢してくれ」

そういって自分の匂いの付いたブランケットをかけてやると、頬が緩んだ。

「・・・・・・あー、行きたくねえ・・・!」
「行って下さい、馬鹿主。本当に番いの事にはポンコツになるんですね。行かないと突撃してきますよ」

誰がとは言わないが。

「ッチ! ノアのためには仕方ねえ」
「フェンリル様がいらっしゃるのだから心配要らないでしょ? はいはい、行った行った!」
「相変わらず俺の時は遠慮が無いな、ルフト」
「長い付き合いですからね」

にっこり笑って送り出された。

「私も付いてますから大丈夫です」
「・・・頼むよ」

アークはこの後の想像をしてゲンナリしながらサロンに向かっていった。





※この後の話、以前書き溜めたものをちょっと修正したり書き足したりと改稿するので、遅れるか翌日とかになるかもです。
スミマセン、お待ち下さいませ。





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