迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
上 下
140 / 533

136 大公家とアークの手紙 3(side大公家&ルドヴィカ)

しおりを挟む

中空に映し出される映像は最初はルドヴィカが猛スピードで要塞都市に向かって翔んでいるところだった。

ガンガン空中の魔物が撃ち落とされ、向かった先に不意にアークの姿が入り、その直後氷の魔法陣が浮かんでルドヴィカが叫ぶ。

ふっと魔法陣が消えたが、辺り一面は相変わらず魔法で撃ち落とされる魔物が見える。

「・・・・・・ルドヴィカ、この、魔物を撃ち落としているのは・・・? 無詠唱に見えるんだが」
「無詠唱ですよ。ちなみにアルカンシエル様ではありません」
「---まさか番いの子が?!」
「そうです」
「お前と話してる間も普通に倒してないか? 話しながら的確に魔法を放っているようだが」
「ガンガン倒してましたよ。凄いでしょう?」

俺はちょっと遠い目をした。

アレは多重魔法を展開していた。
それなのに俺達と普通に会話もしていて、ある意味気違いな生き物だった・・・。

「本人曰く魔導師ウィザードらしいんですが、バスタードソードで魔物を一刀両断してました。分類としては私のような魔法騎士になると思います。そしておそらく、私でも勝てないです」

アレはバケモンだ。
規格外にも程がある。

想像したのか、皆、口を噤んだが、その後の番いノアのギャップにやられたようだ。

「なにこの子、めちゃくちゃ可愛いんだけど」
「え? え? 綺麗で可愛くて極度の人見知りって!」
「ぴるぴるしてるんだけど?!」
「え? まさか兎人?!」
「あー、ええと、黒兎人と竜人の混血ミックスだそうです。竜人の特性が強くて兎耳は無いそうで」

でも仕草が小動物っぽい。

その後、新迷宮の間引きに行くときに出したノアの翼に皆、困惑と驚愕。

「・・・・・・ルドヴィカ、見間違いじゃなければ、あの色って・・・」

アンジェリクが確認するように聞いてくる。

「・・・金竜は今はなっている・・・何か聞いてないのか?」

暫く考えてからウラノスも神妙な顔で意味深にルドヴィカに聞くが。

話せないそうです」
「・・・・・・そうか。分かった」

ならば、その時まで待つしかあるまい。

アンジェリクもアルジェントもシルヴァラも無言で頷いた。

「それにしても可愛いね! あー、早く紹介して欲しい!」

可愛い物好きの夫人がテンション高めだ。

「そう言えば、ノア殿も可愛い物好きらしいです。後、もふもふ好きですね」
「もふもふ」
「もふもふ?」
「動物の毛皮のもふっとしているあれです。フェンリルをもふって、アルカンシエル様にしょっちゅう引っ剥がされていて・・・・・・ああコレですね」

そう言ったら、ちょうど良いタイミングでアークがフェンリルからノアを引き剥がして自分の胸に抱き込んでいた。

「こんな感じで面白いです、ふふ」

ルドヴィカが思いだし笑いをした。

「あらあら、あのアークがねえ。本当に別人だわ」
「淡々とした付き合いしかしないようなヤツが、ねえ」
「番いって凄いね」
「「番えば分かる!」」

大公夫夫が息ぴったりに叫んだ。

「---さて、私は明日のこともありますので、この辺でお暇しますよ。記録はこちらにコピーしておいたので、ご存分に拝見なさって下さいね」

ルドヴィカはそういってコピーした水晶の魔導具を差し出した。

「ありがとう」
「何かありましたら何時でもどうぞ。では失礼します。良い夢を」
「世話をかけた。ルドヴィカも良い夢を」

そういって帰って行ったルドヴィカを見送り、サロンへと移動する。


「さて、報告は受けているな?」

ウラノスが至極真面目な顔で皆の顔を見た。

「ああ、ノア殿の事だろう?」

アンジェリクがスンッとした顔で言った。

「ルドヴィカはおそらく誓約魔法を使われているから詳しく話せないのだろうが、こちらは割と早い段階で色々と情報を得ているからな」

ニタリと、腹黒い顔で笑むウラノス。
それに瓜二つの腹黒い顔でアンジェリクもニタリ。

「・・・・・・あの街のクソ野郎共---失礼、阿呆共の事はすでに王都に根回し済みだよ。元々あくどい事をやっていたツケさ。あれぐらいで済んで生温いくらいだよ!」

さっき初めてマトモに映像で見たノアはめちゃくちゃ儚げ美人で、折れそうだった。
いくら冒険者ランクAと聞いていても、アレは見た目で庇護欲をそそられる。

しかも聞いていたとおりに、人見知りが激しくてアークの背中で、腕の中でしょっちゅうぴるぴるしてるんだけど?!


『天涯孤独で天然で純粋培養された箱入り息子』
『街ぐるみ(冒険者ギルド除く)で騙されているのに気付かない子(馬鹿ではない)』

---最初に得た情報がコレだったときの私達の困惑が分かるか?
アークの番いの情報をとあるツテから得たのだが、聞いた瞬間、皆で『ハア?!』となったのは当然だろう?

アークが番いにして街から離れなければ、ずっと気付かずに騙されている事も知らずに搾取され迫害されていたというのに。

アークでなくとも憤ろうというモノ。


「あとさあ、要塞都市のお馬鹿な受付ヤロウ」
「ああ、アレももう手配済み。俺達がしてやった」
「な!」

アイツはおそらく更生しないだろうからと、知り合いの貴族に声をかけておいた。
その知り合いからまた別の知り合いの貴族の後妻として受け入れて貰ったそうだ。

何でも俺達竜人を敬愛・・・盲愛しているらしくて、アークに対する態度に激オコだったらしく、如何に竜人が素晴らしくてお前が塵芥以下かというような事を一日中話して聞かせているらしい。

執務は後継の息子に任せてひたすら言い聞かせているそうだ・・・。
ご苦労様。

その内洗脳されることだろう・・・。
まあ、性根が変わらなければされるだけ。
何、どうとでもやりようはある。

その報告を聞いて満足げな4人。
全員、腹黒い笑顔でニタリ。

「---ヨシ、コレからもその調子で行くぞ!」
「「「おう!」」」

溺愛する末っ子の最愛の番いが不幸になる未来は許せない。

家族愛も半端ない竜人であった。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...