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136 大公家とアークの手紙 3(side大公家&ルドヴィカ)
しおりを挟む中空に映し出される映像は最初はルドヴィカが猛スピードで要塞都市に向かって翔んでいるところだった。
ガンガン空中の魔物が撃ち落とされ、向かった先に不意にアークの姿が入り、その直後氷の魔法陣が浮かんでルドヴィカが叫ぶ。
ふっと魔法陣が消えたが、辺り一面は相変わらず魔法で撃ち落とされる魔物が見える。
「・・・・・・ルドヴィカ、この、魔物を撃ち落としているのは・・・? 無詠唱に見えるんだが」
「無詠唱ですよ。ちなみにアルカンシエル様ではありません」
「---まさか番いの子が?!」
「そうです」
「お前と話してる間も普通に倒してないか? 話しながら的確に魔法を放っているようだが」
「ガンガン倒してましたよ。凄いでしょう?」
俺はちょっと遠い目をした。
アレは多重魔法を展開していた。
それなのに俺達と普通に会話もしていて、ある意味気違いな生き物だった・・・。
「本人曰く魔導師らしいんですが、バスタードソードで魔物を一刀両断してました。分類としては私のような魔法騎士になると思います。そしておそらく、私でも勝てないです」
アレはバケモンだ。
規格外にも程がある。
想像したのか、皆、口を噤んだが、その後の番いのギャップにやられたようだ。
「なにこの子、めちゃくちゃ可愛いんだけど」
「え? え? 綺麗で可愛くて極度の人見知りって!」
「ぴるぴるしてるんだけど?!」
「え? まさか兎人?!」
「あー、ええと、黒兎人と竜人の混血だそうです。竜人の特性が強くて兎耳は無いそうで」
でも仕草が小動物っぽい。
その後、新迷宮の間引きに行くときに出したノアの翼に皆、困惑と驚愕。
「・・・・・・ルドヴィカ、見間違いじゃなければ、あの色って・・・」
アンジェリクが確認するように聞いてくる。
「・・・金竜は今はいないことになっている・・・何か聞いてないのか?」
暫く考えてからウラノスも神妙な顔で意味深にルドヴィカに聞くが。
「今は話せないそうです」
「・・・・・・そうか。分かった」
ならば、その時まで待つしかあるまい。
アンジェリクもアルジェントもシルヴァラも無言で頷いた。
「それにしても可愛いね! あー、早く紹介して欲しい!」
可愛い物好きの夫人がテンション高めだ。
「そう言えば、ノア殿も可愛い物好きらしいです。後、もふもふ好きですね」
「もふもふ」
「もふもふ?」
「動物の毛皮のもふっとしているあれです。フェンリルをもふって、アルカンシエル様にしょっちゅう引っ剥がされていて・・・・・・ああコレですね」
そう言ったら、ちょうど良いタイミングでアークがフェンリルからノアを引き剥がして自分の胸に抱き込んでいた。
「こんな感じで面白いです、ふふ」
ルドヴィカが思いだし笑いをした。
「あらあら、あのアークがねえ。本当に別人だわ」
「淡々とした付き合いしかしないようなヤツが、ねえ」
「番いって凄いね」
「「番えば分かる!」」
大公夫夫が息ぴったりに叫んだ。
「---さて、私は明日のこともありますので、この辺でお暇しますよ。記録はこちらにコピーしておいたので、ご存分に拝見なさって下さいね」
ルドヴィカはそういってコピーした水晶の魔導具を差し出した。
「ありがとう」
「何かありましたら何時でもどうぞ。では失礼します。良い夢を」
「世話をかけた。ルドヴィカも良い夢を」
そういって帰って行ったルドヴィカを見送り、サロンへと移動する。
「さて、報告は受けているな?」
ウラノスが至極真面目な顔で皆の顔を見た。
「ああ、ノア殿の事だろう?」
アンジェリクがスンッとした顔で言った。
「ルドヴィカはおそらく誓約魔法を使われているから詳しく話せないのだろうが、こちらは割と早い段階で色々と情報を得ているからな」
ニタリと、腹黒い顔で笑むウラノス。
それに瓜二つの腹黒い顔でアンジェリクもニタリ。
「・・・・・・あの街のクソ野郎共---失礼、阿呆共の事はすでに王都に根回し済みだよ。元々あくどい事をやっていたツケさ。あれぐらいで済んで生温いくらいだよ!」
さっき初めてマトモに映像で見たノアはめちゃくちゃ儚げ美人で、折れそうだった。
いくら冒険者ランクAと聞いていても、アレは見た目で庇護欲をそそられる。
しかも聞いていたとおりに、人見知りが激しくてアークの背中で、腕の中でしょっちゅうぴるぴるしてるんだけど?!
『天涯孤独で天然で純粋培養された箱入り息子』
『街ぐるみ(冒険者ギルド除く)で騙されているのに気付かない子(馬鹿ではない)』
---最初に得た情報がコレだったときの私達の困惑が分かるか?
アークの番いの情報をとあるツテから得たのだが、聞いた瞬間、皆で『ハア?!』となったのは当然だろう?
アークが番いにして街から離れなければ、ずっと気付かずに騙されている事も知らずに搾取され迫害されていたというのに。
アークでなくとも憤ろうというモノ。
「あとさあ、要塞都市のお馬鹿な受付ヤロウ」
「ああ、アレももう手配済み。俺達がお世話してやった」
「な!」
アイツはおそらく更生しないだろうからと、知り合いの貴族に声をかけておいた。
その知り合いからまた別の知り合いの貴族の後妻として受け入れて貰ったそうだ。
何でも俺達竜人を敬愛・・・盲愛しているらしくて、アークに対する態度に激オコだったらしく、如何に竜人が素晴らしくてお前が塵芥以下かというような事を一日中話して聞かせているらしい。
執務は後継の息子に任せてひたすら言い聞かせているそうだ・・・。
ご苦労様。
その内洗脳されることだろう・・・。
まあ、性根が変わらなければ処分されるだけ。
何、どうとでもやりようはある。
その報告を聞いて満足げな4人。
全員、腹黒い笑顔でニタリ。
「---ヨシ、コレからもその調子で行くぞ!」
「「「おう!」」」
溺愛する末っ子の最愛の番いが不幸になる未来は許せない。
家族愛も半端ない竜人であった。
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