迷い子の月下美人

エウラ

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128 事の真相

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俺達は丸三日ヤっていたらしい。

どうやら、いわゆる戦闘後の昂ぶりとノアの発情期が被ったようで、その相乗効果が凄かったらしいとは、アーク談。
番いアークがいたお陰で3日で済んだらしいが、とにかくずっと繋がっていたらしいヨ。

---ソレって、の事実なの?!とに悶えたノアだった。
いや、ダジャレじゃナイヨ。

発情がおさまってテントから出たら、仔狼サイズのヴァンが開口一番。

『よお、三日振り。気は済んだか?』

---って。
・・・・・・発情状態の時は訳分かんないから良いけど、正気に戻ってからがツラい・・・・・・。

アークですか?
そりゃあツヤッツヤのピッチピチ(死語?)で、めちゃくちゃいい笑顔でしたが、何か?

とりあえず宿の食事処で腹ごしらえをすると、三日振りとなる冒険者ギルドへ足を向けた。

詳しい状況説明をしなくちゃいけないからだ。

・・・・・・なんか、アークは迷宮が発生した原因を知っているような感じなんだけど・・・。

ヴァンが関係してるのかな?
微妙に目を逸らしているし・・・?



で、やって来ました、冒険者ギルド。

顔パスで、問答無用でギルマスの執務室へと連行されました。

いや、説明が遅れたのは申し訳ないけども!

「まさか発情期で三日も籠もるとは思わなかったぜ」
「こればかりは仕方ないだろうが。ノアは悪くない」
「・・・・・・スミマセン」

居たたまれない・・・。

アークの足の間に座って縮こまってみました。
そんな俺の膝の上には仔狼サイズのもふもふフェンリルがおります。

俺はさり気なくもふっております。
そんな俺を見てアークがチッと舌打ちしてきます。

・・・・・・誰に向かって丁寧な話し方をしているんだろう?

「それで、なんだ、詳しい話を聞かせてくれ」

ノアの膝の上をチラチラと気にしながらギルマスが話を促す。

「・・・はあ。まず、コレはフェンリルだ。ソコを念頭に置いて聞いてくれ」

ノアの膝の上を見て、サラッと告げられてギルマスはギョッとした。

「---フェンリル?! あー。いや、お前らなら有り得るな、うん。気にしたら負けだ」

一人でうんうん頷いている。
大丈夫だろうか。

「でだ、コイツが最下層のボス部屋にいた。おそらく、コイツがあの場所にいたことによって魔力が凝り固まり、やがて迷宮を形成するに至った可能性が高い」
「---は・・・?」

アークの言葉に今イチピンとこないギルマス。

「理由は知らんが、コレが長いことあそこで寝てたから魔力が集まってしまって、結果、迷宮が生まれた。そして迷宮の核ダンジョンコアよろしくボス部屋に鎮座していたせいで他の魔物が魔力に怯えて上へと逃げ出したんだろう。・・・・・・な? ヴァン」

アークに言われたヴァンは視線を泳がせた。

『・・・・・・ぅ、その・・・・・・まあなんだ・・・・・・スマン。・・・その通りだ』

そういって項垂れた。

「そもそも、何であそこにいたんだ? 何時から?」
『・・・10年くらいは経ってるかの。理由は特になく、単にあそこで昼寝をしていたのだが・・・いつの間にか迷宮が発生していて、気付いたらボス部屋だったのだ。それがつい最近の事で・・・』

居心地悪そうにボソボソと話すヴァン。
アークもギルマスも呆れ顔だ。

いつの間にか10年寝てて、目覚めたら迷宮が出来ててボス部屋だったって・・・・・・。

「・・・・・・うん、まあ、俺も200年寝てたし、仕方ないんじゃない? わざとじゃないんだし・・・ね?」
『そそそうなんだ! 迷宮を作る気なんてこれっぽっちも無かったのだ! でも、放っといて何かあっても困るしと思って、誰かこないかなあ・・・と・・・』

俺がそう言えばヴァンは我が意を得たりとばかりに乗っかってきた。
それにクスリと笑ってアークの方を見る。

「・・・だって。ね? 幸い、被害は余りなかったし、迷宮という副産物も生まれて、良かったねって事で・・・許してあげよう?」

ノアがそう言ったので、渋い顔をしながらもアークとギルマスはヴァンをこれ以上責めなかった。
まあ、元々責任追及をするつもりは無かったのだ。
単なる事実確認のためである。
なので、ヴァンはめでたく無罪放免・・・とはならず、アーク達と行動を共にする事に決まった。

「やった。もふり放題」
『・・・む、致し方あるまい。存分にモフるが良いぞ』
「何、上から目線で威張ってんだよ。元はといえばお前が悪いんだろ。自業自得って言葉を知っているか、ジジイ? あと、ノアは離れろ! 抱きつくのは俺以外禁止!!」

わいわいと騒がしくなった執務室に、サブギルマスの声が響いた。

「あの、申し訳無いんですが、そのフェンリル・・・ヴァンさん?の従魔登録と従魔の証を付けて頂きたいのですが!」
「---従魔登録?」

ノアがキョトンとした。

「・・・ああ、うん。そうだよな、街中でフェンリル野放しはマズいもんな。どうする、ヴァン」
『・・・・・・ぐぬぬ、屈辱だが、甘んじて受けよう。だが我はノアが良い!』
「却下」
『何故じゃ?! お前ではイヤだ! かわいげが無くて我をぞんざいに扱うだろうが!』
「俺の好一対にたとえ従魔ペット枠とはいえ他のヤロウを近づけたくねえ」
『・・・・・・ほんに、竜人の番い至上主義は厄介で重いのう・・・彼奴もそうだった。仕方あるまい。アークで手を打とう』
「決まりだな。じゃあ早速。あ、ノアはヴァンに似合う従魔の証を作ってくれるか? ヴァン、どんなのが良い?」
「んん??」

従魔の証ってどんなモノ?

『首輪は窮屈でイヤだ。耳に付けるか足に嵌める輪だな。もちろん自動でサイズ調整出来るモノだぞ? 我の元のサイズを忘れてはおらんよな?』
「ああ、うん・・・・・・えーと? そういうのを作れば良いんだね? 分かった」

そういって素材をマジックバッグ(と見せかけてインベントリ)から出している間に、アークとヴァンは従魔テイムの魔法で契約を結んだ。

ノアはヴァンに似合う色や素材を考えて、従魔=家族の認識を持ったので、自分達の婚姻の腕輪と同じくヴァンの足に付ける腕輪を錬成した。

ヴァンの瞳は瑠璃色なので、金の混じったラピスラズリを主体に、自分達の色である魔銀と黒曜石を組み合わせた繊細なブレスレットが出来上がった。

魔銀を土台にラピスラズリ、その間にぽつぽつと黒曜石を配置した。

もちろん自動でサイズ調整可、危険なときは自動で結界を張る魔法陣を籠めて、時間停止付きでこの要塞都市がすっぽり入る広さのマジックバッグ機能も付けた。
本人とアーク、ノアの魔力登録でそれ以外は弾くようにしたので盗難防止にもなる。

「必要なら後から付与出来るから何時でも言ってね」
『・・・・・・お、おう。---なあ、此奴はいつも規格外こうなのか・・・・・・?』

最初はノアに、その後はアークにしか聞こえないように話した。

「・・・・・・何時ものことだ」

アークの溜息で色々察したヴァンは、恩に報いる為にも、ノアを全力で護ろうと心の中で一匹ひとり誓ったのだった。








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