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120 いざ出陣!
しおりを挟むあれから約30分後、ルドヴィカが呼び寄せた第1部隊が到着した。
竜王国からはかなり離れているのにたった30分足らずで来られたのは、今回、古の森の魔物の討伐の為に森の近くで待機していたからだ。
森の近くで異変に気付き、それを要塞都市ライズに連絡するために団長であるルドヴィカが部下2名を連れて先行し、残りは指示待ちだった。
「ただいま到着致しました、団長。・・・ご無沙汰しております、ヴァルハラ大公子息アルカンシエル様。竜王国魔法騎士団、第1部隊隊長のカナン・スレイヴでございます」
「同じく副隊長のスレイン・エフォートです」
そういって綺麗なお辞儀をした二人にアークが声をかける。
「久しいな、カナン、スレイン。俺は今ここではただのSランク冒険者だ。気楽にしてくれて良い。彼は俺の番いで薬師兼Sランク冒険者のノアだ。人見知りだからあまり近付くなよ」
よろしく頼む、とは言わない。
よろしくされたら嫉妬で相手を張り倒す自信しかないからだ。
竜人は番いに対しては狭量なのだ。
皆は一瞬、アークに番いが出来たことに動揺した。
全くの初耳だったからである。
だがそこはやはり竜人。
番い至上主義をよくよく分かっているので、何があろうとツッコまない。
万が一アークの機嫌を損ねたら死ぬ。
跡形も残らず消される。
下手したら大地の形が変わる。
だから他の団員もにっこり笑うだけに留まる。
優秀な部下である。
「---ノア、です」
それだけ言って、アークの背に隠れてぴるぴるしているノアに、皆、顔には出さないが内心悶えていた。
---番い様、可愛い---!!
後々、『ノアとアークを見守り隊』が竜王国の騎士団内にもこっそり設立される事になる切っ掛けであった。
閑話休題。
「今回の詳しい内容は聞いているな? これよりアルカンシエル殿とノア殿が新しい迷宮内に潜って中の魔物の間引きを行う。我らは外の魔物の討伐がメインだ」
ルドヴィカの声にビシッと気を引き締める隊員達。
「大物はあらかた片づいているが、迷宮内から溢れ出す可能性も高い。十分気をつけて事に当たるように」
「---あの、」
ルドヴィカに続いてノアが声をかけた。
「俺のポーション、念の為に皆、持って行って下さい。ルドヴィカさん・・・これ」
そういって手の平サイズの巾着袋を渡す。
ルドヴィカが中から一つ取り出して鑑定して唖然とした。
「・・・最高品質。しかも効能が・・・嘘だろ?」
ルドヴィカが思わずアークを見つめる。
アークは何時ものように苦笑しながら言った。
「ノアは先ほど言ったように薬師マイスターだからな。それに錬金術師でもある。錬金術で作ったポーションは薬師仕様のそれより凄いぜ」
そういえば肩書きが凄かったなと思い出し、ルドヴィカが慌ててアークの言った錬金術仕様のポーションを鑑定すると・・・。
「---マジかよ。初級ポーションで病気にも効くって・・・うわあ・・・」
ドン引きするルドヴィカを見て、当の本人は首を傾げてキョトンとしている。
ああ、これは自覚してないパターンだ。
・・・そりゃあアークが超過保護にもなろうもの・・・。
何か事情があるんだな?
それはこの件が片付いたら詳しく聞く事にして・・・。
「---っし。ありがたく使わせて貰う。アークは心配してないが、ノアは気を付けてな」
「おい」
「---はい」
「じゃあ、作戦開始---!!」
「「「はっ」」」
ルドヴィカの合図に、魔法騎士団の第1部隊隊員は散開していった。
「---はあ、じゃあ、ノア。俺達も行くぞ」
「ん」
「俺はここで指示を出してるからな」
「「行ってくる」」
そういって二人は翼を顕現させた。
アークは銀色。
ノアは・・・。
「---嘘だろ?」
それは見事な黄金色の翼だった。
あっと言う間に翔んで行ってしまったが、アレは間違いなく金色だった。
---最初に見た感じ、竜人の特性が強い混血だとは思っていた。
あの小動物っぽい感じが、もしかしたら兎人との混血かなと予想はしていたが。
「---まさか、金竜・・・なのか?」
ルドヴィカに様々な情報を置いて行った二人の背を見つめてニヤリと笑う。
「戻ってきたら・・・覚えてろよ」
さっきの仕返しとばかりに呟いた。
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