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111 黄金の角&白樺亭の緊急事態(side熊獣人家族)
しおりを挟む俺は『黄金の角』と『白樺亭』のオーナーをしている熊獣人のシルトだ。
オーナーとは言うが、宿を兄である俺達家族が、食事処を弟家族が切り盛りしているだけで、名前だけのようなモノだが。
家族経営のおかげか、気兼ねなく悪いところを言い合って直していった結果、アットホームで良いと評判が上がってお客が増えた。
だからといってこれ以上大きくすると手が回らなくなると思い、代わりにサービスを良くしようと努めた。
そして、要塞都市ならこの宿!と言われるくらいになって、忙しくも嬉しい日々を送っていた今日この頃。
受付を担当していた四男のエドが大声で叫びながら奥にいた俺の元にやって来た。
エドの要領を得ない話に慌てて受付に向かえば、確かに美形がいた。
別系統の美形が二人もいた。
エドがドヤっていたがそうじゃねえ!
仕事しろ!
何とか平常心を取り戻し、受付をする。
どうやら番い同士らしく、二人一部屋を希望された。
主に番い用に誂えてある部屋がちょうど空いていたのでそこを使って貰おう。
前払いで一週間。
旦那さんと思われる美丈夫の言いっぷりだともっと滞在するかもしれないな。
宿帳に記載するために冒険者ギルドのタグを見せて貰おうとして、はた、と止まった。
あれ?
何時ものように当たり前に提示を求めたが、もしかしてお忍びの御貴族様だったりしないよな・・・?
高貴そうなオーラが漂っているんだが。
「・・・・・・冒険者ですよね?」
思わず聞き返したら、ふはっと笑われてギルドタグを見せられて、ほっとしたのも束の間・・・。
「ありがとうございます---ぅ?! は?! Sランク?!」
そのあと何とか部屋を案内して、一通り確認したお二人はエドに冒険者ギルドに行くと鍵を預けて出かけていった。
「---ていう事があったんだよ!」
あの後、客室を掃除していた長男、次男、三男と嫁、食事処の仕込み中だった弟夫夫とその子達三人が集まったところで、受付奥の休憩所に籠もってさっきの話をぶちまけた。
「へえ、何かエドが騒いでると思ったらそんなことが・・・」
騒ぎを聞いていたらしい嫁がなるほど、と呟いた。
「とにかく、美丈夫で儚げ美人だった! そんでもって二人ともオリハルコンのタグでさあ、驚いたのなんのって!」
エドがまた興奮している。
「ギルドに行ったんでしょ? お昼は来ないかなあ・・・」
「そうだな。だが夜はココで食べてくれるんじゃないか?」
弟のリベリオと男前な義弟がそんな話をすると、甥っ子達と息子達がわいわいと話し出した。
「とりあえず一週間は泊まるんだから顔を合わせるだろう」
「---本当に冒険者だったの?」
「タグはもちろん本物だった。ただ、ありゃあいいとこの貴族には違いないよ。所作が綺麗すぎた。荒くれ者の動きじゃなかった」
「今時、貴族が冒険者やってるのなんて珍しくもないからな。三男以下は特に」
「いやあ、なんて言うか、たぶんめちゃくちゃ高位の貴族ってオーラだったの!」
「そんな、分かるもん?」
とにかく見れば分かるよ、と言って皆は持ち場へ散っていった。
その後、夕飯を食べに戻った二人を見て、家族全員、納得したのだった。
物腰も柔らかくて、所作も綺麗なテーブルマナー。
---アレは絶対に高位貴族!
だからといって特別な事はしないけどね。
気持ち良く過ごして貰えたら、それで良い。
「ご馳走様でした。凄く美味しかったです」
「美味かった」
そう声をかけてくれたお嫁さんにほっこり。
旦那さんもイケメン!
「「ありがとうございます!」」
目の保養---!!
家族全員、やる気満々になりました。
※スミマセン。先に言っておきます。この後の話の展開が割と長くなって、エロい話がちょっと出て来ないです。一区切りつくまで欲求不満(笑)でお待ち下さい。
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