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129 或るギルド職員の転落(sideライズ冒険者ギルド)
しおりを挟むそのギルド職員はいわゆるコネで入ったヤツで、仕事は全く出来なかった。
サブギルマスの遠縁の子らしく、どうやら親が貴族で甘やかされた末っ子だとか。
確かに顔はまあまあ可愛い系でしたが。
どうしようもないので、サブギルマスが一年だけの契約でうちのギルドに押し付けられ・・・いえ、預かったそうなのだが・・・・・・。
仕事は覚える気が無いわ、イイ男と見れば色目を使うわ、人によって態度が違うわで、いい加減、皆がキレかけていた。
だがあと少しで契約が切れる。
我慢だ!
---と皆が思っていたときに不意に流れてきた情報。
『Sランク冒険者のアルカンシエル殿の番いであるAランク冒険者のノア殿を見守る会をギルド職員主体で発足したらしい』
---なんぞや?
詳しく聞くと、Sランク冒険者の番い殿が純粋培養されたような箱入りで心配だから、ギルドの情報網で密かに見守ろうと言う、ファンクラブ的なものだとか。
切っ掛けを聞くに、そりゃあ過保護にもなろうもの。
元々娯楽も少ないこの職場。
コレは良いのでは?!
---と、こぞって入隊しました。
あの職員を除いて全員。
アレは駄目。
一番駄目なヤツ!
そうしてマメに他の街の職員達と連絡をやり取りしつつ、遂に我が街へキター!!
皆、密かにヒャッホイ盛り上がりました!!
門衛から連絡が来たときは、思わず叫び出しそうだった。
それからギルマスを始め、いつギルドに来てもオッケーな体制でおりましたが、何故かアレの窓口へ行きましたね、真っ直ぐ。
・・・・・・単に入り口から真っ直ぐだっただけでしょうが・・・・・・。
そしてあんぽんたん!!
目の前にいるの分かってるよね!
わざと無視かい!!
・・・アンタは今日で終わりだな。
アルカンシエル殿は何かを感じたのでしょうか。
チラッと見てから隣の職員に声をかけました。
別の職員が対応する中、アレは話を盗み聞きしていちいち反応しているようだ。
そして顔を上げたら、一瞬でコロッといったな。
態度を180度変えやがった。
だがしかし、アルカンシエル殿が凍るような声でバッサリ切った。
はい、終了---!!
ざまぁ!!
アルカンシエル殿は、アレがノア殿に向けた蔑む感情を確実に感じ取っていました。
万が一はないのです!
さてさて、お二人が去った後のアレの後始末をしましょうか。
まずはサブギルマスに話を通してからギルマスに許可を取って。
さっさと解雇書類を作成、速やかに受理されることでしょう。
なんせ、Sランク冒険者の機嫌を損ねたのですものね。
それがどれ程の罪か分かっていないようですが・・・。
はっきり言えば国の損失ですよ。
一騎当千の戦力ですよ。
それを手放す羽目になるところだったのだから。
それを未だに理解しないお馬鹿さんにはきっと相応しい職場があるはず。
---まあ、冒険者ギルドのみならず薬師ギルドでも再就職は不可能でしょうね。
情報はあっと言う間に回るのですよ、特に悪評はね。
今までの自分の行いが回りまわってきた結果。
自業自得というモノです。
取りあえずはギルマスの執務室にお茶とお茶請けを持っていきましょうか!
ああ、ノア殿の可愛らしいこと!
そういう場面がない方が本当は良いのですが、ぴるぴる震えるところを見たいですね!
---断じてSでは有りませんよ。
「おーい、誰かお茶とお茶請け持っていってくれないか?」
「はーい! 私が行きます!!」
真っ先に手を上げる。
だってさっきからそのつもりだったもの。
少しでもお二人のご尊顔を拝見して参りますよ!!
・・・・・・こうしてノア達の預かり知らぬところで一人のギルド職員が密かに消えていくのであった・・・・・・。
ライズでのスタンピード&新迷宮騒ぎが落ち着いて暫くの後、アレが実家に戻ってすぐにどこぞの貴族の後妻になったとか何とか情報が入って来ました。
お金持ちらしいが親ほどの歳の男で、すでに後継の、自分と同じくらいの歳の息子がいるとか。
ギルドを解雇された理由をちゃんと知っていて後妻に望んだそうで、どうやらお飾り妻のようです。
というか、監視の意味合いが強いようでした。
え?
竜王国の関係者?
アルカンシエル殿への対応に激おこですって?
手元で躾をし直すんですって?
・・・ご愁傷様。
猫ちゃん、何匹被って過ごしているのやら?
ちなみにお菓子を頬張るノア殿はめっちゃ可愛かったでっす!
※名前も出ない当て馬にもならないモブでした。
忘れた頃に急にぶっ込んでスミマセン。
※誤字報告ありがとうございます!
解雇種類→解雇書類に訂正致しました。
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