迷い子の月下美人

エウラ

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109 恒例の?ギルマスとのご対面の儀

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ギルマスの執務室に案内されて来たアークとノア。
ギルド職員がお茶とお茶請けを用意し、丁寧にもてなしてくれた。

---さっきの受付職員とは雲泥の差だな。
まあ、アレがどうなろうと俺達の知った事じゃ無いが。

・・・実はノアへの悪感情に敏感に反応して塩対応のアークである。


「ようこそ、要塞都市ライズへ。私はここのギルドマスターのケインと言う。こちらはサブギルマスのリューズだ」
「リューズです。よろしくお願いします。先ほどは受付職員が失礼致しました。アレは私の遠縁で無理矢理・・・コホン、仕方なく・・・えー、まあ、とにかく仕事が出来なくて、申し訳ありませんでした」

サブギルマスの言い様に事情を察したアークは苦笑しながら、気にするなと応える。
そっちで色々と手を打つのだろうし。

「?」

キョトンとしているノアは相変わらず分かってないから、このまま流そう。

「まあ、騒がれる前に顔出ししただけなんで特に用は無いんだが、何かあれば滞在中なら協力することも出来るから、その時は連絡をくれ。受けるかどうかはその時次第だが」
「それでも助かる。宿は何処に?」
「『黄金の角』だ。今のところ一週間先払いしてある。ここには迷宮が無いんだよな? だからクエストを受けるか勝手に討伐するかになるんだが・・・」

そういってノアを見る。

「? 俺は別に、素材収集が出来れば特に問題ないけど。・・・あっ、防寒具の素材って何が良いんだろう?」
「---神聖な霊山この先にいく気か? なら、下の解体作業場に行ってみな。解体リーダーのヤスって厳ついヤロウが素材に詳しい」
「ありがとうございます! 行ってみます!」

ぱあっと顔が綻んで、アーク達は思わずほのぼのとした。

「ノア、せっかくだからお茶とお茶請けに手をつけたら?」
「ん、頂きます。・・・・・・んん? クッキーに木の実が・・・なんの実だろう? 美味しい」
「あ、それはですね、私が焼いたんですが・・・」
「え? 本当ですか? あの、作り方って教えて貰えたりなんかは・・・・・・?!」
「もちろんです! 逆に良いんですか、こんなもので・・・?」
「美味しいものに『こんなもの』なんて関係ないです。是非是非教えて下さい!」

サブギルマスのリューズがノアにクッキーのレシピを教えてくれている間に、ギルマスのケインと小声で『見守り隊』の情報を交わす。

『このギルドはさっき言った馬鹿職員以外、全員入隊している。もちろん今言った解体作業場の連中もだ』
『ここのギルド職員はかなりの人数がいると思うが、管理しきれるのか?』
『各部署毎に部隊長を決めてまとめている。抜かりは無いよ』
『・・・了解』

そんな話をしていたら、レシピをメモし終えたらしいノアが黙々とクッキーを消費していた。
気付けばノアの皿が空になっている。

「俺のも食うか?」
「---良いの?!」

アークが自分の皿を勧めたら、ぱあっと嬉しそうに笑ってクッキーの皿を自分の膝に載せてサクサクと頬張った。

---。

「・・・リスみたいだな?」
「頬がぽっこり。可愛い」
「・・・半分兎人だからな。小動物っぽいよなぁ・・・」
「「え?! 兎人なのか?!」」

思わずギルマスと二人で叫んだ。

「一応竜人と黒兎人の混血ミックスな」
「・・・・・・一応? ・・・いや、突っ込まないよ?!」

アークがニヤリと笑う。
いくら隊員でも、ヤバい情報は知りたくないよ?!!

そうこうしているうちに綺麗に平らげてお茶も飲んだノアが、アークに声をかけた。

「お話済んだ? じゃあ、解体作業場のヤスさんに話を聞きに行こう!」

待ちきれないとばかりにアークの袖を引っ張るノアに、サブギルマスのリューズが紙の包みを渡した。

「今食べてたクッキーをお土産にどうぞ」
「---っありがとうございます!」
「良かったな、ノア」
「うん、嬉しい。幸せ」
「ほら、じゃあ早く解体作業場に連れて行ってやれ。リューズ、頼めるか?」
「了解しました。ノア殿、こっちですよ」
「はーい」

わくわくしながらリューズに付いていく様子がなんか・・・。

「お出かけを楽しみにしている子供と引率の先生みたいだな」
「確かに」

ギルマスのケインとアークは密かに笑っていた。



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