113 / 534
109 恒例の?ギルマスとのご対面の儀
しおりを挟むギルマスの執務室に案内されて来たアークとノア。
ギルド職員がお茶とお茶請けを用意し、丁寧にもてなしてくれた。
---さっきの受付職員とは雲泥の差だな。
まあ、アレがどうなろうと俺達の知った事じゃ無いが。
・・・実はノアへの悪感情に敏感に反応して塩対応のアークである。
「ようこそ、要塞都市ライズへ。私はここのギルドマスターのケインと言う。こちらはサブギルマスのリューズだ」
「リューズです。よろしくお願いします。先ほどは受付職員が失礼致しました。アレは私の遠縁で無理矢理・・・コホン、仕方なく・・・えー、まあ、とにかく仕事が出来なくて、申し訳ありませんでした」
サブギルマスの言い様に事情を察したアークは苦笑しながら、気にするなと応える。
そっちで色々と手を打つのだろうし。
「?」
キョトンとしているノアは相変わらず分かってないから、このまま流そう。
「まあ、騒がれる前に顔出ししただけなんで特に用は無いんだが、何かあれば滞在中なら協力することも出来るから、その時は連絡をくれ。受けるかどうかはその時次第だが」
「それでも助かる。宿は何処に?」
「『黄金の角』だ。今のところ一週間先払いしてある。ここには迷宮が無いんだよな? だからクエストを受けるか勝手に討伐するかになるんだが・・・」
そういってノアを見る。
「? 俺は別に、素材収集が出来れば特に問題ないけど。・・・あっ、防寒具の素材って何が良いんだろう?」
「---神聖な霊山にいく気か? なら、下の解体作業場に行ってみな。解体リーダーのヤスって厳ついヤロウが素材に詳しい」
「ありがとうございます! 行ってみます!」
ぱあっと顔が綻んで、アーク達は思わずほのぼのとした。
「ノア、せっかくだからお茶とお茶請けに手をつけたら?」
「ん、頂きます。・・・・・・んん? クッキーに木の実が・・・なんの実だろう? 美味しい」
「あ、それはですね、私が焼いたんですが・・・」
「え? 本当ですか? あの、作り方って教えて貰えたりなんかは・・・・・・?!」
「もちろんです! 逆に良いんですか、こんなもので・・・?」
「美味しいものに『こんなもの』なんて関係ないです。是非是非教えて下さい!」
サブギルマスのリューズがノアにクッキーのレシピを教えてくれている間に、ギルマスのケインと小声で『見守り隊』の情報を交わす。
『このギルドはさっき言った馬鹿職員以外、全員入隊している。もちろん今言った解体作業場の連中もだ』
『ここのギルド職員はかなりの人数がいると思うが、管理しきれるのか?』
『各部署毎に部隊長を決めてまとめている。抜かりは無いよ』
『・・・了解』
そんな話をしていたら、レシピをメモし終えたらしいノアが黙々とクッキーを消費していた。
気付けばノアの皿が空になっている。
「俺のも食うか?」
「---良いの?!」
アークが自分の皿を勧めたら、ぱあっと嬉しそうに笑ってクッキーの皿を自分の膝に載せてサクサクと頬張った。
---。
「・・・リスみたいだな?」
「頬がぽっこり。可愛い」
「・・・半分兎人だからな。小動物っぽいよなぁ・・・」
「「え?! 兎人なのか?!」」
思わずギルマスと二人で叫んだ。
「一応竜人と黒兎人の混血な」
「・・・・・・一応? ・・・いや、突っ込まないよ?!」
アークがニヤリと笑う。
いくら隊員でも、ヤバい情報は知りたくないよ?!!
そうこうしているうちに綺麗に平らげてお茶も飲んだノアが、アークに声をかけた。
「お話済んだ? じゃあ、解体作業場のヤスさんに話を聞きに行こう!」
待ちきれないとばかりにアークの袖を引っ張るノアに、サブギルマスのリューズが紙の包みを渡した。
「今食べてたクッキーをお土産にどうぞ」
「---っありがとうございます!」
「良かったな、ノア」
「うん、嬉しい。幸せ」
「ほら、じゃあ早く解体作業場に連れて行ってやれ。リューズ、頼めるか?」
「了解しました。ノア殿、こっちですよ」
「はーい」
わくわくしながらリューズに付いていく様子がなんか・・・。
「お出かけを楽しみにしている子供と引率の先生みたいだな」
「確かに」
ギルマスのケインとアークは密かに笑っていた。
297
お気に入りに追加
7,357
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶のみ失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる