迷い子の月下美人

エウラ

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82 昇級試験と迷宮探索 3

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「今日はとりあえず、10階層に転移して下を目指そう。今日は二人でどんどん潜るぞ。もちろん戦闘もガンガンいくぜ」
「昨日は不完全燃焼だったもんね」

昨日と同じく北門に向かいながら今日の予定を話す。
予定と言っても、30階層を目指しながら魔物を倒す・・・くらいだが。

「今日は宿に言ってないから日帰りだが、明日以降は迷宮に泊まりで潜ってもいいな」
「そうだね、早くリヴァイアサンと戦いたい。龍玉以外のドロップもあるのかなあ」
「何かしらあるんじゃねえの?」
「あると思いたい」

もし誰か冒険者がこれを聞いていたら『ちょっとソコまで』的なノリの会話に耳を疑っただろうが、幸いというか、辺りに人気は無く、ただの雑談で終わった。

そうこうする内に北門を出て、昨日は歩いた道を今日は駆ける。
時間がもったいないからだ。

結果、定期乗合馬車を途中で追い越し、先に迷宮に着いてしまった。

偶然居合わせた馬車の乗客がポカンとしている間に一瞬で過ぎ去って行ったが。

「---あ、おはよう御座います。今日は早いんですね」

昨日もいたギルド職員が挨拶をしてくれた。

「ああ、ノアがSランク昇級試験を受けたので、さっさと30階層に行きたいんだ」
「へえ、昇級試験を---昇級試験?! ぅ、受けたのですか?! を?!」
「知ってるんだ? そう。受けたの。応援してね?」

ノアが無自覚にそういって、職員達は皆、応援する事を心の中で思った。

「てな訳で、今日は行けるところまで行くつもりだが、一応夕方には戻ると思う」
「分かりました。お気を付けて!!」
「行ってくるね」

ノアが手を振り、職員も振り返した。


入口で水晶に触れ、10階層まで転移して辺りを窺うと、今日は海では無く、草原地帯だった。

「やっぱり、昨日たくさん魚介類ドロップしておいて正解」
「・・・・・・そうだな」

ノアの発言にアークも気が抜ける。
開口一番、それか。
ノアらしいが。

辺りを探索すると、主に角兎ホーンラビットとオーク、ウルフだった。
今回は雑魚レベルである。

威圧を出した途端、さあっと波が引くように消えていった。

「剣の錆にもならねえな」
「そうだね。先に進もう」

アークとサクサク進んであっと言う間に11階層に下りた。
そこは遺跡のような場所だった。
森の中に点在する遺跡が魔物を隠しているようだが、二人には魔法を使うまでもなく気配で分かる為、意味が無かった。

「ここはリザードや虫系がいるな」
「装備や装飾品になりそうな魔物だね。食材には向かなそう」
「ぶっ・・・」

---だからノア、直ぐに食べ物や素材に思考が向くのヤメロ。

ツボって笑っちゃうんだよ!
ノアらしくて良いんだけどね!
俺、その内、魔物を見ると『○○肉だ』とか速攻変換しそうでちょっとイヤだ。

普通は、何処が弱点とかどうやって倒すとか考えると思うんだよな。


その後の階層もさほど問題は無く、あっさりと20階層まで着いてしまった。

転移魔法陣を踏んで地上に戻る。

時間はまだ昼前。
また20階層に飛んで、とりあえずお昼ご飯を出して食べる。

「この後、様子を見ながらもっと下に行こう」
「ん。もう少し強いヤツいるかなあ。手応えが無いね」
「そうだな。俺も全然動き足りない」
「どんな魔物が出たら手応えありそう?」

ノアに聞かれて考える。

「うーん、せめてゴーレムとか? ソレも岩や鉄とかじゃ無くて魔導銀ミスリル辺りかなあ。でも数が少ないと直ぐに戦闘終わっちゃうからなあ・・・」
「魔導銀!! いるかなあ。欲しいな、ドロップアイテム。加工しやすいんだよね、アレ。魔力伝道効率がめちゃくちゃ高くって使いどころがいっぱいあるんだよ」
「---へえ・・・」

ノアに返事をしながらアークは思った。

---ノア、そういうのっていうんだぜ?


二人は、この迷宮が意思を持っているのでは?と疑ったことを忘れていた。


この後、それを実感する事になる・・・・・・。










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