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75 いざ、初飛行!
しおりを挟むノアの背中には間違いなく金色の翼がある。
ノアはぱたぱたと動かしていた。
竜の特性が目覚めたのか、本能で飛び方を理解しているようだった。
「なんか飛び方も知ってる気がする」
「あ、ああ。多分飛べるから、とりあえず地面の上で練習してみてくれ」
「分かった」
そういってふわりと浮くノア。
その様子を見ながら思う。
---確かに金色の翼だった。
竜人の翼は本来の竜の色を表す。
だから俺は銀竜で銀色の翼で、これが赤竜なら赤い翼になる。
しかし金色とは・・・。
今現在存在しない色だ。
金竜は過去において絶滅したと言われている。
ノアの髪が黒いからてっきり黒竜かと思い込んでいたが。
---ノアの父親が幻の金竜?
いやでも、精霊王の魔力で金色になってしまっているだけなのかも・・・。
考えたが答えは出ず、すいすい飛べるようになったノアを呼んで、一旦休憩する。
「凄いね、これなら水の上でもすいすい移動できるよ」
「まあ、こういうエリアか緊急事態以外は出さない方がいい。見られると結構騒がれて煩いぞ」
「・・・それはいやだ。・・・あ、隠蔽魔法で翼だけ隠す?」
「いや、隠すなら全身にしないと返って目立つだろう」
渋い顔で言うノアに突っ込みをして、とりあえずは俺といるときだけということにした。
トラブルを招きかねんからな。
「それでどうしようか」
ノアが聞きたいのは、先に進むかここで暫くドロップさせてるか、だな。
「そうだな。ノアの翼の件で時間も食ったし、もう少しドロップアイテムを目当てにここで討伐したら帰るか」
「食材出るかなあ?」
「・・・他にはないのか? 錬金の素材とか」
「次に入るときにエリア変わってたらしょうがないもの。今のうちにドロップさせよう!」
どうあっても今は魚介類らしい。
ノアの手料理なら何でも美味いが、今日は海鮮料理かな?
苦笑しつつも番いに甘いアークだった。
思ったよりも食材をドロップしたのは迷宮がノアの気持ちを汲んだのか・・・と思わなくもないが、満足したようなので上の階に戻ろうとしたところで、海の向こうから凄い速さでこちらの岸を目指して飛んでくる冒険者を認めた。
「ノア、フード被ってこっちへ」
「・・・ん」
人見知りのノアを庇って安全な場所へ移動すると、爆音が聞こえそうな勢いで砂浜に突っ込んだ。
・・・二人の内の一人、剣士らしき方が。
頭をズボッと引っこ抜いてもう一人の方に怒鳴った。
「---お前ねえ! いっつも言ってんだろうが! 魔力操作が雑なんだよ!」
「お兄は頑丈だから平気平気」
「な訳ねえだろうが!」
「現に今もピンピンしてる」
「---はああ、ああ言えばこう言う・・・ったく」
喧嘩のようだが、どちらかというと悪ふざけの戯れのようだ。
放って置いても大丈夫だろうと、ノアと階段に向かっていると、アーク達に気付いた剣士の方が声をかけて来た。
「よう! 何処の誰かは知らねえが、上に戻るなら一緒に行こうぜ!」
ニカッと白い歯を見せて笑って言った。
「お兄、唐突すぎ。相手が戸惑ってるよ。すみません、おバカな兄で」
「うおい!」
また掛け合いが始まりそうになって顔を向けたら、二人共見事な深い赤髪に緑目だった。
魔導師の方はノアと違ってアークに近い体格で、ローブを纏ってはいるが普通に接近戦も出来そうな感じだ。
入り口で職員に聞いた特徴に似ている。
「---あんたら、もしかしてギギとルル兄弟か?」
「・・・お? 知ってんの?」
「ああ。ギルドでここに詳しい冒険者って教えて貰った。会えたのはラッキーだったな」
「へええ、もしかして初めてでここまで来たのか?! 凄えな!」
やや興奮気味に距離を詰めてきた剣士にビクッとして、ノアがアークの背中に隠れてぴるぴるしていたのに気付いた魔導師。
「とりあえず上の安全地帯に行ってから話をしようよ。そっちの・・・恋人? 番い? ちょっと落ち着かなさそうだし」
そう気を遣ってくれた。
「ああ悪い。番いだ。人見知りなんだ」
「じゃあ早く戻ろう」
「おう!」
「・・・ん」
そういって四人は上の安全地帯に向かった。
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