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73 『深緑』 2(sideグリューン達)
しおりを挟む過去最高難易度の階層に唖然とする俺達は、一歩も動けなかった。
ただただ目の前の光景に呆然としながら話をしていたら、イケメンさんがコッチに向かって歩いてきた。
「よお。さっきぶり。あんたら、この先に行くのか? 結構ヤベえぞ、ココ」
だよなぁ・・・・・・。
今回は諦めるかとそんな話をして自己紹介をしていたら、ノアと紹介されたアークの番いさんがやって来た、が人見知りだということで、離れたところでぴるぴる・・・・・・。
「・・・・・・ほああ・・・可愛いねえ・・・・・・」
エメルの声に皆がうんうん頷いた。
可愛いは正義!!
ノアが一緒に行こうと提案してくれて、更には二人のランクを聞いた俺達は、ノアからの提案に乗っかった。
普段なら絶対に進むことのない死地へと向かう道程だが、この二人にとってはなんてことない散歩のようだった。
だって、威圧だけでPT組んでも倒せないような魔物が逃げていくんだぜ?
今回ばかりはエメルの鈍感さが羨ましい。
俺達に向かってないとはいえ、刺すような殺気の籠もった威圧が二倍・・・。
さすがに肌がピリピリするような感覚がある。
他の二人も感じていたんだろう。
無事に三階層に着いたときには解除されて、あからさまにホッとしてしまった。
そうして三階層・・・。
岩エリアだった。
ということは、経験上アレが出る。
「ここは岩系と虫系が多いと思う」
そう言うと、エメルはもの凄く嫌そうな顔をした。
うん、虫大嫌いだもんな。
でも仕方ないだろうと思っていたら、ノアがまさかの男前発言をした。
「俺が全部やっつけてあげるよ」
エメルはギャップ萌えでテンション上がったようだ。
「大丈夫なのか?」
そういって聞けば、エイダンの先の上級迷宮でソロで何度もボス戦してるって・・・?!
「多分、オーバーキルだ」
アークの遠い目で、一体ノアはどれだけ凄いんだとビビっていたら・・・。
---ヤバい。
ナニアレ、岩が溶けるってどんだけ高熱・・・?!
はあ?!
『インフェルノ』?!
何で殲滅魔法ここで使った?!
しかも無詠唱だったよねえ?
「・・・・・・ごめん。次はもう少し威力を下げる」
いやいや、別の魔法の選択肢はないんかい?!
少し経った頃、ノアが言った。
「俺、学習した。火よりも凍らせた方が被害が少ない」
そういって『アブソリュート・ゼロ』で辺り一面氷漬け。
広範囲の『レイン』からの『サンダー』で感電死、という有り得ない程の魔法の無駄遣い(笑)で殲滅していった。
お陰でエメルはもとより俺達も大いに助かったんだが。
結局、スムーズに五階層まで進み、安全地帯で昼休憩を取った。
その後も問題なく進んであっと言う間に十階層に到達し、何泊か予定していた俺達は嬉しい誤算で喜んでいた。
だから気が緩んでいたのかもしれない。
ノアが俺達のことをキョトンとして言ったのだ。
「グリューンってスカイの事、好きだよね? シンはエメルと恋人じゃないの?」
「え”」
「ほあ?!」
俺とエメルはヘンな声を出し、スカイとシンは声が出なかった。
「---少し黙っていような」
ノアはアークに口を塞がれてシュンとしていたが、スマン。
フォローする余裕がない。
何となーく気まずい雰囲気のまま転移魔法陣で入り口に戻った俺達は、ここで別れることにした。
「---あーと、その、何だ・・・・・・」
俺が話を切り出すと、ぎこちない仕草で皆がこちらを向いた。
「・・・・・・その、俺は、スカイが好きだ! その、断ってくれても良いけど、PTメンバーだからギクシャクしたくなかっただけで、ずっと、好きだった!」
「・・・・・・俺も、グリューンが好きだ。ずっと・・・・・・言えなくて、でも、ノアが指摘してくれて、もしかしてって嬉しくて・・・その」
スカイがめちゃくちゃ喋ってる!
俺のことを話してる!
「---! スカイ、恋人になってくれ!」
「・・・・・・うん」
何という幸運!
ヒャッホイ!
そんな俺達の傍らで、シンがエメルに告白をしていた。
「エメル、俺もずっと好きなんだ。明るくて可愛いエメルが大好きなんだ。俺に君を護らせてくれ」
「ぼ、僕も、何時もシン格好いいなって・・・今日も抱き上げてくれた時ドキドキして・・・・・・」
「恋人になってくれるか?」
「も、もちろん! 嬉しい!」
その後、宿に戻ってお互いの愛を確かめあって幸せな時間を持った。
それもこれも、アーク達に出会えた幸運のお陰だな。
十階層にも行けたし、お互い恋人同士になれた。
『深緑』PTメンバー全員、ノア達に感謝を捧げた。
「次に会ったら御礼を言わないとな」
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