迷い子の月下美人

エウラ

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44 ノリノリで誘いに乗ってみた

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「---で、結局なんの話だったんだっけ?」

落ち着いた頃、ノアがぽつんと呟いた。

そうだった。肝心な事を忘れていた・・・。
思いがけずお互いの愛を確かめ合って浮かれていたようだ。

「精霊の事だ。ノアがここ数日寝不足の原因」
「ああ、そっか。それでどうするって話だった。・・・どうするの?」

首をコテンと傾げる仕草が可愛いな、おい。

「それなんだが、夜に精霊達がこのテントに集まってくるとノアは外に出ようとするんだ。だからこのまま起きていて、精霊達が来たら俺と外に出てテントをしまって精霊達に着いて行こうと思う」
「分かった。じゃあ装備はこのままでいいね」
「おそらく精霊達にノアを傷付ける意図は無いだろうが、魔物とかの危険はあるからな」

頷いて装備の確認をするノア。
アークも念の為確認し、細かい打ち合わせを続けた。

絶対に離れないつもりだが、万が一に備えて合流する手段を用意しようという話になり、ノアがお互いの腕輪に魔石を足して魔法を付与するというので、いったん外してノアに預けた。

「どうするんだ?」

アークが興味津々で覗き込む。

「互いの位置を表示して周囲を探索するんだ。近ければ地図に表示されるし、遠かったら方角を示すようにする。念の為に他人には見えないようにするね」
「地図が浮かび上がるって事か?」
「そう。魔力量で範囲が広がるようにするから、かなり離れてもイケると思う」

それを聞いてちょっと口元を引きつらせてアークが聞いた。

「・・・ちなみにどのくらいの範囲を想定しているんだ?」
「うーん、エイダンの街から今向かってるオーガスタの街くらい?」

---それは普通なのか?
いやたぶん俺達なら余裕な魔力量だろうが・・・。

時々ノアの基準が分からなくなる。
いや、どんなノアでも愛してるが・・・俺の出番要るかなってたまーに思うんだけど。

・・・お爺さん、最低限の常識くらい教えておいて欲しかったな。

ウキウキと錬成するノアを尻目に見て、アークはちょっと遠い目をしていた。



そうして出来上がった腕輪の確認を済ませて待っていると、やって来た精霊達。

「・・・・・・うわ、毎晩こんな状態だったの?」

テントの周りが昼間のように眩しい。
どれ程集まればこうなるのか・・・。

「見えないヤツには何も変わったところは無いが、視える俺達にとっては安眠妨害レベルだろう?」
「うわあ・・・・・・なんか、ごめんなさい?」

何に対してか分からないが、何となく謝りたくなるレベルでウザい。
ごめんなさい、精霊さん達。
でもウザい。

「じゃあ予定通り、行くぞ」
「了解」

ノアはアークとしっかり手を繋いでテントの外に出た。
直ぐさまテントをインベントリにしまう。

結界が消えた事により、下位精霊がウワッと纏わり付いてきた。
そこに中位精霊も加わって、声が聞こえた。

《ノア、ノア。待ってた》
《待ってる。皆の所へ行こう》
《案内するよ》

ノアはアークと見つめ合って頷く。

「うん。行こう、その待ってる人の所へ。でもアークも一緒だよ。俺の番いなんだ」
「一緒にいいか? まあ駄目って言われても行くけどな」
《大丈夫。番い、一緒》
《主様、待ってた。番い、嬉しい》
《一緒、一緒。さあ、コッチ》

---って・・・・・・。



二人は言いかけた言葉を呑み込んで精霊達の後を着いて森に入っていった。

野営をしていたここはまだ普通の森だったが、精霊に続いて足を踏み入れると、空気が変わった。
一瞬で古の森に移ったようだ。

そこで、長いようで短い、不思議な感覚が精霊達の周りに流れて、瞬き一つで見知らぬ場所へと辿り着いていた。


「---え?」

ノアは思わず間抜けな声を上げた。

「ノア? どうした?」
「・・・どうして? この場所、憶えてないのに知ってる・・・?」

来たことなど無いはずなのに、体が知っているようだ。


《それは其方が我の魔力をその身に宿しておるからだよ》

不意に聞こえた静かで柔らかい声に振り返ると、そこにはこの世のモノとは思えない美貌の精霊が立っていた。

《よくぞ還ってきた。我が愛し子。我は其方の父であり、母である》

「---あなたは・・・」
「・・・まさか・・・」

ノアもアークも驚愕の顔だった。
その精霊は柔らかく笑んで言った。



《我は精霊王だ》



---やっぱり---!!!








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