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43 ささやかな夢と愛しいあなた
しおりを挟むきゅるるる~。
「・・・・・・ん?」
夕方、しっかりと眠れたらしいノアの腹の虫で目が覚めたアークは、自身の腕の中で耳を真っ赤に染めたノアに気付いた。
「おはよう?」
「---お、おはようぅ・・・・・・」
「良く眠れて腹も減ったようだな。良いことだ」
「・・・・・・うん。一緒に寝ててくれてありがとう、アーク。ご、ご飯食べよう!」
恥ずかしくてガバッと起きたノアを笑いながらアークもベッドから降りた。
ノアはさっさと台所に向かっていった。
可愛い。
ノアはどうやらだいぶ回復したようで、スッキリとした顔をしていた。
少し前まではあんまり食欲も無くて食べてなかったし。
そのお陰か、夕御飯はかなりしっかり食べていた。
良かったとホッと一息つくアーク。
「心配かけちゃってたね、ゴメン」
「良いって。原因の一つは分かってるし」
「---へ?」
「・・・・・・気付いて無さそうだとは思っていたが、マジで分かってなかった・・・」
アークがガックリと肩を落とす。
「え? え? 何々何の事?!」
ノアが慌ててアークを揺する。
普段じゃビクともしない体がガクガク揺れて、揺らしてる本人は更に焦った。
「アーク! 死なないで---!」
「・・・・・・ぷ、死なねえよ・・・くくっ・・・」
「・・・・・・アーク?」
今度は肩を震わせてぷるぷるしているアークに困惑するノアだった。
「---つまり、エイダンを出てから俺が感じていた違和感は精霊のせいだと・・・」
はあ、と溜息を吐くノア。
ここ数日の自分の様子を客観的に見てもおかしいとは思っていたが、まさかそんなことになっていたとは・・・。
「夜中に起きて出ていこうとしてるのは憶えて無いんだな?」
「---全く。たぶんその時は夢を見てたと思う」
「---どんな夢だったか聞いても・・・?」
アークに聞かれて、ノアはちょっと躊躇った。
「ノア? 憶えてないなら別に良いんだが」
「・・・・・・った」
「ん?」
「---見たこと無い薬草がたくさん生えてる草原をアークと歩いてる夢だったの!」
アークがポカンとした。
珍しい。
ノアは照れているのか真っ赤な顔で言った。
「なんか、綺麗な光が照らしてくれて、俺、アークと手を繋いでその光に向かって・・・そうしたら可愛い花をつけたたくさんの薬草があって嬉しくて、アークと、幸せだなって・・・」
そんな、大層な夢じゃ無かったけど、幸せだなって思ったんだ。
俺、植物好きだし、好きなモノに囲まれて、大好きなアークがいて、幸せだなって・・・そんな夢だった。
まさか起きてうろうろしてたなんて・・・。
「・・・・・・そっか、ノアは本当に薬草の事になると凄いもんな。そんな大好きな薬草と同じくらい俺の事も好きでいてくれたんだな」
「---!! ちち違うよ?! アークが一番だよ! 今はもう、アークが世界で一番大好きだよ!」
ふっと笑って言ったアークに慌てて言い募ったら、アークは破顔した。
「大好きな薬草よりも俺を好きなんだ。嬉しいよ、ノア。俺もノアを世界一愛してる」
「---っアーク、俺、一番あ・・・あい、愛してる・・・!」
言ってからぶわっと顔が熱くなったのが分かった。
「はは、ありがとう。ノアが俺を一番好きでいてくれて」
そういって抱きしめてくれたアークにノアも必死にしがみついた。
「俺はどんなノアでもお前が好きだ。愛してる。それは死んでも変わらない。憶えておいて」
「・・・っ俺も、アークがどんなアークでも、死んでも愛してる」
意図せず互いの想いを確かめ合ったのだった。
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