45 / 534
41 古(いにしえ)の森
しおりを挟む
※前半、説明文が多いです。
なんだかんだと、結局一週間ほど滞在したエイダンの街を後にして、俺達は再び北を目指すべく次の街へと向かった。
その街はこの国の北の端っこに位置するらしく、隣国との境に広大な森があるところだそうだ。
その森は神聖な霊山の麓にまで続いているそうだ。
その遙か彼方にアークの故郷である浮遊島があるのだろうか。
ここからでは全く見えないが。
竜王国以外は不可侵領域となっているその森は遙か昔から存在し『古の森』と呼ばれ、強大な魔獣がいるとか精霊が棲まうとか言われている。
冒険者も浅いところはたまに入るがほとんど前人未踏の森だそう。
少しでも深く入り込むと精霊に惑わされて生きては出られない・・・と言われている。
アークのような竜人は精霊とは『良き隣人』の関係だそうで、竜人の血を引いている者は古の森に入ることが出来るそうだ。
そして森には実際に精霊が棲んでいる。
中位精霊以上は人型をとり、古の森から出ることはほとんど無いそうだ。
だが下位精霊は割とそこら辺に漂っているとのこと。
精霊は魔力の塊で自然発生するとか、精霊王が生み出しているとか言われている。
故に通常の種族の繁殖行為は無いとも。
魔力が尽きれば消え去る存在とも。
眉唾ものだが、魔力量で位が決まり上位になるほど美しい実体を持つ人型になるそうだ。
そもそも下位精霊は小さく光る玉のようだから存在自体俺達とは違うのだろう。
「俺は上位の精霊に会ったことがあるが、意思疎通も出来たし、確かに綺麗だったな。森の中にある泉に棲んでいた水の精霊だった」
そう語るアーク。
「へえ。俺も見てみたいな」
「まあ、会おうと思って会えるもんじゃ無いけどな」
ただ一人存在するという最上位の精霊王の姿は長寿の竜人でも視たことが無い。
おそらく精霊王は不老不死だろうと言われている。
あの街からほとんど出なかったから気付かなかったけど、そういえば目端に小さい光が良く見えていたなあ。
アレが下位精霊。
さすがアーク。竜人だけあって詳しいな。
為になった。
そんな話を聞いたからだろうか・・・。
---なんだろう。
何故か森に惹かれてる気がする。
薬草? 素材?
それとも、本能的な何か・・・・・・。
「ノア?」
俺がうわの空だったのに気付いていたんだろうか、アークが俺を呼んできゅっと抱きしめてきた。
「・・・ゴメン、ぼーっとしてた」
「・・・・・・今日はここらでテント出して休もうか。急ぐ旅ではないしな」
「うん、そうだね」
俺達は平らな所を見つけてテントを出し、少し早いが中で夕御飯の支度を始めた。
「次の街までは歩いて10日ほどかかるが、道は整備されていて馬車も良く通るし、小さいが村も幾つかあって集会所に泊めて貰えたりするようだよ。まあ、国境付近にわざわざ行くのは冒険者か商人くらいだから宿泊施設なんて割に合わないから仕方がない」
「そうか。まあ俺達にはテントがあるし、肉は狩ればいいしね」
スープを煮込みながらアークに応える。
応えながらも先程の違和感が拭えなくて思考が散漫になる。
---駄目だな。
今日は早く休もう。
落ち着かない気持ちで夕御飯を食べる。
アークは俺のいつもとは違う様子に何か思う所があったのだろうが、特に詮索もせずにいつも通りに二人で風呂に入ってベッドに横になった。
---眠れない。
こんなの久し振りだ。
どうしよう、どうやったら眠れるんだっけ?
ついこの間までは独りが当たり前だったのに。眠れない夜も独りで過ごしていて・・・。
辛い、寂しい、嬉しい、哀しい・・・。
色んな感情が胸の内に広がって、俺をザワつかせる。
自分じゃ制御できない気持ちが溢れてくる。
どうしよう。
---アーク・・・・・・。
泣きたくなんかないのに涙が溢れてくる。
どうしよう。
どうしたら・・・・・・。
「気にしないで泣けばいい」
「っ・・・あ・・・く」
背後から抱きしめられる。
『俺はココにいるぞ』と言うように。
「---ん・・・」
なんで泣きたいのかも良く分からないまま、俺はぽろぽろと涙を零しながら、アークに向き直って抱きついた。
アークもぎゅっと抱きしめ直してくれた。
俺もぎゅぎゅっと抱きしめ返した。
そうして暫く抱き合って泣いていたら、アークの体温にホッとしたのか、泣いて気が済んだのか・・・。
力が抜けて、ノアは寝息を立てていた。
アークは無言で眠ったノアの髪を優しく梳く。
・・・・・・テントの結界の外には無数の下位精霊。
ほとんど言葉を話さない下位精霊は形を持たないモノが多い。光る玉のようにふよふよ浮いて漂っている。
大概の者には視えないソレが、大量に結界に沿ってへばりついている状態で。
視えるタチである竜人には昼間かと思うほど光って見えて、正直安眠妨害で鬱陶しい。
いくら古の森に近づいているとはいえ、この数は異常だ。
---そのうち大物が来るかな。
「まさかなあ・・・・・・」
ノアに意識が向いていたアークは知らずにフラグを立てていることに気付かなかった。
なんだかんだと、結局一週間ほど滞在したエイダンの街を後にして、俺達は再び北を目指すべく次の街へと向かった。
その街はこの国の北の端っこに位置するらしく、隣国との境に広大な森があるところだそうだ。
その森は神聖な霊山の麓にまで続いているそうだ。
その遙か彼方にアークの故郷である浮遊島があるのだろうか。
ここからでは全く見えないが。
竜王国以外は不可侵領域となっているその森は遙か昔から存在し『古の森』と呼ばれ、強大な魔獣がいるとか精霊が棲まうとか言われている。
冒険者も浅いところはたまに入るがほとんど前人未踏の森だそう。
少しでも深く入り込むと精霊に惑わされて生きては出られない・・・と言われている。
アークのような竜人は精霊とは『良き隣人』の関係だそうで、竜人の血を引いている者は古の森に入ることが出来るそうだ。
そして森には実際に精霊が棲んでいる。
中位精霊以上は人型をとり、古の森から出ることはほとんど無いそうだ。
だが下位精霊は割とそこら辺に漂っているとのこと。
精霊は魔力の塊で自然発生するとか、精霊王が生み出しているとか言われている。
故に通常の種族の繁殖行為は無いとも。
魔力が尽きれば消え去る存在とも。
眉唾ものだが、魔力量で位が決まり上位になるほど美しい実体を持つ人型になるそうだ。
そもそも下位精霊は小さく光る玉のようだから存在自体俺達とは違うのだろう。
「俺は上位の精霊に会ったことがあるが、意思疎通も出来たし、確かに綺麗だったな。森の中にある泉に棲んでいた水の精霊だった」
そう語るアーク。
「へえ。俺も見てみたいな」
「まあ、会おうと思って会えるもんじゃ無いけどな」
ただ一人存在するという最上位の精霊王の姿は長寿の竜人でも視たことが無い。
おそらく精霊王は不老不死だろうと言われている。
あの街からほとんど出なかったから気付かなかったけど、そういえば目端に小さい光が良く見えていたなあ。
アレが下位精霊。
さすがアーク。竜人だけあって詳しいな。
為になった。
そんな話を聞いたからだろうか・・・。
---なんだろう。
何故か森に惹かれてる気がする。
薬草? 素材?
それとも、本能的な何か・・・・・・。
「ノア?」
俺がうわの空だったのに気付いていたんだろうか、アークが俺を呼んできゅっと抱きしめてきた。
「・・・ゴメン、ぼーっとしてた」
「・・・・・・今日はここらでテント出して休もうか。急ぐ旅ではないしな」
「うん、そうだね」
俺達は平らな所を見つけてテントを出し、少し早いが中で夕御飯の支度を始めた。
「次の街までは歩いて10日ほどかかるが、道は整備されていて馬車も良く通るし、小さいが村も幾つかあって集会所に泊めて貰えたりするようだよ。まあ、国境付近にわざわざ行くのは冒険者か商人くらいだから宿泊施設なんて割に合わないから仕方がない」
「そうか。まあ俺達にはテントがあるし、肉は狩ればいいしね」
スープを煮込みながらアークに応える。
応えながらも先程の違和感が拭えなくて思考が散漫になる。
---駄目だな。
今日は早く休もう。
落ち着かない気持ちで夕御飯を食べる。
アークは俺のいつもとは違う様子に何か思う所があったのだろうが、特に詮索もせずにいつも通りに二人で風呂に入ってベッドに横になった。
---眠れない。
こんなの久し振りだ。
どうしよう、どうやったら眠れるんだっけ?
ついこの間までは独りが当たり前だったのに。眠れない夜も独りで過ごしていて・・・。
辛い、寂しい、嬉しい、哀しい・・・。
色んな感情が胸の内に広がって、俺をザワつかせる。
自分じゃ制御できない気持ちが溢れてくる。
どうしよう。
---アーク・・・・・・。
泣きたくなんかないのに涙が溢れてくる。
どうしよう。
どうしたら・・・・・・。
「気にしないで泣けばいい」
「っ・・・あ・・・く」
背後から抱きしめられる。
『俺はココにいるぞ』と言うように。
「---ん・・・」
なんで泣きたいのかも良く分からないまま、俺はぽろぽろと涙を零しながら、アークに向き直って抱きついた。
アークもぎゅっと抱きしめ直してくれた。
俺もぎゅぎゅっと抱きしめ返した。
そうして暫く抱き合って泣いていたら、アークの体温にホッとしたのか、泣いて気が済んだのか・・・。
力が抜けて、ノアは寝息を立てていた。
アークは無言で眠ったノアの髪を優しく梳く。
・・・・・・テントの結界の外には無数の下位精霊。
ほとんど言葉を話さない下位精霊は形を持たないモノが多い。光る玉のようにふよふよ浮いて漂っている。
大概の者には視えないソレが、大量に結界に沿ってへばりついている状態で。
視えるタチである竜人には昼間かと思うほど光って見えて、正直安眠妨害で鬱陶しい。
いくら古の森に近づいているとはいえ、この数は異常だ。
---そのうち大物が来るかな。
「まさかなあ・・・・・・」
ノアに意識が向いていたアークは知らずにフラグを立てていることに気付かなかった。
410
お気に入りに追加
7,357
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶のみ失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる