45 / 533
41 古(いにしえ)の森
しおりを挟む
※前半、説明文が多いです。
なんだかんだと、結局一週間ほど滞在したエイダンの街を後にして、俺達は再び北を目指すべく次の街へと向かった。
その街はこの国の北の端っこに位置するらしく、隣国との境に広大な森があるところだそうだ。
その森は神聖な霊山の麓にまで続いているそうだ。
その遙か彼方にアークの故郷である浮遊島があるのだろうか。
ここからでは全く見えないが。
竜王国以外は不可侵領域となっているその森は遙か昔から存在し『古の森』と呼ばれ、強大な魔獣がいるとか精霊が棲まうとか言われている。
冒険者も浅いところはたまに入るがほとんど前人未踏の森だそう。
少しでも深く入り込むと精霊に惑わされて生きては出られない・・・と言われている。
アークのような竜人は精霊とは『良き隣人』の関係だそうで、竜人の血を引いている者は古の森に入ることが出来るそうだ。
そして森には実際に精霊が棲んでいる。
中位精霊以上は人型をとり、古の森から出ることはほとんど無いそうだ。
だが下位精霊は割とそこら辺に漂っているとのこと。
精霊は魔力の塊で自然発生するとか、精霊王が生み出しているとか言われている。
故に通常の種族の繁殖行為は無いとも。
魔力が尽きれば消え去る存在とも。
眉唾ものだが、魔力量で位が決まり上位になるほど美しい実体を持つ人型になるそうだ。
そもそも下位精霊は小さく光る玉のようだから存在自体俺達とは違うのだろう。
「俺は上位の精霊に会ったことがあるが、意思疎通も出来たし、確かに綺麗だったな。森の中にある泉に棲んでいた水の精霊だった」
そう語るアーク。
「へえ。俺も見てみたいな」
「まあ、会おうと思って会えるもんじゃ無いけどな」
ただ一人存在するという最上位の精霊王の姿は長寿の竜人でも視たことが無い。
おそらく精霊王は不老不死だろうと言われている。
あの街からほとんど出なかったから気付かなかったけど、そういえば目端に小さい光が良く見えていたなあ。
アレが下位精霊。
さすがアーク。竜人だけあって詳しいな。
為になった。
そんな話を聞いたからだろうか・・・。
---なんだろう。
何故か森に惹かれてる気がする。
薬草? 素材?
それとも、本能的な何か・・・・・・。
「ノア?」
俺がうわの空だったのに気付いていたんだろうか、アークが俺を呼んできゅっと抱きしめてきた。
「・・・ゴメン、ぼーっとしてた」
「・・・・・・今日はここらでテント出して休もうか。急ぐ旅ではないしな」
「うん、そうだね」
俺達は平らな所を見つけてテントを出し、少し早いが中で夕御飯の支度を始めた。
「次の街までは歩いて10日ほどかかるが、道は整備されていて馬車も良く通るし、小さいが村も幾つかあって集会所に泊めて貰えたりするようだよ。まあ、国境付近にわざわざ行くのは冒険者か商人くらいだから宿泊施設なんて割に合わないから仕方がない」
「そうか。まあ俺達にはテントがあるし、肉は狩ればいいしね」
スープを煮込みながらアークに応える。
応えながらも先程の違和感が拭えなくて思考が散漫になる。
---駄目だな。
今日は早く休もう。
落ち着かない気持ちで夕御飯を食べる。
アークは俺のいつもとは違う様子に何か思う所があったのだろうが、特に詮索もせずにいつも通りに二人で風呂に入ってベッドに横になった。
---眠れない。
こんなの久し振りだ。
どうしよう、どうやったら眠れるんだっけ?
ついこの間までは独りが当たり前だったのに。眠れない夜も独りで過ごしていて・・・。
辛い、寂しい、嬉しい、哀しい・・・。
色んな感情が胸の内に広がって、俺をザワつかせる。
自分じゃ制御できない気持ちが溢れてくる。
どうしよう。
---アーク・・・・・・。
泣きたくなんかないのに涙が溢れてくる。
どうしよう。
どうしたら・・・・・・。
「気にしないで泣けばいい」
「っ・・・あ・・・く」
背後から抱きしめられる。
『俺はココにいるぞ』と言うように。
「---ん・・・」
なんで泣きたいのかも良く分からないまま、俺はぽろぽろと涙を零しながら、アークに向き直って抱きついた。
アークもぎゅっと抱きしめ直してくれた。
俺もぎゅぎゅっと抱きしめ返した。
そうして暫く抱き合って泣いていたら、アークの体温にホッとしたのか、泣いて気が済んだのか・・・。
力が抜けて、ノアは寝息を立てていた。
アークは無言で眠ったノアの髪を優しく梳く。
・・・・・・テントの結界の外には無数の下位精霊。
ほとんど言葉を話さない下位精霊は形を持たないモノが多い。光る玉のようにふよふよ浮いて漂っている。
大概の者には視えないソレが、大量に結界に沿ってへばりついている状態で。
視えるタチである竜人には昼間かと思うほど光って見えて、正直安眠妨害で鬱陶しい。
いくら古の森に近づいているとはいえ、この数は異常だ。
---そのうち大物が来るかな。
「まさかなあ・・・・・・」
ノアに意識が向いていたアークは知らずにフラグを立てていることに気付かなかった。
なんだかんだと、結局一週間ほど滞在したエイダンの街を後にして、俺達は再び北を目指すべく次の街へと向かった。
その街はこの国の北の端っこに位置するらしく、隣国との境に広大な森があるところだそうだ。
その森は神聖な霊山の麓にまで続いているそうだ。
その遙か彼方にアークの故郷である浮遊島があるのだろうか。
ここからでは全く見えないが。
竜王国以外は不可侵領域となっているその森は遙か昔から存在し『古の森』と呼ばれ、強大な魔獣がいるとか精霊が棲まうとか言われている。
冒険者も浅いところはたまに入るがほとんど前人未踏の森だそう。
少しでも深く入り込むと精霊に惑わされて生きては出られない・・・と言われている。
アークのような竜人は精霊とは『良き隣人』の関係だそうで、竜人の血を引いている者は古の森に入ることが出来るそうだ。
そして森には実際に精霊が棲んでいる。
中位精霊以上は人型をとり、古の森から出ることはほとんど無いそうだ。
だが下位精霊は割とそこら辺に漂っているとのこと。
精霊は魔力の塊で自然発生するとか、精霊王が生み出しているとか言われている。
故に通常の種族の繁殖行為は無いとも。
魔力が尽きれば消え去る存在とも。
眉唾ものだが、魔力量で位が決まり上位になるほど美しい実体を持つ人型になるそうだ。
そもそも下位精霊は小さく光る玉のようだから存在自体俺達とは違うのだろう。
「俺は上位の精霊に会ったことがあるが、意思疎通も出来たし、確かに綺麗だったな。森の中にある泉に棲んでいた水の精霊だった」
そう語るアーク。
「へえ。俺も見てみたいな」
「まあ、会おうと思って会えるもんじゃ無いけどな」
ただ一人存在するという最上位の精霊王の姿は長寿の竜人でも視たことが無い。
おそらく精霊王は不老不死だろうと言われている。
あの街からほとんど出なかったから気付かなかったけど、そういえば目端に小さい光が良く見えていたなあ。
アレが下位精霊。
さすがアーク。竜人だけあって詳しいな。
為になった。
そんな話を聞いたからだろうか・・・。
---なんだろう。
何故か森に惹かれてる気がする。
薬草? 素材?
それとも、本能的な何か・・・・・・。
「ノア?」
俺がうわの空だったのに気付いていたんだろうか、アークが俺を呼んできゅっと抱きしめてきた。
「・・・ゴメン、ぼーっとしてた」
「・・・・・・今日はここらでテント出して休もうか。急ぐ旅ではないしな」
「うん、そうだね」
俺達は平らな所を見つけてテントを出し、少し早いが中で夕御飯の支度を始めた。
「次の街までは歩いて10日ほどかかるが、道は整備されていて馬車も良く通るし、小さいが村も幾つかあって集会所に泊めて貰えたりするようだよ。まあ、国境付近にわざわざ行くのは冒険者か商人くらいだから宿泊施設なんて割に合わないから仕方がない」
「そうか。まあ俺達にはテントがあるし、肉は狩ればいいしね」
スープを煮込みながらアークに応える。
応えながらも先程の違和感が拭えなくて思考が散漫になる。
---駄目だな。
今日は早く休もう。
落ち着かない気持ちで夕御飯を食べる。
アークは俺のいつもとは違う様子に何か思う所があったのだろうが、特に詮索もせずにいつも通りに二人で風呂に入ってベッドに横になった。
---眠れない。
こんなの久し振りだ。
どうしよう、どうやったら眠れるんだっけ?
ついこの間までは独りが当たり前だったのに。眠れない夜も独りで過ごしていて・・・。
辛い、寂しい、嬉しい、哀しい・・・。
色んな感情が胸の内に広がって、俺をザワつかせる。
自分じゃ制御できない気持ちが溢れてくる。
どうしよう。
---アーク・・・・・・。
泣きたくなんかないのに涙が溢れてくる。
どうしよう。
どうしたら・・・・・・。
「気にしないで泣けばいい」
「っ・・・あ・・・く」
背後から抱きしめられる。
『俺はココにいるぞ』と言うように。
「---ん・・・」
なんで泣きたいのかも良く分からないまま、俺はぽろぽろと涙を零しながら、アークに向き直って抱きついた。
アークもぎゅっと抱きしめ直してくれた。
俺もぎゅぎゅっと抱きしめ返した。
そうして暫く抱き合って泣いていたら、アークの体温にホッとしたのか、泣いて気が済んだのか・・・。
力が抜けて、ノアは寝息を立てていた。
アークは無言で眠ったノアの髪を優しく梳く。
・・・・・・テントの結界の外には無数の下位精霊。
ほとんど言葉を話さない下位精霊は形を持たないモノが多い。光る玉のようにふよふよ浮いて漂っている。
大概の者には視えないソレが、大量に結界に沿ってへばりついている状態で。
視えるタチである竜人には昼間かと思うほど光って見えて、正直安眠妨害で鬱陶しい。
いくら古の森に近づいているとはいえ、この数は異常だ。
---そのうち大物が来るかな。
「まさかなあ・・・・・・」
ノアに意識が向いていたアークは知らずにフラグを立てていることに気付かなかった。
397
お気に入りに追加
7,359
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる