迷い子の月下美人

エウラ

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41 古(いにしえ)の森

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※前半、説明文が多いです。



なんだかんだと、結局一週間ほど滞在したエイダンの街を後にして、俺達は再び北を目指すべく次の街へと向かった。

その街はこの国の北の端っこに位置するらしく、隣国との境に広大な森があるところだそうだ。

その森は神聖な霊山セイクリッド・リョーゼンの麓にまで続いているそうだ。
その遙か彼方にアークの故郷である浮遊島があるのだろうか。

ここからでは全く見えないが。

竜王国以外は不可侵領域となっているその森は遙か昔から存在し『いにしえの森』と呼ばれ、強大な魔獣がいるとか精霊が棲まうとか言われている。

冒険者も浅いところはたまに入るがほとんど前人未踏の森だそう。

少しでも深く入り込むと精霊に惑わされて生きては出られない・・・と言われている。

アークのような竜人は精霊とは『良き隣人』の関係だそうで、竜人の血を引いている者は古の森に入ることが出来るそうだ。

そして森には実際に精霊が棲んでいる。

中位精霊以上は人型をとり、古の森から出ることはほとんど無いそうだ。
だが下位精霊は割とそこら辺に漂っているとのこと。

精霊は魔力の塊で自然発生するとか、精霊王が生み出しているとか言われている。

故に通常の種族の繁殖行為は無いとも。
魔力が尽きれば消え去る存在とも。

眉唾ものだが、魔力量で位が決まり上位になるほど美しい実体を持つ人型になるそうだ。

そもそも下位精霊は小さく光る玉のようだから存在自体俺達とは違うのだろう。

「俺は上位の精霊に会ったことがあるが、意思疎通も出来たし、確かに綺麗だったな。森の中にある泉に棲んでいた水の精霊だった」

そう語るアーク。

「へえ。俺も見てみたいな」
「まあ、会おうと思って会えるもんじゃ無いけどな」

ただ一人存在するという最上位の精霊王の姿は長寿の竜人でも視たことが無い。

おそらく精霊王は不老不死だろうと言われている。




あの街からほとんど出なかったから気付かなかったけど、そういえば目端に小さい光が良く見えていたなあ。
アレが下位精霊。

さすがアーク。竜人だけあって詳しいな。
為になった。



そんな話を聞いたからだろうか・・・。


---なんだろう。
何故か森に惹かれてる気がする。
薬草? 素材?

それとも、本能的な何か・・・・・・。

「ノア?」

俺がうわの空だったのに気付いていたんだろうか、アークが俺を呼んできゅっと抱きしめてきた。

「・・・ゴメン、ぼーっとしてた」
「・・・・・・今日はここらでテント出して休もうか。急ぐ旅ではないしな」
「うん、そうだね」

俺達は平らな所を見つけてテントを出し、少し早いが中で夕御飯の支度を始めた。

「次の街までは歩いて10日ほどかかるが、道は整備されていて馬車も良く通るし、小さいが村も幾つかあって集会所に泊めて貰えたりするようだよ。まあ、国境付近にわざわざ行くのは冒険者か商人くらいだから宿泊施設なんて割に合わないから仕方がない」
「そうか。まあ俺達にはテントがあるし、肉は狩ればいいしね」

スープを煮込みながらアークに応える。
応えながらも先程の違和感が拭えなくて思考が散漫になる。

---駄目だな。
今日は早く休もう。


落ち着かない気持ちで夕御飯を食べる。

アークは俺のいつもとは違う様子に何か思う所があったのだろうが、特に詮索もせずに二人で風呂に入ってベッドに横になった。


---眠れない。
こんなの久し振りだ。
どうしよう、どうやったら眠れるんだっけ?

ついこの間までは独りが当たり前だったのに。眠れない夜も独りで過ごしていて・・・。

辛い、寂しい、嬉しい、哀しい・・・。

色んな感情が胸の内に広がって、俺をザワつかせる。
自分じゃ制御できない気持ちが溢れてくる。

どうしよう。

---アーク・・・・・・。


泣きたくなんかないのに涙が溢れてくる。
どうしよう。
どうしたら・・・・・・。

「気にしないで泣けばいい」
「っ・・・あ・・・く」

背後から抱きしめられる。
『俺はココにいるぞ』と言うように。

「---ん・・・」

なんで泣きたいのかも良く分からないまま、俺はぽろぽろと涙を零しながら、アークに向き直って抱きついた。

アークもぎゅっと抱きしめ直してくれた。
俺もぎゅぎゅっと抱きしめ返した。

そうして暫く抱き合って泣いていたら、アークの体温にホッとしたのか、泣いて気が済んだのか・・・。
力が抜けて、ノアは寝息を立てていた。

アークは無言で眠ったノアの髪を優しく梳く。


・・・・・・テントの結界の外には無数の下位精霊。

ほとんど言葉を話さない下位精霊は形を持たないモノが多い。光る玉のようにふよふよ浮いて漂っている。

大概の者には視えないソレが、大量に結界に沿ってへばりついている状態で。

タチである竜人アークには昼間かと思うほど光って見えて、正直安眠妨害で鬱陶しい。

いくら古の森に近づいているとはいえ、この数は異常だ。

---そのうち大物が来るかな。

「まさかなあ・・・・・・」

ノアに意識が向いていたアークは知らずにフラグを立てていることに気付かなかった。









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