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38 まだまだ続くよ、お買い物!
しおりを挟む予想外に良いモノが手に入ったノアは誰が見ても上機嫌だった。
普段無表情な顔が微かに笑んでいて、儚さに輪をかけている。
---コレはヤバい。
誰にも見せたくない。
だがアークはすぐさま宿に帰りたいのを堪えてノアの用事を優先させる。
「アーク、さっき来るときに見つけた食材と調味料のお店にも行って良い?」
「ああ、良いよ。でもノアのその顔は誰にも見せたくないからフード被ってくれるか?」
「どうせ俺の顔なんて誰も気にしないよ? でもアークが言うなら隠すよ。これでいい?」
特に気にもせずにフードを被るノアを見て一安心のアークと残念そうな周りの奴ら。
アークはひと睨みするのを忘れない。
ノアは気にせずにアークの手を引いて市場に向かって行った。
最初に来たときに見た食材を買い込み、調理方法を聞き、調味料も色々と買い揃えた。
最後に雑貨店に入ると、目に止まった髪飾り。
材質は銀で木の葉の透かし彫り。
葉に滴のように金が小さく填め込まれていた。
---アークの色だ。
自分の瞳でもある銀だが、ノアにとってはアークの髪色で、金は瞳の色。
これで髪を飾ったら・・・・・・。
「プレゼントするよ」
妄想にうっとりとしていたらヒョイッとアークが手に取ってお会計をしてしまった。
いや、嬉しいんだけど!
「ほら、後ろ向いて。付けてやる」
そういってノアのフードを外し、その場でノアの髪に器用に付けた。
「・・・・・・嬉しい。アークの色だって気になってたんだ」
「俺も嬉しいよ。考えたら俺ってノアから貰うばっかりだったわ。これからはもっと色々と贈るからな」
「・・・何言ってるの? 気持ちの問題だよ。モノの数なんか関係ないよ。俺こそ抱えきれないほど貰ってるのに!」
「---じゃあお互い様って事で」
クスクス笑いながら雑貨店をあとにした。
もちろんフードは被り直した。
いつの間にか時間はとうに午後を過ぎていて、お腹が空いた二人は屋台で目についたモノを幾つか購入してから宿へと戻った。
この宿は御飯が美味しいので、夕御飯のために軽く済ませることになった。
甘辛く炒めた肉を葉物野菜と一緒にパンで挟んだものや鶏肉のクリーム煮、オークの串焼きにデザートにとノアが選んだ果物数種類。
「---うん、クリーム煮美味しい!」
「串焼きも香辛料が効いててピリ辛だ」
「この果物、しゃくしゃくしてて瑞々しい」
「コッチのはねっとりしてるなあ。美味いけど俺には甘いかな」
などなど、感想を言いつつ平らげていく。
そしてお腹が膨れると眠くなるもので・・・。
アークの隣で安心するからか、うとうとし始めたノアの服を寛がせてベッドに横たえるとアークも隣で横になった。
「・・・・・・アーク、ありがとう・・・」
「・・・どう致しまして」
ノアの額にちゅっと口づけを贈るとノアが口元を緩ませてあっと言う間に眠ってしまった。
今朝から色々な出来事が立て続いて、さすがにノアも疲れたのだろう。
実際昨夜は疲れただろう。
さすがにポーションでは体力は回復しなかったからな。
そもそも俺の体力にあれだけついてこられるノアも凄いんだがな。
興奮して我を忘れたようなノアも可愛かった。
誰の目にも触れさせたくないほどに。
ノアといると自分の醜い感情が強く湧き上がる。
誰にも見せたくない。
自分の場所に閉じ込めて一生二人きりで・・・。
・・・・・・駄目だ。
いや、たぶんノアは『しょうがないなあ』って引き籠もってくれるだろう。
そんな気がする。
でもそれじゃ、ノアは駄目になりそうだ。
きっといつか心を壊すだろう。
それは俺の望む未来じゃない。
だから、ちょっと束縛が過ぎるけどこのまま、俺の腕の中で少しだけ不自由でいて。
---俺が暴走しない程度にね・・・。
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