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33 ポーションいくらで売れるかな?
しおりを挟む結局スルーされたまま話は進んだ。
何なら空気のような扱いだった。
時たま質問が来るので存在は認知されているはずだが、それ以外はカンベキスルー。
イヤ、人見知りな俺にとっては良いことなんだけど。
そのスルースキル、半端ないね。
「薬師仕様のポーションはどれも品質Sですが、何か特別な物をお使いですか? それとも製薬方法が違うのでしょうか?」
「爺さんから教わったので何とも・・・普通がどういうのか知らないので・・・ただ、作り方は一般的なものです。薬草を薬研ですり潰したり抽出したり・・・」
「そうですか。まあ弟子でもない者に機密情報を教える訳にはいかないですしね。大丈夫です。それよりも錬金術仕様のポーションです! やはり品質Sです! 素晴らしですよ!」
「は、はあ」
「おい、落ち着け副ギルド長。ノアが引いてる」
アークの前に座っているのでこれ以上下がれない。アークの胸板に背中をごりごり押し付けてしまっているが、ごめんなさい。
「! ああ、スミマセン。私が言うのもなんですが、製法についてはこちらから無理にお聞きすることは御座いません! 他の薬師に聞かれても応えなくて結構ですよ。上手いことを言って聞き出して横取りする輩も多いのでね! 良いですか、アーク殿」
---何で俺じゃ無くてアークに言い聞かせてるの?
俺ってそんなにぽやぽやしてる?
「してるしてる。速攻で騙されるから、俺に任せとけ」
・・・・・・左様ですか、アーク、御願いします。
「---とまあ、そんな訳で、各ポーションの値段はこうなりました」
そういって見せられた一覧表には、王都の薬師ギルド本部の許可の押印がされていた。
---つまり、どういう事?
今まで薬師ギルドにハブられていたせいで何にも分かっていないノアの為に薬師ギルド長が説明をしてくれた。
昨日、ノアが倒れた後に薬師ギルドであったやり取りから、一時的に預かったノアのポーションを簡易的な転送魔法の道具で王都の本部に送り、解析の後、然るべき値段を提示して貰ったのだと。
「解析云々は借用書にキチンと書かれてる。後でサンプルになった分の料金も出ることもな」
「ええ。それで王都の本部でお墨付きがでたモノは大陸中、薬師ギルドがある街では値段が変わることはありません。騙されて安く買い叩かれることは無くなります!」
「・・・ええと、俺、安く買い叩かれてたの?」
結構高く買って貰ってたと思ってたんだけど。
「あの品質で病気にも効くなんて、他には無え。あの街の薬師ギルドが何も知らねえお前をハブって手をまわしてたんだろう。冒険者ギルドはギリギリ頑張ってたんだと思うぜ」
「本来ならば薬師ギルドにキチンと登録をして正当な評価を受けて、正しい値段で売買されたはずです。他所の街の事とはいえ、大変申し訳ありませんでした」
そういって頭を下げられて、慌てて言い募った。
「そんなのはもうどうでも良いんです。アークにも逢えたし、評価してくれる方達がいる。それだけで十分です。貴方方のせいでは無いんですから、頭を、あげて下さいっ!」
それで漸く頭を上げてくれた。
改めて一覧表を見ると、今まで売っていた錬金術仕様のポーションは値段がおおよそ倍になっていて、元の値段が薬師仕様のポーションになっていた。
多少の誤差はあるが概ねそんな感じだった。
「それと、コレは薬師ギルドのギルドタグです。アーク殿に許可を得て登録しておきました。これで正式な薬師として、どこでも正当な値段で売買出来ます」
そういって差し出されたタグは薬師マイスターのモノだった。
正当に評価され、薬師としての腕前を認められた証だ。
「っ俺、貰って、いっ良いんですか」
「もちろんです」
「当然じゃ」
「良かったな、ノア」
「・・・・・・ありがとう」
うるうるぴるぴるしているノアが可愛くて、自分の方にむき直して、首から下げたチェーンに薬師ギルドのタグを通してやって、顔が見えないようにギュッと抱きしめてきた。
「独占欲の塊だな」
「愛されてますねえ」
「若いっていいのう」
三者三様の言葉を聞いて恥ずかしがったノアは更にギュッとアークに抱きしめられていた。
その後、その正当な値段でポーションを卸し、その足で買い物に行くことにした。
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