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29 チートなポーション 3
しおりを挟むノア特製ポーションを飲ませて数分後、熱が下がって呼吸も落ち着いていた。
もはや普通に寝ているだけのように見える。
「・・・マジかぁ・・・」
今まで色んなギルドでポーションを購入して使っているが、こんなことは初めてだ。
そもそも錬金術師自体が稀少で、尚かつポーションを作っているなんて聞いたこともなかったが・・・。
あの街の薬師共や領主もどれだけ稀少か全く分かってなかったんだな。
まあ、馬鹿共のお陰でノアと番えたが・・・。
「やはりノアの不明な種族が関係しているのだろうな。せめてお爺さんが生きていれば錬金術の事も詳しく分かったかもしれねえが・・・」
---ラグナロク・ニヴルヘイム。
かつてその名を聞いたのは20年以上前。
俺が冒険者にもなっていない、ただのヴァルハラ大公家の三男だった子供の頃。
それは本当に偶然だった。
コッソリ抜け出して遊びに出た城下街で、冒険者らしい男達が話していた噂話だった。
『おい聞いたか? 大賢者様が隠居したって』
『あぁ、アレって本当なのか?!』
『誰も行き先を知らないって?』
『何で急に居なくなったんだろうな』
---大賢者様?
数々の伝説を持つという、年齢不詳のお爺さんという認識だったが。
家に帰ってから父上に聞いてみたが、はぐらかすように教えては貰えなかった為、そのまま忘れていた。
その大賢者様の名が『ラグナロク・ニヴルヘイム』だったはず。
まさか今ココでその名を聞くことになろうとは・・・。
ノアの育ての親が彼だとするならば、ノアの規格外のポーション作りの腕前も、魔法の腕も全て辻褄が合う。
「だがまあ、確証は無い」
道中に手がかりがあればいいが、国に帰ってからの方が情報は集まるかもな。
とりあえず治ったようだが、何時また熱が上がるか分からない。
俺も暫く横になって様子を見るか。
ノアも少しずつ甘えてくれるようにはなってきたが、普段は無意識に気を張っていて、一人で何でもやろうとしてしまう。
もう癖になっているんだろうな・・・。
ずっと頼れるヤツが周りに誰もいない生活だったんだ。
仕方がないが・・・。
「もっと俺に堕ちろ。そして俺無しじゃいられないくらいとことん依存してくれ。ドロドロに甘やかしてやるから」
そう呟いたアークの瞳は昏い。
普段の番いに向ける愛おしい瞳とは違って、狂気を孕んだモノだった。
竜の番いへ向ける狂愛と執着、独占欲は怖ろしいモノがある。
番い至上主義をうたっているだけはある。
そう。
アークはアレでも自重しているのだ。
本来ならばさっさと巣に連れ帰り、誰の目にも触れられないようにし、監禁して孕むまでとことんヤりたいくらいなのだ。
それをしないのはひとえに番いがそれを望んでないからだ。
番い至上主義故に、ノアの為にすんでの所でアークを思い留まらせている。
番いの願いが竜の願い。
番いに国を滅ぼせと言われれば躊躇なく潰すくらいの気持ちはある。
それくらい影響が大きい。
もちろん誰もが番いの願い全てを叶えるとは言わないが。
過去にはトラブルもあったようで暴走した竜人を止めることも多々あったらしい。
ノアが善人で天然で素直で良かったとアークはほっと息を吐くと、気持ちを切り替えて静かに眠るノアの横に潜り込んでしばしの微睡みを楽しんだ。
---ノアが熟睡していたおかげで、アークもガッツリ眠ってしまい、気付いたら二人して腹の虫がぐーぐーなって目が覚めた。
「・・・ええと? 何がどうなったんだっけ?」
キョトンとして状況が把握できていないノアが可愛すぎて思わず押し倒してしまった。
「あ、アーク?! 何、どうしたの?!」
「あ---、ノアが可愛すぎるのがいけない」
「ななななんなの?! べっ、別に可愛くないよ?!」
ニヤリと笑うアークの瞳は瞳孔が縦に割れていた。
ノアは本能的に悟った。
これ、食われるヤツ---!
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