迷い子の月下美人

エウラ

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23 隣の街へ到着!

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爺さんに拾われてから初めてあの街を離れた。

アークと旅に出てまだ僅か5日。
予定通り最初の目的地である街に到着した。
時刻は夕方5時頃。

ぐるりと高い壁に囲まれている。
あの街と同じくらいの規模の街だ。
門も同じように門衛が入街のチェックをしていて、チェック待ちの列が結構繋がっている。

「ここは閉門が午後6時だからな。それを過ぎると入れて貰えない。ただし、冒険者は別の門で午後9時までは入れてくれるんだ」
「へえ、何故?」
「一般市民は戦えないからな。夜は魔物達が活発に活動するモノが多い。安全の為だ。逆に冒険者は夕方からの依頼を受ける者も多い。大概は安全を確保して野営するが依頼によってはその日に戻らないといけないモノもあるだろう」
「なるほど」
「そういうわけで、俺達はあっちの門から入るんだ」

そういってアークが指差した方にもう一つ門があった。
分かりやすくするためか、派手な赤色で縁取ってある。

「有事の際に混乱して間違わないようにだな」
「---なるほど」

・・・だからアーク、どうして分かるんだ?
これもスパダリ効果か?

などと無言で思考にふけっているノアを片手で抱き上げて門に向かうアーク。
慌ててしがみつくノアを門衛が生温かい目で見ていた。

「ようこそ、エイダンの街へ。ギルドタグを拝見します!」
「やあ、こんにちは。はい、ギルドタグ」
「・・・こんにちは。どうぞ」

元気のいい門衛がギルドタグの提示を求めてきたので、アークに続けてノアも出す。

人見知り発動である。
心なしかアークにしがみついている気がするが気にしない。

コラそこの門衛さん、そんな目で見ないで!
アークもニヤけないの!

「番いですか? 羨ましい限りです。はい、タグの確認を・・・え、は・・・・・・あ、アルカンシエル殿?! Sランク冒険者の?!」
「ああそうだ。因みにあんたが言ったようにノアは番いだ」
「あっ、え、あぁはい! ノア殿もAランクでしたか! はい、お二人共、通って結構です」
「あぁ、ありがとう」
「・・・・・・ありがとうございます」

去り際に門衛達がぽそぽそと話しているのが聞こえた。

「あの方がSランクの・・・」
「格好いいなあ。番いの方も儚げ美人だ。羨ましい」

---アークが格好いいのは当然だけど、儚げ美人って誰?
疑問符を浮かべるノアの見えないところでアークが苦笑していた。

結局、門を潜っても抱っこ(しかも縦抱っこ!子供じゃ無いんだけど!)のまま、手頃な値段の宿を探して受付をして、今は夕御飯の時間だ。

宿を探すにあたりリサーチしたところ、ほとんどがこの宿を勧めてくれた。

部屋が清潔で防音の魔導具で静か、料理もこの街の宿の中でも中の上。
高級宿には劣るがこの値段の宿ではかなり良いところで、何より家族経営で雰囲気が温かい。

・・・との事だ。
確かに抱っこされたノアを見ても動じずに丁寧な対応で、部屋も広くて綺麗。
防音もバッチリで、夕御飯も量が多くて美味そうだ。

「頂きます」
「あぁ、頂きます」

向かいに座ったノアが食べ始めたのでアークも手をつけた。
シチューにボアのステーキ、パンはよくある硬い黒パンではない。色は茶色いが黒パンよりも柔らかい。

「美味いな」
「うん。美味しい。パンも柔らかくてシチューにつけるとトロトロだよ。何処のパンだろう。聞いたら教えてくれるかな」

---ノアの口からトロトロなんて聞くと腰にクルんだが・・・。
チラリと口の端を舐める赤い舌。
シチューでテカった唇が扇情的で・・・・・・。

瞬間、周りがザワついた。
オイコラ、ノアに見蕩れてんじゃねえぞ!

軽く威圧をすると周りの温度が少し下がった。
サッと目を逸らすヤツらの顔を覚えてやる。

そんな俺を見て相変わらずノアはキョトンとしている。


くっそ可愛いな、オイ!





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