迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
上 下
22 / 534

18 迷宮踏破記念

しおりを挟む

ギルドをあとにした俺達は、特に何も申し合わせをしていないのに、ごく自然に街外れの俺の店舗兼自宅に帰宅した。

さすがに抱っこはしてないけどアークはずっと離れないし。
今もいわゆる恋人繋ぎで右手を拘束されてる。
どうしてこうなった。

「えと、アーク、そのままうちに来ちゃったけど良かったの? 宿とか・・・・・・ひっ!」

顔はにっこりなのにアークの目が笑ってない。

「---番いを一人にするわけないだろ」
「そそそうなの? 俺、そういうの全然分からなくて、ごめん・・・?」
「ずっと独りだったんだろ? これからは俺が教えるから心配すんな」
「ぅ、うん。ありがとう」

チョロいなとアークに思われてるとは微塵も思ってないノアだった。

自宅周辺の結界はそのままに、テントの時のようにアークの魔力登録をする。
そうしないと弾かれるからだ。
インベントリから取り出した鍵となる魔石にアークの魔力を流して貰って、登録者を追加する。

「これでアークも入れるようになったよ」
「ありがとう。それもノアの錬金術か?」
「そう。鍵はこの魔石なんだけど、結界本体は中にあるんだ。まあ、入ってゆっくりして。ボロいけど」

そういって促されたので遠慮なく入る。

正面入り口は店舗用らしく、入って直ぐ目の前にはカウンター、右の棚には見本サンプルのポーション類の空き瓶が何本か並んでいるだけ。
左手のスペースからカウンター奥に入って行くと調合スペースがあり、、その奥が居住スペースだった。

台所にはテーブルと椅子が二脚。
お風呂場とトイレらしき扉。
その脇には裏庭に続く扉がある。
あとは二階へ続く階段。
上はおそらく寝室だろう。
二階というよりは中二階のようだが。
屋根裏部屋よりは広い感じか?

中の家具類はおそらくお爺さんやノアが錬金術で作ったのだろう。
建物に見合わない精緻でしっかりした物だった。

お爺さんと二人で住むには十分だが、建物自体がかなり古く、吹けば飛ぶようだ。
よく見れば建物自体にも防御結界魔法が付与されている。
建物の強度を上げるためか。

「古いだろう。改築するより立て直した方が良いくらいなんだけど、これでも貸家でさ、家主が改築を許可してくれなくて何処も手をつけていないんだ。あぁ、でも錬金で元に戻せるからと思って、台所と風呂とトイレは弄ってあるから使い心地は良いよ」

---改築不可ってそれ、絶対嫌がらせだよな。
こんな家、住人が改築してくれた方が後でまた貸すにしてもよっぽど良いはず。

ホント、この街のヤツら、クソだな。


アークが内心で憤っているうちにお風呂にお湯を張っていたらしい。

「アーク、先に入ってさっぱりしてきて。ベッドを整えておくから」
「え、一緒に入らないのか?」
「---っぐ、ここのお風呂場はテントと違って狭いんだよ。良いから入ってきて!」
「はっはっは」

まったくもう!
あの時は発情期で何にも分かってなかっただけだよ。

素面で入れるか!
恥ずかしい!


アークが入浴しているうちに二階のベッドを確認してと。
爺さんの方はあれから使ってないけどいつも浄化してるから綺麗だし、こっちを俺が使って、俺の方はアークに使って貰おう。

爺さんのベッドよりは俺の方が大きいし。
アークは俺より背が高いからちょっとはみ出そうだけど寝られるだろう。

念の為、どっちも浄化して。

お風呂上がりにお酒でも一杯飲むのかな?
迷宮踏破記念にご馳走でも作ろう。


料理を作ってテーブルに並べていたら、アークがお風呂から出て来た。

「お風呂サンキュー。石鹸も良い香りだな。あれもノアお手製か?」
「あぁ、うん。ハーブを使ってる。お気に入りなんだ---」

そう言いながら振り向いたら、上半身裸で下穿きのみパンイチのアークがいて固まった。

濡れた髪をタオルで掻きあげながら見事なシックスパックの腹筋にしなやかで盛り上がった胸筋を惜しげも無く晒して。

ドキドキして顔がかぁっと熱くなった。

アークは絶対ワザとやってる。
俺の反応を見て楽しんでいるんだ。

その証拠に顔がドヤ顔になってる。

「っ、飲み物とつまみも出しておくから、先に一杯やってて。俺もお風呂入ってくる」
「あぁ、ゆっくりでいいぜ」

---早く食べたいけどな。
お前ノアを。



結局逆上せそうになるほど浴槽で色々考えてしまって、アークに強制的に回収された。
何故か寝間着がアークので、ズボンはなし。
下穿きは履いてるけど、落ち着かない。
いや、シャツが大きいから太腿くらいは隠れてるけどね。

ご機嫌なアークに勧められるままお酒を飲んでしまい、ぽやぽやしてたら俺のベッドに連れて行かれた。

・・・・・・アーク、悪い顔してる。

これ、俺、今から喰われるんじゃね?

「迷宮踏破記念のお祝い」

ソウデスカ、俺がお祝いのプレゼント、デスカ。

・・・・・・もう好きにしてくれ(涙)。





*さっきHOTランキングにランクインしていてビビりました! たくさんの方が読んでくれて嬉しいです。ありがとうございます! これを励みに頑張ります!*
しおりを挟む
感想 1,184

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶のみ失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...