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18 迷宮踏破記念
しおりを挟むギルドをあとにした俺達は、特に何も申し合わせをしていないのに、ごく自然に街外れの俺の店舗兼自宅に帰宅した。
さすがに抱っこはしてないけどアークはずっと離れないし。
今もいわゆる恋人繋ぎで右手を拘束されてる。
どうしてこうなった。
「えと、アーク、そのままうちに来ちゃったけど良かったの? 宿とか・・・・・・ひっ!」
顔はにっこりなのにアークの目が笑ってない。
「---番いを一人にするわけないだろ」
「そそそうなの? 俺、そういうの全然分からなくて、ごめん・・・?」
「ずっと独りだったんだろ? これからは俺が色々と教えるから心配すんな」
「ぅ、うん。ありがとう」
チョロいなとアークに思われてるとは微塵も思ってないノアだった。
自宅周辺の結界はそのままに、テントの時のようにアークの魔力登録をする。
そうしないと弾かれるからだ。
インベントリから取り出した鍵となる魔石にアークの魔力を流して貰って、登録者を追加する。
「これでアークも入れるようになったよ」
「ありがとう。それもノアの錬金術か?」
「そう。鍵はこの魔石なんだけど、結界本体は中にあるんだ。まあ、入ってゆっくりして。ボロいけど」
そういって促されたので遠慮なく入る。
正面入り口は店舗用らしく、入って直ぐ目の前にはカウンター、右の棚には見本のポーション類の空き瓶が何本か並んでいるだけ。
左手のスペースからカウンター奥に入って行くと調合スペースがあり、、その奥が居住スペースだった。
台所にはテーブルと椅子が二脚。
お風呂場とトイレらしき扉。
その脇には裏庭に続く扉がある。
あとは二階へ続く階段。
上はおそらく寝室だろう。
二階というよりは中二階のようだが。
屋根裏部屋よりは広い感じか?
中の家具類はおそらくお爺さんやノアが錬金術で作ったのだろう。
建物に見合わない精緻でしっかりした物だった。
お爺さんと二人で住むには十分だが、建物自体がかなり古く、吹けば飛ぶようだ。
よく見れば建物自体にも防御結界魔法が付与されている。
建物の強度を上げるためか。
「古いだろう。改築するより立て直した方が良いくらいなんだけど、これでも貸家でさ、家主が改築を許可してくれなくて何処も手をつけていないんだ。あぁ、でも錬金で元に戻せるからと思って、台所と風呂とトイレは弄ってあるから使い心地は良いよ」
---改築不可ってそれ、絶対嫌がらせだよな。
こんな家、住人が改築してくれた方が後でまた貸すにしてもよっぽど良いはず。
ホント、この街のヤツら、クソだな。
アークが内心で憤っているうちにお風呂にお湯を張っていたらしい。
「アーク、先に入ってさっぱりしてきて。ベッドを整えておくから」
「え、一緒に入らないのか?」
「---っぐ、ここのお風呂場はテントと違って狭いんだよ。良いから入ってきて!」
「はっはっは」
まったくもう!
あの時は発情期で何にも分かってなかっただけだよ。
素面で入れるか!
恥ずかしい!
アークが入浴しているうちに二階のベッドを確認してと。
爺さんの方はあれから使ってないけどいつも浄化してるから綺麗だし、こっちを俺が使って、俺の方はアークに使って貰おう。
爺さんのベッドよりは俺の方が大きいし。
アークは俺より背が高いからちょっとはみ出そうだけど寝られるだろう。
念の為、どっちも浄化して。
お風呂上がりにお酒でも一杯飲むのかな?
迷宮踏破記念にご馳走でも作ろう。
料理を作ってテーブルに並べていたら、アークがお風呂から出て来た。
「お風呂サンキュー。石鹸も良い香りだな。あれもノアお手製か?」
「あぁ、うん。ハーブを使ってる。お気に入りなんだ---」
そう言いながら振り向いたら、上半身裸で下穿きのみのアークがいて固まった。
濡れた髪をタオルで掻きあげながら見事なシックスパックの腹筋にしなやかで盛り上がった胸筋を惜しげも無く晒して。
ドキドキして顔がかぁっと熱くなった。
アークは絶対ワザとやってる。
俺の反応を見て楽しんでいるんだ。
その証拠に顔がドヤ顔になってる。
「っ、飲み物とつまみも出しておくから、先に一杯やってて。俺もお風呂入ってくる」
「あぁ、ゆっくりでいいぜ」
---早く食べたいけどな。
お前を。
結局逆上せそうになるほど浴槽で色々考えてしまって、アークに強制的に回収された。
何故か寝間着がアークので、ズボンはなし。
下穿きは履いてるけど、落ち着かない。
いや、シャツが大きいから太腿くらいは隠れてるけどね。
ご機嫌なアークに勧められるままお酒を飲んでしまい、ぽやぽやしてたら俺のベッドに連れて行かれた。
・・・・・・アーク、悪い顔してる。
これ、俺、今から喰われるんじゃね?
「迷宮踏破記念のお祝い」
ソウデスカ、俺がお祝いのプレゼント、デスカ。
・・・・・・もう好きにしてくれ(涙)。
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